弁政連ニュース
特集〈座談会〉
民事扶助・日弁連援助事業の公費・国費化(6/6)
【安藤】条件を吟味することなく協議離婚せざるを得なかった方も、使いやすい制度であれば、弁護士を使えたかもしれないと。
【山﨑】そのとおりです。弁護士は非常に費用が高いっ皆さん思っているので、そもそも弁護士に相談するという選択肢が最初から頭にないっていう人も多いんですよね、残念ながら。
【安藤】法テラスという知識があってもお金を返さなきゃいけないという頭であれば、そもそもそこに行くこともないという問題もありますね。黒井さん、小坂さんはいかがですか。
【黒井】刑事事件の場合、弁護側から示談の申出があったということが多くて、検察官からも早く示談しろと言われて、どうしようと探しに探し回ってやっと私のところに来て、やっと示談できました、自分の納得できる示談が出来ましたって言われたことがあります。逆に言えば、弁護士へのアクセスが出来なかったがゆえに、弁護人から言われて不本意に示談してしまった人も相当いるでしょうし、特に性犯罪被害者の方はその示談のことでまたトラウマになってしまうことが、実際としてあるわけです。
【小坂】日弁連援助を使えば弁護士の支援が受けられることが子どもに知られていない。弁護士のところにその子どもが相談に来れば、何とか支援できているのですけど、そこに繋がっていない子どもがたくさんいるのです。そこは広報の問題で、もちろん弁護士会としても広報していかないといけないのですが、国の制度になって国が広報していけば、かなり変わってくると思うのですね。というのが今DV等相談で、虐待も相談対象として類型化されているのですけど、この利用が非常に少ないのです。非常に少ないので法テラスが、その利用を増やさなきゃいけないということで、一生懸命広報を始めようしていますね。国の制度になると利用を増やすように頑張るようになります。なので、虐待を受けた子どもの支援を国の制度としてできるようになれば、広報が広がり、支援できる子どもも増えると思います。埋もれている子どもたちの支援を弁護士がしていくためにも、公的制度にしていくのは重要だと思います。
政治に求められること
【安藤】最後に政治に対して望むことを皆さんからお伺いしていきたいと思います。
【黒井】今、日本が犯罪被害者等給付金として、被害者に投入しているお金は、年間10億円程度です。一方で例えばノルウェーは、2015年の補償額が約50億円で、GDP比で日本でいえば500億円投入していることになります。スウェーデンの2016年の補償額は約16億円。GDP比で、日本でいえば128億円が投入されていることになります。被害者については被害者参加など権利の面ではかなり充実してきたのですけれども、あとはお金の問題で、補償の問題もそうだし国費による弁護士の制度もそうだし、国のお金をどういうふうに使うかどこに使うのかという問題。日本はそれなりの能力があるわけですから、それをこの人権支援、被害者も含めて、そこにどれだけお金を投入する覚悟があるのかを問いたいです。
【山﨑】DV被害者支援は本当に人権保障の問題です。世界的に見れば、女性に対する暴力根絶の問題だし、ジェンダー問題としても見過ごせない。国として何を優先事項とするかっていうことだと思いますが、まだまだその女性の人権の問題は周辺に置かれているという印象です。日本は先進国の中で一番ジェンダーギャップが大きい国として、やっぱりこれを恥ずかしいと思わなければいけないだろうと思うので、まずはそうした視点でDV被害者保護にお金をかけていただきたいなと思います。
【小坂】特に子どものことで言うと、最近子どもの権利に対する関心が高まっていて、この国会でもこども基本法案が審議されていますが、子どもは単に守られるだけの存在じゃなくて、権利の主体であるということが、かなり強調されています。ただ、子どもが権利の主体だといっても、子どもが一人でそれを行使していくのは難しい、特に保護者による子どもの支援を期待できない場合は子どもが権利行使するのは難しいわけで、そこに弁護士が支援していく意義があると思います。そうやってエンパワーされた子どもは、元々自分が持っている能力を生かして、自分自身が幸せに生きていけるわけだし、それは社会の活力というか、そういうことにも繋がると思うのです。そう考えるとやっぱり子どもに投資するというのは、子どもの権利保障であると同時に社会への投資でもあると思います。そういう意識を持って国に、より子どもへの支援、投資をしていただきたいなということを強く思っております。
【安藤】ありがとうございます。先進国として、人権救済にどれだけ予算配分ができるかと、覚悟が問われていますね。
(2022年5月9日実施)
※出席者の役職は座談会当日時点のものです。

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