弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

日弁連の国際戦略(5/5)

「ローエイシア東京大会2017」の意義

【斎藤】幸寺さんに今年の9月18日から東京で開かれるローエイシア2017年大会についてお話をいただきたいと思います。このローエイシア東京大会は日弁連とその会員の国際活動にとってどのような意義をもつのでしょうか。

【幸寺】総論的に申し上げますと、世界中の法曹とのネットワークを飛躍的に拡大させること、国内外のリーガルサービスの活動量を増大させること、またグローバルに活躍する人材を送り出すこと、などの取り組みの重要な一つといえると思います。具体的に言うとビジネス、人権、家族法、公益、ADR、司法、刑事など約30のセッションが企画されております。また学生によるムートコートというのがありまして、この国際模擬法廷というのがローエイシアの特色になっていますけど、大学と連携して準備をして、中身も豊富でいろんなインターナショナルな課題の知見を深めていく意義があると思います。交流という意味では、いわゆる弁護士だけではなく、アジア太平洋最高裁長官会議も開催されますので裁判所関係の方も参加されます。それから学者、研究者、法務省、経済団体・企業の方々にも参加を募って交流という意味では幅広い法律家総体としての活動になるような企画をしておりますので、弁護士・弁護士会としてもさらに交流を深めていく意義があると思います。弁護士会も登録後10年以内の会員が約半分ということですので、特に若手の方に今後の国際化に目を向けていただきたいということで、10年以内の若手の方の参加費を一部補助しています。

国会、政府への期待

【斎藤】本日は第一回目の座談会ですから「国際戦略」の全体像を語っていただきました。これから日弁連が取り組みを進めていくにあたって、ぜひ国会議員の皆さんや政府の皆さんにこの点を期待したいという点を語っていただきます。まず幸寺さんから。

【幸寺】幸寺今まで出てきた問題ほとんどすべて政府や国会の協力がないと進まない問題でございます。もう少し具体的に申し上げますと、司法制度支援の予算を拡充いただく。充分な予算をいただかないと支援もしづらいですからご配慮いただきたいですし、後は国際的な紛争解決能力の向上のための手段という意味では依頼者と弁護士の通信秘密保護の問題、それから先ほど特に重要だといわれた国際商事仲裁の問題は、国会や政府にご協力理解していただかないと進まない問題だと認識しています。それから、日本の弁護士が海外に行くときになかなか活動しにくいということもございますので、外国弁護士規制の緩和の問題も政府などにいろいろとお話をして御理解をしていただきたいと思っております。

【三宅】外国弁護士規制の問題で言いますと、若手の弁護士の中では海外とくに東南アジアの法律事務所で働きたいという方がずいぶん多くなっておりまして、今までは海外留学というとアメリカで学んで日本に戻って仕事に生かす流れがありましたけど、今は非常にグローバルな状況中で、いきなり東南アジアの法律事務所に入ってそこで外国弁護士として活動をはじめている方もずいぶん増えてきている。そういう国際的な活動に熱心な弁護士を支える活動をぜひ積極的に日弁連でもしていかなければならないし、関係各方面にご理解をいただきたい。日本企業が現地でM&Aで企業を立ち上げたりするのに日本の弁護士がいないと日本の国内法との関係もわからない。日本の弁護士を積極的に採用しようという東南アジアの事務所もありますのでビジネスの展開の中でアジアでの日本の弁護士のネットワークができれば、やがてそこから人権に特化していろんな活動をしていく方もまた増えていくと思います。そういう弁護士の展開を日弁連が支え、関係各方面に訴えかけていくというところで、弁政連もぜひ積極的に活動していく必要があると思います。

【大谷】日本では、日弁連もそうですけど、国連で作られてきた国際人権条約を日本にもってきて日本の人権問題をどう解決していくかということをずっとやってきた。いわば輸入型といいますか。ただ、日本の中小企業が海外進出するときや、日本の多国籍企業がサプライチェーンのなかでいかに国際人権基準を守っていくか。世界の経済の中で日本の企業が活動する中でもそういうところをきちんと守っているかどうか、弁護士がアドバイスすることが非常に重要になりますので、国際人権法、国際的な人権基準というものがあらゆる活動に根付くことが非常に重要で、政府の各省や国会議員にもご理解いただきたいと思います。また本当は日本からもっと国連の人権機関等を支える人材が出てくる可能性のある層として法曹が重要な位置にあると思います。しかし個々人が目指しても実際には難しくていろいろな支援が必要なので、弁護士の中でそういうことを目指す人たちがキャリアを積めるようにぜひお願いしたいと思います。

それから日本は2014年にハーグ条約に入りました。これは賛否両論ありましたが、総合的に両面を見る必要があると思います。ハーグ条約に入るかどうかの時にイメージされていたのは、母親が日本に連れ返ってきた子どもが外国に送り返されるというものでした。ハーグ条約に入って三年になりますが、データで見ますと子どもを日本に連れてきたということで、海外から返還が求められるケースより少ないものの、日本から子どもを外国に連れていかれたので連れ戻したいというケースが相当数あります。

また、国際人権法の分野でいいますと、かつて、オーストラリアで日本人のスーツケースの中に麻薬があったということで捕まって有罪になったが、通訳が適切に行われなかった結果ではないかということで、個人通報制度という手続を使ってその日本人が国連の自由権規約委員会に条約違反だとして救済を求める申立をしたメルボルン事件という事件があります。それはオーストラリアが個人通報制度に入っていたから日本人であってもできたのですが、日本は個人通報制度に入っていません。先進国の中で入っていないのは日本とアメリカだけです。今後外国から日本に来る方、住む方が増えていく中で、個人通報制度に入ることも国際人権のインフラとして非常に重要です。海外に出ていく日本人の支援も必要ですし、また日本に来られる外国人の人権保障のインフラも大きな課題として考えていただければと思います。

【山神】若手の弁護士の国際化に関しまして日弁連や各弁護士会でも体制を整えるようにしていますが、韓国や中国では、官民合同で体系的な支援が提供されているそうです。韓国では、法務省にあたる法務部と大韓弁協、及び韓国内外で活躍する韓国系弁護士による世界韓人弁護士協会(IAKL)が共同で主催する「若手弁護士の海外進出のためのアカデミー」が2014年に開始し、国際法務関連分野の最高レベルの講師による無料の連続講義に、初年度は150名が参加しました。ここで選抜されると、韓国企業の海外拠点や、韓国国際協力団等の海外事務所、IAKLの弁護士が所属する米国他の法律事務所等でインターンのチャンスが与えられるそうです。また中国でも、2013年から毎年100人ほどの弁護士に国内研修が行われ、そこから約半数を選抜して、欧州や米国ロースクール研修と法律事務所インターンに5週間派遣するという大がかりなプログラムが行われています。他にも、省政府の派遣留学プロジェクトとして、アメリカの大学のMBA課程に30名を派遣するプロジェクトもあるそうです。韓国と中国の、特に若手弁護士の国際対応力の進展は質量ともに目覚ましいものがあり、日本の弁護士はこれに追い付くことができていない状況にあると感じています。個人の自助努力また日弁連の取り組みのみならず、政府から何らかのご支援・ご協力を頂けましたら大変ありがたいと思います。

【斎藤】非常に刺激的で幅広いお話をありがとうございました。「日弁連の国際戦略」は、これからの日本の司法や法曹に求められているものは何かを考える極めて重要なテーマであると思います。一回では到底終わりません。次回・次々回と継続座談会を考えておりますので、ご協力をお願いいたします。そして、国会や政府の方々には、日本の司法制度は遅れていると認識していただいて、課題克服に早急に動いてほしいですね。

於霞が関弁護士会館

(2017年1月25日 於霞が関弁護士会館)



▲このページのトップへ