弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

司法修習生に対する
経済的支援(2/6)


【柳楽】具体的な中身の議論に入る前提として、貸与制に移行した経緯についてざっとおさらいをしていければと思います。まず2001年6 月に出た司法制度改革審議会の意見書で、将来的に貸与制への切り替えや廃止をするべきではないかという指摘がなされました。その流れにそって2004年12月に裁判所法が改正され、2010年11月から貸与制に移行することが一旦決まりました。そもそもなぜ貸与制の導入ということになったのかというところからお聞きしたいのですが、いかがですか。

【中村】まず2010年頃までに司法試験の合格者を3000人にするという司法制度改革審議会の意見書があり、これだけの合格者が出ると、国から修習期間中にお金を出すということへの国民のコンセンサスがなかなか得られないのではないか、また3000人となると財政的に今までのように給費を支えられないのではないかということが背景にあったのではないかと思います。

【柳楽】できるだけ早期に3000人といわれていましたものね。その後、2010年に、給費制を1 年間延長するという裁判所法の改正がなされました。このときに、法曹養成制度に対する財政支援のあり方について見直しを行うという趣旨の衆議院の法務委員会での附帯決議というものもなされています。そして法曹の養成に関するフォーラムが設置され、第一次取りまとめが出たのですが、ここでは貸与制を実施すべきだという取りまとめになり、そのまま2011年11月についに65期の修習生から貸与制が始まったという流れになっております。土壇場で1 年給費制が延びた、それでも1 年しか延長されなかったのはどういう経過だったのでしょうか。

【新里】延長になったのは、経済的事情で法曹を目指せないのではないかといわれてきたそもそもの危惧が、現象として見え始めてきたということがあったと思います。貸与制に移行することで、修習生が法科大学院の借金の他にさらなる借金を負わざるを得ない。そうなると、一定の経済的な基盤がないと法曹になれないのではないかという危惧の念が広がってきた、そして法曹志望者の減少という状況が、貸与制を導入する時期が近づいて現実のものになりはじめた。それに対して日弁連としてはビギナーズ・ネットや市民連絡会と問題を共有しながら、短い時間で67万筆の署名を集めた。そういう中で1年はまず見直してみようというところまでは成功した。ところが法曹の養成に関するフォーラムの中で議論をしましょうという中で、中々フォーラムが立ち上がらず、また、東日本大震災があって、国民の関心からいうと、それらが非常に大きくなり、財政的負担も大きいということで法曹養成の議論の中ではやはり給費制は終わった議論ではないのかということになった。結局8月31日の段階で、法曹の養成に関するフォーラムの中間とりまとめにおいて貸与制への移行が決められてしまった。当時は非常に厳しかったかなと、一度決めたことをまず導入してから更に検討していこうということになりました。

【柳楽】この時期の動きについては、国会や政党ではどのような受け止め方がされたのですか。

【宮﨑】これは基本的には、司法制度改革審議会における大きな司法制度改革をしていこうという流れの中で始まってきたことで、司法制度改革の理念は3000名という理念で動いていますので、その司法制度改革の大きな理念を実現していこうということと、足元にある現実との調和を図っていく議論がされて、皆様が運動をされていることがあって三党合意になって1 年繰り延べした。私は当時議員ではないですがそういう風に理解をしています。

【柳楽】2011年11月の新65期から貸与制がスタートしたわけですが、この貸与制がもたらしたもの、弊害についてはどうですか。

【中村】現象的には法曹志望者が激減していると中村いうところがあります。冷静に考えなければならないのは、要因はなんだったのかということです。我々は貸与制に移行したことも要因であろうと考えています。その他にも法科大学院の経済的な面や、司法試験の合格率の問題、それから弁護士の活動領域の問題等いろいろとあると思います。ただ貸与制自体がひとつの要因であることは否定できないと思います。法曹志望者の激減がこれからも続いていくと司法自体が危機的な状況になっていく。この対策としては今、国が貸与制を見直すことによって、法曹志望者減少をストップさせるメッセージを出していただくことが必要かと思います。



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