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インタビュー 上川陽子法務大臣に聞く

上川陽子法務大臣に聞く

ワンチームで「法の支配の貫徹」と
「誰一人取り残さない」社会を目指す


法務大臣室にて


ご就任おめでとうございます。従来のご経験を踏まえ、今内閣における法務大臣としての意気込みをお聞かせください。

「法の支配の貫徹」と、「誰一人取り残さない」社会の実現を目指す決意は、過去法務大臣を務めたときと変わらず、同じ思いです。ただ、3回目だから分かっているとか、これは以前にも聞いたなどと思ってしまうと、慢心につながり、見るべきものが見えなくなってしまうので、フレッシュな気持ちで一つ一つの事柄にまっすぐに向き合うことをかなり意識しています。

私は、5万4000人の法務省職員とワンチームとなって取組を進める姿勢を大事にしています。「やるべきことをしっかりやっていく姿勢を示し、そして成果を得る」という意識を、全ての職員が共有することが重要であり、それが、国民の皆様からの法務行政に対する信頼につながると考えています。

今回の入閣で重点的に取り組みたい課題は何でしょうか?

まずは、新型コロナウイルス対策です。法務省では、これまでも、基本的対処方針を作成するなど対策を実施してきていますが、秋冬のインフルエンザとの同時流行をも想定し、危機管理の意識をもって徹底した対策を講じる必要があると考えています。また、コロナ禍で帰国が困難となり、かつ、生活に困難を抱える在留外国人への支援、コロナに関連した差別・偏見の解消に向けた取組、密を避けるため法務省の職場におけるテレワーク等の「新たな日常」としての定着などの施策を行っていきたいと考えています。

外国人は日本の社会の生活者であるとの視点をもって、新たな在留資格の創設などにより新しい局面に入った外国人の受け入れに対応し、多文化共生社会に向けて力を注いでまいります。また、性犯罪・性暴力、不当な差別・偏見、児童虐待などにより、その人権が傷つけられた方々や、無戸籍者の方々、両親が離婚された子供たちなど、様々な困難を抱える方々への取組を推進していきたいと考えています。

法務行政の国際化、デジタル化も大きなテーマです。国際化については、我が国のソフトパワーとしての法制度を積極的に発信したいと考えています。2021年3月にはわが国で開催される国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)も控えています。京都コングレスでは、官・民の結束により長く続いてきたわが国の保護司制度について、現行の英語訳(Probation Officer)では充分に理解されにくい、「HOGOSHI」というシステムとしての制度の背景や活動の実態を積極的に発信することなどを考えています。デジタル化の推進に関しては、ウィズコロナ、アフターコロナの時代を見据えるこの機会こそがイノベーションのチャンスと考えています。従来の考えややり方に捕らわれない発想を持って取り組んでまいります。

そして、観光先進国にふさわしい出入国管理の実現や、わが国の領土・領海・領空の警戒警備についても、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。

弁護士や弁護士会へメッセージをお願いします。

法の支配の実践、人権擁護と社会正義の実現において、法曹の役割は、以前にも増してより大きくなってきています。

先日、外国人の在留を支援する国の機関を集約させた拠点として設けられた外国人在留センター(FRESC /フレスク)を見てまいりました。多文化共生社会の実現に向け、外国人に対して各地域の実情に応じた支援を提供するに当たっては、各地域の弁護士会や法テラスが果たす役割は極めて重要であると考えています。今後、弁護士会と法テラスのより一層の連携を進めていただき、外国人に対して、適切な支援がなされるよう取り組んでいただきたいと考えております。司法のグローバル化の観点からは、国内だけではなく、国際的にも通用する法曹人材の育成が一層必要となると考えておりますので、そのような人材の育成により積極的に取り組んでいただきたいと考えております。京都コングレスでは、ユースフォーラムも開催され、そこでは、法教育についても議論が行われる予定です。若者たちに対して、法の支配の理念の重要性等を伝える上で、法教育の果たす役割も大きくなると考えており、弁護士会や弁護士の方々には、様々な機会に講師役を務めていただくなど、積極的に法教育に携わっていただければと考えております。

法務省としては、今後も、弁護士の皆様と引き続き連携・協力してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

於法務大臣室
上川陽子法務大臣を囲んで。左から 小川晃司(編集長=聞き手)、斎藤義房(広報委員長)、村越進理事長、谷眞人幹事長

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