弁政連ニュース

〈座談会〉

少年法の成人年齢引き下げがもたらすもの(1/5)

司会 斎藤 義房 本部副理事長兼広報委員長

葛野 尋之氏

葛野 尋之
一橋大学大学院教授
 

横山 巌氏

横山 巌
元家裁裁判官・弁護士
大阪弁護士会会員

八田 次郎氏

八田 次郎
元少年院長
 

杉浦 ひとみ氏

杉浦 ひとみ
弁護士
東京弁護士会会員

はじめに

【斎藤】斎藤本日は少年法の成人年齢引き下げがもたらすものというテーマで座談会をさせていただきます。選挙権年齢を満18歳としたことを踏まえて、少年法についても20歳から18歳に引き下げるという動きが出ています。この問題については2015年2月に日弁連が反対の意見書を発表し、以来全国52の全弁護士会と8つの全弁護士会連合会が反対声明を出しています。また、同年8月刑事法研究者112名が連名で引き下げ反対の声明を発表しています。しかし、同年9 月自民党政務調査会が「少年法の成人年齢を18歳に引き下げるのが適当である」との提言をまとめました。そこで研究者声明の中心である葛野一橋大学院教授、元家庭裁判所裁判官の横山弁護士、小田原少年院元院長の八田さん、少年事件に取り組んでいる杉浦弁護士をお招きして、少年法の成人年齢引き下げがもたらす具体的弊害と再犯防止のために現場が求めていることを整理したいと思います。それではご出席の方々の自己紹介からお願いします。

【葛野】一橋大学の葛野と申します。私は大学で刑事訴訟法と少年法の研究・教育に携わっております。2015年の8月に年齢引き下げに反対する研究者の声明をまとめるのに協力いたしました。

【杉浦】私は弁護士で、少年非行に関わりたいと思って弁護士になりました。少年非行に関わっている間に少年犯罪の被害者にも関わるようになりました。2000年以降少年法の改正が続いているなかで、非行少年が立ち直るということ、あるいは自分が将来の夢を語ることがなかなかしづらいという風潮が出てきています。自ら更生するという気持ちがなければ少年たちは変わっていけない、社会も再非行が防止できない、結局被害者も救われないと強く思っています。

【八田】私は、少年鑑別所と少年院に34年間勤務しました。退職後は家庭裁判所調停委員、大学非常勤講師、少年院出院者の支援や刑務所篤志面接員として受刑者の面接をしております。

【横山】大阪で弁護士をしています。弁護士になる前は19年間裁判官をしていました。少年事件がやりたくて裁判官になって、丸6年家裁裁判官を経験しています。裁判官時代は少年院に送った少年と手紙のやり取りをしたり、面会に行って成長を見守るという事もやっていました。


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