弁政連ニュース

特集〈座談会〉

民事扶助・日弁連援助事業の公費・国費化(5/6)

立替償還制度の問題点

【山﨑】DVとか犯罪被害者にしても児童虐待にしても、本当に弁護士が介入する必要性が高い人たちだと思うんですけれども、しかも資力が少ない人が多いなかで、償還を前提とした制度しかないっていうのは、国としてどうなのかと私は思っています。これは人権の問題ですので、国が公費をもって弁護士を選任させる、その費用は国が負担するというのは、当然先進国としてあるべきだと思います。

【安藤】先進国の中で、価値観を共通にする国同士の価値観外交とよく言われているところですから、そこで同様の制度を構築していくのは当然なのかなと私も思います。

【小坂】山崎さんのおっしゃったことに同感です。子どもの関係で言うと、ここ何年かで問題になったものに無戸籍の問題があります。いわゆる300日問題などで、親が産まれた子どもの出生届を出せない。それがそのままになって戸籍を持っていないという人がいるわけです。ここ何年か法務省がその問題の解消に力を入れていて、弁護士会にも協力を求めて、無戸籍者を解消していく取組みを積極的にされていて、そのことは非常にいいことなんです。しかし無戸籍を解消するためには家事審判手続をしないといけない。法務局から弁護士会に無戸籍解消のために家事審判手続が必要な人がいますという情報を受けて弁護士が動こうとすると、当然弁護士費用の問題が出てくる。特に無戸籍者が未成年者のときは親が動かないといけないわけですけども、その親御さんに弁護士費用の話をするときには当然民事扶助の話もします。だけども民事扶助は償還があるからということで躊躇される方、結構いらっしゃるんですよね。その結果、子どもが戸籍を持てないままになってしまいます。

無戸籍者の解消も人権問題で、そういうことに国が一つの方針として取り組もうとしているんだけれども、そのための法的支援に対して給付がされないという点は、しっかり手当をしてほしいなと思います。

【黒井】被害者の場合、損害賠償請求をする際に、今は刑事裁判と同じ裁判体による損害賠償命令制度というものがありますが、国選の被害者参加制度、つまり刑事事件への参加は国費で弁護士費用が出るのだけれども、損害賠償命令をやるとすると、民事扶助をやらなきゃいけない。つまり弁護士費用を立て替えてもらわなきゃいけないのです。7 万円ぐらいなんですけども、被害者、遺族からしてみると、自分が被害を受けたのになんで費用を払って弁護士を頼まなきゃいけないんだっていう疑問があるのと、被害に遭って経済的に厳しくなってしまった人も多いです。しかも、回収可能性が乏しかったりしますので、やはり、給付制にする必要があると思っています。

【安藤】ところで黒井さん、日弁連援助事業の国費化・公費化について日弁連、法務省との間で協議されていると思うんですが、ここまでの協議内容につき、差し支えのない範囲で教えてください。

【黒井】2020年、当時の森まさこ法務大臣に意見書を持っていって、何とか検討してもらえないかとお願いしたところ、森大臣からまずは検討会をやりましょうと言っていただいて、同年、法務省に犯罪被害者支援弁護士制度検討会が設置され、何回か検討を重ねました。その後、森先生に国会でも質問をしていただいて、真に援助が必要な犯罪被害者が早期の段階から弁護士による支援を受けるための弁護士費用の援助を始めとする充実した法的支援の方策を検討する旨の項目が入った改正少年法の附帯決議がなされました。そのことがあって、再度、法務省との協議会が昨年末から始まったところです。今は適用する犯罪類型をどうするのか、被害者をどう捉え、認定するのかといったところが議論されています。また、支援の始期や終期の問題についても、議論をしていくことになります。

人権の問題として公費投入を

【安藤】ありがとうございます。次に、特に重点的に訴えたいところをお話いただけますか。

【小坂】子どもに対する法律援助を利用して支援してきている実績は蓄積されていると思います。例えば弁護士が中心になって運営している制度として子どもシェルターがあります。これは子どもが虐待を受けるなどして家庭で暮らせなくなったときの一時的な避難場所です。その子どもシェルターに入った子ども一人一人に弁護士がつきます。子ども担当弁護士と言ったりしますが、その弁護士が子どもの相談に乗りながら、先ほど言った児童相談所と交渉したり、親と交渉したり、あるいは次のステップの生活場所を探したりということをします。こうした活動によって救われたというか、自分の新しい人生を築けるようになったという子どもがいます。こういう活動も今は、子どもに対する日弁連援助を使ってやってきてるのですけども、虐待を受けた子どもの支援は国の責任だと思うんです。こういった活動は、やはり国の方で費用を給付すべきものだと思います。

【安藤】シェルター利用者ですが、具体的にどういった方がいらっしゃるんですか?

【小坂】例えば父親からずっと性的虐待を受け続けている。母親もそれから守ろうとしない、子どもはどこにも相談できずに苦しみながら生活をしてきている、周りからも気づかれずに児童相談所にも保護されないで、ある程度の年齢になったときに、もう耐えられないということで、家を飛び出すわけですよね。そういう子どもたちは、それまで守ってくれなかった大人に対する不信が強いので、なかなか公的な機関へ相談に行かないわけですが、それが例えば人づてに弁護士のところに繋がって弁護士のところに来る。それを弁護士が守ろうとしても当面の生活場所がないわけです。未成年者単独でアパートを借りられるかというと、親の同意がないと借りられないのが普通ですし、児童相談所に行こうかって言ってもこれは子ども側でも児童相談所というところはあんまり安心できないとか、あるいは今の子は児童相談所に行くと携帯が使えないとかいう問題もあったりして児童相談所にも行こうとしない子がいます。そういうときに、中には弁護士が自分の法律事務所に泊めたとかですね、そういう話も以前あったのですよね。それはもう個人の活動でやっていくのは難しいということで、子どもシェルターができたんです。そういうケースでは、弁護士が親と話をしに行くと親の方は、いやそんなことはしてないとか、自分は親権者だ、何の権限があって保護するんだとか、反発が非常に強いわけです。それに対して弁護士が、ご両親のやっていることは親権の行使として正当化できないですよという法的な話も含めて交渉していかないといけないわけです。こうした活動は弁護士にしかできないし、弁護士がすることで子どもの生活が守られるところだと思います。

【山﨑】弁護士の公益性が、一般の方とか政治や行政には理解されづらいのかなあと思っています。DVでは、まず相談に来る人はほとんどが女性で、お子さんがいて、専業主婦だったり非正規労働だったりしてお金に余裕がない方で、夫と離婚したいとかあるいは夫から逃げたいと思っているわけですね。例えば避難の話までは法律相談で出来ても、離婚が成立しないと縁を切ることにならないわけですから、やはり代理援助は不可欠なんです。弁護士法がある以上、夫との交渉の窓口になれるのは弁護士だけですから、そこは弁護士しかできない仕事だということを理解いただくのがまず必要だろう。

その上で弁護士の公益性ですが、一部の別居親から「DV冤罪」という主張がされることがあります。DVなんかないのにでっち上げて、親権とか離婚を有利に進めるため、弁護士が同居親、主に妻をそそのかして自分たちの弁護士費用を儲けるためにわざわざその親子問題を複雑化させているという主張です。我々のような離婚を多く扱う弁護士の中には、そうした人たちから、例えば事務所の前で街宣をされたりだとか、懲戒請求をされたり損害賠償請求まで起こされて、業務妨害に発展している部分もあります。その背景にあるのは、やっぱり弁護士が自分の儲けのために仕事をしている、営利目的だという感覚だと思うんです。ですから、弁護士は人権擁護のために役割を担っているという公益性をアピールする手段はないものかと常々思っています。

【黒井】我々弁護士がこれだけ一生懸命やっていますといくら言っても、通じないところがあって、各地の支援団体の方にアンケートをとり、被害者なりご遺族なりの、弁護士を使ってよかったとか、弁護士による支援が必要だと感じたっていうような意見を集めようとしています。既に各地の条例、被害者支援条例を作るにあたってニーズ調査をしていることもあって、その中を見ると確かに「弁護士をまず見つけたかった」とか、「弁護士による支援が必要だ」、あるいは「助かった」とかいうような意見が多く出ています。弁護士自身がいくら言っても自分の利益のために言っているのではないかと言われてしまうので、実際の利用者の方の声を集めて届けることが必要だろうと思って今やっているところです。

【山﨑】日本の離婚は協議離婚が9割で、あえて弁護士のところに来ない人が大半です。その中には相当数のDV事案もあります。離婚後に相談に来る方たちが言うことは、その協議離婚のときに、なんとかDVから逃れるために、もう養育費もいらない財産分与もいらない慰謝料なんかもってのほかと、何の財産的給付も受けないで夫の言いなりに離婚してしまった方が相当います。これは離婚の段階で適切な弁護士の支援があれば防げたことですよね。日本は離婚届の提出だけで協議離婚が成立します。他の先進国では全件裁判離婚という国も多い中で、真摯な同意を確認する担保もないわけですよね。DVは、夫婦に支配従属関係がある中で、対等な協議なんか成立するはずがないので、非常に問題だと思います。今、離婚後の親子関係の検討が法制審で行なわれていますけれども、全件の離婚に専門的な第三者の関与が必要じゃないかという意見は多数出ています。



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