弁政連ニュース

特集〈座談会〉

公文書管理の現状と課題(3/5)

電子データの問題

【森田】記録の話でいいますと、森田審査会で私が属していた部会は防衛省案件を集中的に取扱う部会で、非常に申立て案件も多くて「電磁的記録を出せ」というケースも多くありました。で、「ありません」という応答が多い。正式な文書としては紙で残すにしてもパソコンで作成するわけだから電磁的記録は必ず1 回はあるはずで、それはどうなったのですかと聞くと、今はないと。いつ誰が廃棄したかはわかりませんと。先ほどの三宅さんの話でいうと、それは1 年未満文書という扱いなのですけど、現場にはそういう意識さえもなくて、それはもう随時廃棄してしまうのだと。そもそも文書管理のルールに則らないで、現場の判断でもういらなくなったから捨てると。そういう応答しか返ってこないわけですよ。そういう応答があまりに繰り返されたので、ある案件の答申の中で防衛省に対して電磁的記録について保存廃棄を適切に行うためのルールを設けることを要望するという付言を書きました。

同じ付言をこの時期に3 つくらい繰り返したのですが全然言うこと聞いていないですね。ここで対応していてくれればこんなに大変なことにならなかったのにと思います。

【柳楽】そもそも公文書管理法の2条4項の「行政文書」の定義に「電磁的記録を含む」とはっきり書いてあるじゃないですか。それなのに電子データについてはその程度の扱いなんですか。

【森田】とりあえず定義には入れたのだけど、立法時は電磁的記録の特質に応じたルールを全く考えていなかったんですよね。立法時には録音テープとかその類が中心だったので、ここまでデジタル化が早く進展するということを想定していなかった。

【三宅】ただ、内閣府は調査には行っているんですよ。オーストラリアに行ってデータをメタデータで保存するか、マイクロソフトといったOSで保存するかいろんなことを研究している。2005年から。早くやれというけど各省庁でOSも違ったり、業者も違ったりとかで全然進まなくて結局ここまで来てしまった。

【出口】電子メールを情報公開請求しても役所の電子メールのやり取りはあまり出てこないといいますよね。元々管理すべき公文書の中にメールも含まれるという認識が役所の中には無いということなのですね。

【三宅】情報公開法を作った際、行政文書の組織共用性については決裁供覧のハンコを押したものだけにするか、ハンコ押していないけど会議で配れば組織共用だとか、それぐらいのイメージでしたよね。

電子メールで添付ファイルを送ったら会議で配ったのと同じで組織共用になるという考えは広くゆき渡っていなかったから、個々の職員がパソコンで文書作ってメールでやり取りすればそれがすべて組織共用になってしまうというのは、法律よりも技術が先に進んでしまって、公務員の感覚からすると予想していなかった文書を見られてしまう、情報公開の対象が広がったという感覚なのでしょう。

行政文書の要件としての「組織共用性」

【柳楽】最初「ない」と言っていた文書が、後から個人のハードディスクにありましたとか、メールが出てきましたとかいうのがよくありますよね。

【三宅】「総理のご意向」文書というものがありました。あれは国家戦略特区の中で獣医学部を新設するという話になって、文科省から内閣府に行っている担当が文科省に報告するわけですね。文科省の方で事務次官に説明する資料として使ったわけです。

文書は組織として共用している形になるから当然これは組織共用文書になります。作成者も作成年月日もないけど、これは明らかに情報公開法の範囲の行政文書です。作成者も作成年月日もないじゃないかということで官房長官から「怪文書」と言われましたが、あれがまさに象徴的で、政治家も含めて、今回のことが起きるまで情報公開法や公文書管理法のいう「行政文書」の概念について学ぶ機会がなかったのだと思います。

【柳楽】公文書管理法2 条4 項の「行政文書」の定義の中に、「当該行政機関の職員が組織的に用いるもの」という要件があります。組織共用性という要件なのですが、これはどこまで行けば組織共用性が認められるものなのですか。

【森田】従来の運用を見ると、少なくとも職務に関して複数の人間がやり取りをしている、関わっているものですね。

【柳楽】A職員からB職員にメールを送りました。添付ファイルに含まれていました。これは?

【森田】それが職務上の内容であれば組織共用性は認められます。必ずしも決裁までいかなくてもよいという趣旨でそういう規定になっているので、途中でぽしゃっても複数の人間が関わっていれば共用性はあるというのが大原則です。

【三宅】今の森田さんの解釈は内閣の情報公開審査会の解釈ですが、内閣法制局長官でさえその解釈を全く理解していませんでした。

【森田】そのケースは集団的自衛権についての国会想定問答ですね。一番上まで行く一つ手前まで行ったけど、最終的に長官が認めなかったので最終決裁はしていない。そういうケースでした。だけどそこまで行ったら当然組織共用性はあって行政文書に当たるわけですよ。それなのに、最終的に採用されなかったからその時点で行政文書では無くなるのだという理屈を内閣法制局長官が言ったのですよ。

【柳楽】意思決定に至る過程で、組織内で共用された文書ですからね。

【森田】そうです。過去の事例では、執務の手引書が改訂されて過去のバージョンはもう使わないから本来捨てるべきものが残っていただけで行政文書じゃないんだという争い方をしてきたケースもありましたけど、認められないわけですよ。そういう過去の運用実例を見ていけばそんな解釈は出てこないはずですよね。



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