弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

司法修習生に対する
経済的支援(5/6)


【柳楽】ビギナーズ・ネットは他にどういう活動をされていますか。

【萱野】ただ外にいるだけではやっぱり声は伝わらないので、先生を見つけて議員要請活動を続けておりまして、今はメッセージ集めもありますし、国会議事堂を見たことがない大学生を連れて行って、緊張しながら自分たちの声で、国会議員の先生方に当事者の声を伝えています。他にも、院内集会で修習を辞退する辞退者に来ていただいて、発言をしてもらったり、マスコミへの取材協力でテレビ、新聞などに何度も取り上げてもらっています。また、最近は「ベンゴマン」という冊子を出版しました。市民の方にこの問題を漫画を使ってわかりやすく伝えようと、前半は漫画で後半は真面目な記事を盛り込んで出版しました。議員の皆さんにもお配りしています。「ベンゴマン」の配布活動にあたっては、弁政連の懇親会に学生と二人で青いTシャツを着て参加させてもらって、「ベンゴマン」を何としても国会議員の先生に読んでもらいたいとお願いをし、弁政連の皆さんからたくさん費用のカンパをしていただきました。

【柳楽】ビギナーズ・ネットの地道な活動と日弁連執行部の連携という点ではどうですか。

【中村】もちろん執行部がやらなければならないことはいろいろあるわけです。国会議員の先生と関係省庁などとの協議があるわけですが、これは我々が行ってお願いするだけで実現するものではなくて、やはり国会議員の先生、ビギナーズ・ネットの皆さんが地道にやっていただいている。国会議員の先生がいろいろなところでやっていただいている。これを我々は受けてエネルギーにして交渉や要請にいっている。まさに全員がチームでこの要請活動をおこなっているというところだと思います。

【柳楽】そうした各運動の連携、それを国会議員の側から見てどうでしたか。

【宮﨑】私も国会議員に宮﨑なって4年しかたっていなくて、それまでは弁護士会の会務もやっていましたし、ビギナーズ・ネットも頑張っていることは以前から知ってはいましたが、実際に目の前で見ると、この人たちの思いに応えなければという思いを非常に強く持ちました。もちろん、日弁連の先生方も一生懸命やっていると認識しています。私が地元や国のために国会議員としてやらなければならない課題がたくさんある中で、これは私がやるべき問題だと思っていました。それはなぜかというと、若い人が法曹の道を目指さなくなって、法学部の志願者自体が非常に減っているという現実があります。法曹という三権の一翼を担う分野に人材が来なくなるということは、日本という国の将来を考えたときに大いなる問題だと思います。「問題を課題に置き換えて、課題を解決するために全力を尽くす」というのが私のポリシーなのですが、そもそも司法制度改革に端を発しているこの問題への対処は、自分の中で三部作として考えています。まず法曹人口の問題で人数問題に方向性を示し、次に法科大学院という問題に対処し、最後に経済的な分野に関することをやっていく。これらのひとつひとつがものすごく重い課題なので順番にひとつずつ解決していかなければと思いました。要するに給費制の問題は現象であって、本当は日本人の中に法曹を目指す人が減っていること、これを解決しなければならない。そのためにとりあえずこの三つの問題をひとつずつ解決していこうという取り組みを国会議員として始めました。実際ターニングポイントはどこにあったのかというと、2014年に自民党で人数論を1500人にするのをまとめきったところがひとつの大きなターニングポイントだと思います。そして経済的支援についてのターニングポイントは法曹養成制度改革推進会議決定に司法修習生への経済的支援を課題として書き込めたことだと思っています。ここが実は大きかったですね。

【柳楽】今回、「骨太の方針」にも入りましたが、後から追加されたような位置ですね。

【宮﨑】もともと「骨太の方針」の原案にないものを後から書き込ませたというわけです。法曹養成制度改革推進会議決定には文言が入っているわけですが、今年実現しないと次いつ潮目がくるかわからない、今年絶対実現するという思いがあったので、骨太の方針に入れるよう努力しました。我々自民党議員が自ら党内でロビー活動をしました。また、「未来への投資を実現する経済対策」でも同じようにロビー活動をして会議で積極的に発言し、理解のある先生のところにいったりしました。その中で書き込むことに決着しました。

【柳楽】そもそもこの運動をやっている原動力だと思うのですが、司法修習の国家的意義についてはどのようにお考えですか。

【宮﨑】司法は三権の一翼を担っており、力強い司法が日本の国益を増進するから国はもっと法曹人材の養成を担っていくべきだということです。行政分野では公務員により力強く仕事をしてもらわなければならないので、就職してから研修を受けてもらったり海外に留学してもらったり、国費をかけていろいろとやるわけです。同じように司法の分野を担う法曹三者を養成する司法修習の段階で国費をかけて人材育成し、力強い司法の担い手を作らなければならないということです。これは国家国民のためなのです。



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