弁政連ニュース

特集〈座談会〉

政策秘書の現状と展望

─弁護士の新たな活動分野として─
 

【渡辺】秘書をやっていると大変なこともあるのですが、やはりなんといっても毎日がおもしろい。皆さんむき出しの利害関係の中で、不確定要素も多く、日々何かが起こるか分からないという中でやっているわけなんですが、とにかく議員の先生方も、その下で動く秘書さん達も、日々お会いする関係者の方々も、大変アグレッシブでありながら、人間として魅力的な人が多いように思います。弁護士の方が政策秘書になると、きっと素晴らしい貴重な経験をしていただけると思います。ただ1つ言えるのは、静かに書面を書くのが好きで、調べ物とかして論文とか書かれるのが好きという人にとっては必ずしも満足の得られる職場ではないのかな、ということです。昼間の大部分は即時の対応が求められる業務に追いまくられていますので、間違いなくそういうことやっている時間はありませんので、一日中ゆっくり物を考えたり、読んだりだけして過ごすということはちょっと無理なのかなという感じがします。あともう一つ、議員さんとの相性は大切です。私は幸い人格、ご見識ともに素晴らしい議員につかせていただきましたので、この人のためだったら本当にもう休みを潰してでもやっていくという気持ちで出られるからいいのですが、やはり相性が合わないボスについてしまうと相当大変だということを聞いています。その点さえご注意いただければと。

【河﨑】皆さん割とバラ色な感じのことをおっしゃっているので、逆のことも言っておこうかなと思います(笑)。小島さんや渡辺さんは若干特殊な例なんですね。というのも、大臣クラスの国会議員になると他にも秘書が沢山いて、政策秘書は選挙をそこまで意識しないで済むと思うのですね。しかし、一般の議員にとっては選挙というのは死活的な問題なんです。そこで一緒に死線をくぐるというか、頭下げてポスター貼って朝早く起きてビラ配って…というのが実は、議員との信頼関係を築く上で決定的に大事だったりすると思うのです。弁護士というのは一回バッジをつけてしまえば、何か無い限りずっと弁護士ですけれど、議員というのは常に立場を更新し続けないと、仕事をさせてすらもらえない。仕事をさせてもらえないというのは、自分が悔しい思いをするだけではなくて、自分を応援してくれる多くの人を裏切ることにもなるので、まず「そこに存在する」というのが彼らにとって最大の懸案の一つで、そこを共有する活動を求められるし、そういうことに対して「自分は政策しかやりません」と言っていては、深いところで共闘関係に立つような、信頼して仕事任せてもらえるような関係にはならないんじゃないかと、そこは一つ覚悟して貰ったほうがいいんじゃないかなと思います。

あと一点、もし弁政連が、政治・行政の場にもっと弁護士を増やそうというのなら、是非、弁護士倫理との関係を整理していただきたいと思います。例えば、自分のついた議員のところに、弁護士としての所属事務所の顧問先が陳情に来たらどうすべきか、とかですね。そういうのはまだ誰も整理して考えたことがないと思います。こうした点は、政策秘書になる弁護士を増やしていくのなら一定のルール作りとして必要になってくると思うのです。今は各自がそれぞれに考えて対応しているわけですが、かなり重い問題ですし、何かあると弁護士全体の信用にも係わる問題ですので、やはり弁政連か日弁連で、例えば政策秘書倫理委員会のようなものを作って、何かしら基準を作る作業を進めて頂ければと思っています。

【柳楽】今日は時間も限られていて、ここで終わりというのはとても残念なのですが、また機会がありましたらお話をお聞かせいただければと思います。政策秘書という仕事をいつまで続けているのか分かりませんけれども、終えられてからも是非その経験を、今度は日弁連サイドから役立てていただければなと思っています。今日はありがとうございました。

(平成22年5月11日於霞が関弁護士会館)

於霞が関弁護士会館


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