弁政連ニュース

特集〈座談会〉

行政府への出向者 大いに語る
(3/5)

日々の仕事のスタイル

【鈴木】皆さん身分としては一般職の国家公務員ということになるのですか?

【岡本】4人とも非常勤の一般職国家公務員です。

【相澤】給与は日給制でして、一日の正式な勤務時間が若干短いなどの点が常勤と異なります

【鈴木】どのくらい出勤をされるのですか?

【江黒】毎日通っています。

【鈴木】支払が非常勤扱いというだけで実際はフルタイムということですか。

【岡本】本来兼業は禁止されていない立場ですが、勤務スタイルは常勤の任期付職員の方とほとんど変わらないのではないかと思います。

【柳楽】朝は何時に行っているのですか?

【岡本】省庁の業務開始が通常9時半からなので原則としてその時間に出勤しています。早朝から会議やヒアリングがあればそれに合わせることになります。

【柳楽】デスクに張り付いていることが多いのですか? それとも外に出ることが多いとか?

【岡本】事業仕分けというのは、行政の事業について、その事業がそもそも必要なのか、必要だとしても、国が実施するのがいいのか、それとも自治体や民間企業などに任せたほうがいいのか、という主体の問題を検討したあとに、仮にそれでも国が実施するとした場合でも、もっと無駄を排除して効率化できないか、というのを段階的に分析していく作業です。外部の人たちの視点を盛り込んで、議論も必ず公開でやらなければならないということになっています。事業仕分けというのはそういうミッションなので、その準備をするためにはひたすら外に出て、 関連機関や大学の有識者の先生方であるとか、場合によっては現場で働いている人たちにも意見を聞いてきて、それを集約する作業がメインになります。ですから、事業仕分けの準備が始まれば、基本的には調査に出ずっぱりということになります。もうひとつ非常に重要な作業として、各省庁の担当者にヒアリングを何回もお願いしなければならないということがあります。ですから、打合せ・ヒアリングをふまえて書面を起案するという以外にも今までの業務に近いライフスタイルでした。

【島村】私も、法改正作業では有識者の先生方に段取りのご説明に伺ったり、大臣政務官に状況報告と指示のお願いに行くなど、外に出ることが結構多いです。先日は海外の行政手続き関連の制度調査ということで、大変短い日程ですが韓国に出張にも行きました。

【柳楽】大変そうですね。国家戦略室の江黒さんはいかがですか?

【江黒】「現場に出ろ」という方針もあって、子育て分野の関係ですと、「認定こども園」といって幼稚園と保育所が一緒になった施設があるのですが、そのような施設に見学に行き、園長先生や幼稚園教諭、保育士の先生からお話を伺ったり、幼稚園、保育所、企業の中にある事業所内保育所にも行ったりしました。あとは大学の先生や有識者の方からどんな制度設計がよいか、海外の事例などについてもお話を伺いました。また、子供がいる方から現在の制度の問題点や悩みを伺うなど、できるだけ外に出るようにして、外部有識者や現場の意見を汲み上げる ことを心がけていました。

【柳楽】取材というか調査というか、これが仕事の中心というイメージですか?

【江黒】大事なのはその後ですね。内外で集めた情報に基づいてどういう改善が必要かということを、官庁の方とも相談しながら考えていきました。成果目標を設定し、そのためにここは変えたほうがよいというものがあれば、その施策を成長戦略の中に落とし込んでいって、いつまでにどの施策を行うかという期限を切って工程表を作っていく、という仕事がメインでした。

【相澤】基本的には国の政策ですから、官僚とどういうことをやるかというのを相談していくのですが、そのときに独自の視点で、民間の実際の需要、現場の意見などを取り込んで、そういう形にできないか、官僚から上がってくる意見ではない意見をぶつけていく、そして調整していくというのが仕事です。府省横断のテーマでは各省庁が別々の意見を言ってくるのですが、そういったあたりも1つにまとめてどういうことが最終的には一番国民の利益になるのかという視点から調整していく。それがこの室の大きな役割の一つです。

【柳楽】省庁間の対立はありますか?

【相澤】意見の違いや希望が異なることは当然ありますね。

【江黒】たとえば、すべての子どもに保護者の就労形態等による区別なく質のよい環境を整備しようということで、幼稚園と保育所の垣根をなくす幼保一体化を行うという施策があります。現在、幼稚園が文部科学省、保育所が厚生労働省の所管であり、長い間、縦割りの弊害が指摘されていました。いま、関係する部局を子ども家庭省に統合して縦割りを無くそうという話が出ているのですが、省庁再編となるとやはり抵抗も予想されます。


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