弁政連ニュース
司法の役割と政治
政治主導で高まる期待― 弁護士議員―
議員としての活動を振り返って
【古川議員】国会では与党時代と野党の時代とでは随分違います。与党時代は自分で動かしていくという活動スタイルです。法務では、特に法曹人口問題、これはかなり大きな動きになってやりました。それから、医療関係では医療事故をどう取り扱うか、経済財政のプロジェクトにもかなり入っていました。プロジェクトチームの一員として案を作り現にいくつかは政策になってまとめられました。あれは実際自分がいなければできなかったというのは幾つかあります。野党になると随分違いまして、とりあえず出てきたのを受けるというだけですから、そういう意味では違いますね。今一番、関心を持っている点を申し上げますと、大きく内閣と国会、あるいは内閣と政府、行政のあり方がかなり変わってきていますが、これについては、憲法上の議論がきちんとあってしかるべきだと思っております。そこで、私も1人の法律家とし、憲法学の立場から、かなりの興味をもっていて、この統治システムの問題に興味をもって取り組んでいるところです。
【鈴木】階先生は、2007年の補選で当選されて昨年8月に再選で、総務大臣政務官にご就任ですが、野党時代も含めて、どのような活動をされておられましたか。
【階議員】私は、補選で衆議院1人だけポツンと国会に入ってきたわけです。新人議員に対して、オンザジョブトレーニングみたいなのがあるのかなと思っていたのですが、何も無くて質問の仕方も教えてくれなし、最初は国会の中で迷っていました。そういうところからのスタートだったのですが、兎に角、色んな政策の部門会議に出ようということで、興味のあるところに片っ端から出ていて、金融と法務は絶対に出る、プラスして当時年金問題が非常にクローズアップされていましたので、年金の話とかとにかく興味のあるところ片っ端から出て、そういう中で人脈が出来てきた。財務金融委員会では、積極的に質疑をやりましたし、あとは他の委員会からも、その所属の委員会じゃなくても質問してくれてといわれて、そういうところでも質問しました。議員立法として振込詐欺救済法案や、仙谷先生らと消費者権利院法案の立案をやりました。政権交代により総務大臣政務官になりましたが、これは原口総務大臣と、野党時代から色々なプロジェクトチームで一緒に仕事をさせて頂きましたことが縁になっていると思います。総務大臣政務官としては、統治システムに関わる仕事をしていて、地方分権、公務員制度改革とか行政組織、とりわけ独立行政法人の問題など、統治システムに関わるダイナミックな大変面白い分野での活動をしております。
政治の場からの弁護士会
【鈴木】ところで、政治の場から、弁護士、弁護士会、或いは日弁連というのは、どのように見えるのか、率直なところをお教え下さいますでしょうか。
【古川議員】弁護士会というのは著しく非政治的ですよね。自民党から共産党までいる団体ですから、党の応援とかということは基本的には無理なんだろうなと最初から思っています。逆にいうと医師会というのはすごく政治的です。これは、保険制度があって診療報酬が政治的に決められるという中で、正に、政治との関わりがより切実であるということだと思います。弁護士会の場合、国選弁護報酬とか今は法テラスの予算といいましても、まだまだ、個々の弁護士にとっての切実感が違うのではないでしょうか。それから、日弁連のご意見、政策提言、これは、専門家としての意見として、国会では傾聴すべき意見として取り扱われます。ただ、政治的な活動としては、まだまだ、とても弱いと思います。これは、弁護士の皆が興味がないことが分かっているということでもあります。その意味では、弁政連にも会員の皆さんにもっと興味を持って貰う必要があるのではないでしょうか。
【階議員】私は弁護士会の皆さんから非常にお知恵を借りて、本当に有り難いと思っておりますが、一部独善的な方がいてバランス感覚に欠けるのではないか、やはり政治というのはバランス感覚が非常に大事ですから100点満点を目指してやったら全く点数は取れないというものはありますよね。政治家は非常に色々な人と会う中で、極端な意見は最初から門戸を閉ざしてしまいます。フットインザドアなんていう言葉もありますけれど、まずは、間口を広げて玄関をあけてもらわないと話が進まないわけですから、その辺は政治家と交渉する時は意識された方がいいかもしれませんね。ただ、基本的に、弁護士出身の議員というのは、古川先生もそうですけれども、与野党問わず、皆それぞれ有力な地位を築いているわけです。だから、弁護士出身の議員との結びつきを強めれば、得る物は大きいと思います。
司法改革の課題
【鈴木】率直で貴重なお話し有り難うございました。ところで、古川先生からは、まだまだ弁政連、弱いんではないのか、というお話しも頂きましたが、弁政連の活動が活発になって参りましたのは、この10年司法改革の推進と共に広がってきたという面があります。この司法改革、まだ途中ではありますが、この点も、率直なご意見を頂ければと思います。
【古川議員】法曹人口のところでは止めなきゃいけないと思います。このご時世、企業が自主的に弁護士を採用するということにはならないですし、法科大学院は予備校化して失敗しています。法科大学院自体、かなり変えないとダメだと思います。それと、制度を変えて国民の意識を変えよう、そういう発想、これが間違いではないかと思います。制度というのは、国民性、国民の意識に基づいて作っていくシステムにしないと、それは奢りになるのではないでしょうか。
【階議員】やはり法曹の数は増えてもユーザーの意識が変わってない、身近に弁護士がいても弁護士に頼むというのは最後の最後どうしようもなくなって、しょうがなく頼むということなんじゃないでしょうか。弁護士は身近になっても頼むことは身近じゃないということではないでしょうか。
【鈴木】司法制度改革は、個々の弁護士にとっては負担ばかり増える、職業としても厳しくなるばかりである、という面があります。その意味では、日弁連は、純粋に、理念に基づき「市民のための司法改革」ということで歯を食い縛って進めて参りましたが、やはり、このあたりで、政治の力が今一度必要という時点に立ち至ったと思います。その意味で、これからは、両先生には、一層のご活躍をお願いしたいと思うところでありますが、この対談の最後として、弁護士、弁護士会、そして弁政連に対する忌憚のない要望等、お話し下さい。
弁護士会、弁政連に望むもの
【古川議員】応援をして頂きたい。できれば、物心両面で、この点は、是非ともお願いしたいと思います。他方、本当のところで、これだけはやって欲しいみたいなところを弁護士会として一致してわかりやすく、しっかりログインして頂けないか、という思いです。
【階議員】政治と金の問題を考えますと、これからの政治活動は、個人献金に依拠しなければなりません。弁護士の皆さんにご支援いただけると非常に助かるなというのが露骨なお願いです。それと弁護士が政治の世界で活躍することは、絶対に国にとってはプラスのことなので、国民のために、一人でも多くの優秀な弁護士がこの政治の世界に入って頂ければと思います。
【鈴木】古川先生、階先生、本当に、本日は、大変有り難うございました。お二人のお話しで共通しておりますのは、政治が変わり日本が変わる中で、弁護士が政治に関わる、そして国会に行くことの重要性が益々高まっているということでした。弁政連の活動への期待も大きなものが感じられました。弁政連は、足腰を鍛え、きちんと先生方を支援できる組織になるよう、今後も頑張って参りますので、宜しくお願い致します。
(平成22年1月29日於霞が関弁護士会館17階会議室)
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