弁政連ニュース

特集〈座談会〉

公文書管理の現状と課題(2/5)

公文書管理は現場の抵抗感が強い

【柳楽】法律の制定は情報公開法が先だったのですよね。

【三宅】情報公開法を作った時、情報公開と公文書管理は車の両輪だから公文書管理法も作るべきだと言いましたが、情報公開制度を作るだけで手一杯ということで情報公開法だけを先に作ることになりました。その情報公開法の中にとりあえず努力義務として、文書をきちんと管理しましょうという趣旨の規定が盛り込まれました。

【柳楽】情報公開法ができたのが1999年で、公文書管理法ができたのが2009年で、その間10年かかっています。

【森田】10年かかったというより、10年後にできたことの方がむしろ私は奇跡的だと思っています。当時は「消えた年金記録」の問題で世論の関心も高まっていて、当時の国会議員の先生方には与野党を超えて頑張っていただいて文書管理法の制定に結実しました。いま日弁連や関弁連で自治体等のヒアリングをしているのですけれども、実は公文書管理の制度については現場の抵抗が強い。これは情報公開制度を作るのよりも格段に難しいんです。自治体は1980年代から情報公開条例は作り始めて、国が情報公開法を作るまでには全国の自治体の9 割くらいで情報公開条例ができていました。ところが公文書管理条例を持っている自治体は現在でも20に満たない程度です。公文書管理法の中には「公文書管理法の趣旨にのっとり、自治体は必要な施策を策定、実施せよ」とわざわざ法律に書いてあるのにこの有様です。情報公開は「請求が来たら対応を検討する」という話なのに対して、公文書管理のルール化となると毎日の業務を全部見直さなければならない。こういうことに対する現場の抵抗は非常に強い。ですから国も法制化はしたけれども、まだまだ現場で徹底はされていないという面があると思います。

【出口】法制度としては、公文書管理法ができた後に行政文書ガイドラインを作られて、各省庁がそのガイドラインを見ながら、各省での仕事のしかたとか所管業務の違いに応じた各省の文書管理規則を作っているところだと思います。情報公開は新たな事務なので今まであるものに付け加えればいいのですが、行政文書の管理は今までの事務全般の文書作成や管理・保存方法を見直す面があるので各省庁がそれぞれ主体的に取り組まなければ難しいという事情があります。

「保存期間1年未満」の文書

【柳楽】公文書管理は現場の抵抗感が強いということですが、実際に現場ではどのような運用がなされているのでしょうか。

【三宅】先ほどの文書の特定の誤りとか不存在の問題にも絡む話なのですが、役所は情報公開を避けるために1 年未満に自由に捨てられる文書というものを実は一杯作っていたのです。それが去年初めて明るみに出た。公文書管理法がない時代に、防衛省は紙媒体で公表すると電子データを全部捨てるのですよ。ものすごいことやっているなと。イラクの日報は無いと言われたでしょ。ところが森友の問題が出て、同じように南スーダンの問題が同時並行で起きた。南スーダンの日報ってあれだけ安全保障法制で議論して、初めて駆け付け警護するぞということになったのですよね。だったら毎日現地で何が起こっているのかの記録はとても大切なはずで、実際現地からは1日70ページぐらい写真も含めて電子送信で送ってきているわけです。それが、総括報告ができ上がったら全部捨てていいという扱いになっている。あんな重要な話で、現場が毎日どうなっているかという情報を自衛隊で持たないで、どうやって駆け付け警護の是非とかが検証できるのかと思ったわ けです。ちょうどその時に森友の公文書管理の問題が起きて国会で8億円の値引きをして売ったけれど、契約が締結された以上は契約交渉が保存期間1年未満の文書なので廃棄しましたと。

【柳楽】あれは弁護士の感覚からすると明らかにおかしいですよね。お金の支払いもまだ終わってないでしょう。契約書を交わしたからその交渉過程のものは全部廃棄など、ちょっとありえないですよね。

【三宅】内閣府の「行政文書の管理に関するガイドライン」の「別表第1 」に保存期間が定められています。そこには決算と予算に関する書類は5年保存と書いています。売買契約で代金を1回で支払うものにしたってその関連文書は5年保存です。しかも森友は1000件か2000件に1 件という特例での10年の分割払いでしょ。代金の支払いが終わるのは10年後なわけだからそこから5年とか保存しておかないと、仮に後日契約の効力が争われるようなことになったときに反対証拠が何も出せない。なのに、財務省は保存1年未満の文書だから廃棄しましたと。

これは社会常識からみても、どう考えてもおかしい。公文書管理委員会の委員をやっていて1年未満で廃棄ができる文書が実はこんなにあるというのは実際わからなかったのです。公文書管理委員会では公文書管理規則というところまではチェックしました。ちゃんと保存期間の年限を定めた文書があって そこに当てはまらないものも趣旨と文書の性質に照らして保存しろと書いてあるので、みんな大事そうなものは残してくれているだろうと思ったら、意外や意外。保存期間でピックアップした文書だけ残してそれ以外は重要でないから1 年未満で捨てると、そういう運用だった。それが森友と南スーダンでわかった。

【柳楽】重要でない文書だと行政機関側が判断したものは、そもそもチェックできるところに上がってこない。見えないままというわけですか。

【出口】行政文書ファイル管理簿に記録されないわけですね。そもそもそこに記録されないから、廃棄したという記録も残らない。

【柳楽】1年未満で廃棄していいものかどうかという振り分けは誰がやるのですか。

【三宅】公文書管理法5条で、行政文書は作ったときに保存期間を設定することになっています。厚労省の行政文書管理規則の細則は、大変に正直で、ファイルは「1年未満」と「5年保存」と「10年以上保存」との3つに分けなさいとなっていた。最初から1 年未満で捨てられるファイルを作っていたわけです。しかし、我々弁護士は事件の法律相談を受けたときにはまず時系列の順序が重要と言うじゃないですか。その中で重要なものをピックアップして証拠として使えるかどうか吟味する。

【柳楽】重要かどうかということは、だいたい後から分かるものですよね。

【三宅】弁護士になりたての頃に先輩から「記録はまず時系列で綴じるんだ」と言われて、ああそうかと思ったのを鮮烈に覚えているのですが、役所もそういうふうにやっていると思っていたら実は全然そうではなかった。



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