弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

日弁連の国際戦略(2/5)

公益、人権、法の支配の実現等に関わる活動

【斎藤】日弁連の「国際戦略」が掲げている基本目標は後掲のとおりですが、各目標ごとに概要を説明していただきたいと思います。まず大谷さん、目標1 の「公益、人権、法の支配の実現等に関わる活動」について、特に重点とするところをお話いただきたいと思います。

【大谷】国際人権分野では、国際人権基準に基づいて国内における人権活動や人権侵害に対する救済活動に取り組むというのがあります。特に国際人権法の専門知識と経験を備えた弁護士を養成し、拡大することも活動項目に入っています。日弁連では1996年に国際人権問題委員会ができまして、日本が批准した国際人権条約に基づいて設置された条約機関に日本政府が条約の実施状況を報告する義務があり、報告に基づく審査がジュネーブの国連欧州本部で行われるのですが、委員が的確な審査を行うため、NGOの一つとして日弁連が日本における人権状況を報告し、よりよい勧告を求める。また勧告が出たらそれを国内で実施するために政府や議員等に働きかけるといった活動をやってきております。国連では経済社会理事会との協議資格をもっているNGOに特別な地位を与えていまして、国連のある種の会議にはその資格を持っている団体のみ参加して発言などができるという仕組みがございます。日弁連は1999年にこの協議資格を取得し、国連の条約機関でも、日弁連のように弁護士の強制加入団体が会内の手続きを経て国連に提出した情報というのは、高く評価されているところです。一方で、国際人権条約を弁護士の実務の中で活用していく活動については、まだまだ足りていませんので、さらに力を入れていく必要があります。それから日本だけではなくて外国における人権侵害の問題についても法曹団体として声明を出す等の活動を行うことが今回の国際戦略に入っております。外国における人権侵害に対する日弁連の活動については、日弁連としてのガイドラインを採択しております。人権活動を行う弁護士に対する政府からの抑圧等の問題について声明を出すなどいった活動を中心に、今後も行っていくことになると思います。

【斎藤】外国における法整備制度、弁護士養成に関するところはどうですか。

【大谷】この分野は、日弁連の中の委員会としては、国際交流委員会が、国際司法支援活動として、長年取り組んでいます。法の支配や司法アクセスは日本一国だけの問題ではなく、世界中にそういった理念が確立されていくことが必要であり、そのために日本の弁護士、弁護士会が貢献することを日弁連のミッションとして取り組んでいるところです。この分野では、JICA(独立行政法人国際協力機構)とも長年連携しています。外国における国際支援活動に参加した弁護士が、その後、JICAの長期専門家として途上国に一年、二年派遣されて現地において日弁連、JICA、関係機関と調整しながらプロジェクトを進めたり、またJICAの本部に専門家として勤務するといった形の展開が見られます。

【斎藤】具体的にアジアではどういう国の支援をしていますか。

【大谷】カンボジア、ラオス、ベトナム、ミャンマー、中国、モンゴルといった国になります。

弁護士と弁護士会の役割に関する活動

【斎藤】続いては、基本目標2 の「弁護士と弁護士会の役割に関する活動」について、山神さんからお願いします。

【山神】山神弁護士・弁護士会の役割に関し国際的知見に学び会員に還元する活動の一つとして、日弁連はこれまでに10の海外弁護士会と友好協定を結び、定期的に交流しております。中でも大韓弁護士協会との間では、毎年執行部や弁連代表者が集まり、100名規模のバーリーダーズ会議を開催しています。そこでは、法制度や弁護士の置かれている状況に類似点が多いこともあり、法曹養成や職域拡大、法律扶助など幅広い分野につき活発な議論が行われます。また、ヨーロッパ各弁護士会で構成される欧州弁護士会評議会と中華全国律師協会との間でも、毎年執行部が会合を持っており、例えば非弁護士による事務所所有(ABS)の取り扱い、人口知能(AI)の発達による弁護士業務の変化等の最新の関心事につき意見交換を行い、日弁連の活動に還元するよう努めています。次に情報発信のための活動ですが、その一つとして、例えば国際法曹協会(IBA)の年次大会の機会に朝食会を主催して、様々な国の弁護士会からのパネリストとともにディスカッションを行なう中で日弁連の取り組みを紹介するといった国際会議での発信があります。テーマとしては、これまで法曹養成コストの担い手、災害直後の司法アクセスと弁護士の役割、秘匿特権を扱いました。他に、国連の会議の際の活動もありますが、こちらはお詳しい大谷先生からお話し頂ければと思います。情報発信のもう一つとして、会長声明や日弁連の意見書のうち、海外からの関心の高いと思われる死刑、再審、入管、外国人、国連、司法改革等に関するものをピックアップして、英文に翻訳しホームページに掲載しております。また日弁連の活動一般について英文のパンフレットを隔年で作成し、海外から表敬訪問に来られる方々や国際会議参加者への説明に活用しています。

【斎藤】大谷さんに最近のトピックを補足してもらいましょうか。

【大谷】国際人権分野で、日弁連は1990年代から、条約機関で日本についての審査が行われるときに委員会に対して報告書を提出するなど、勧告を引き出すための働きかけをする活動が多かったのですが、ある時期から国際人権基準を日本のために使うというだけではなくて、国際人権規範の発展や強化のために、日本の経験や日本からの問題意識を提起して、他の国の方たちとも意見を交換するために、国連の会議の際にサイドイベントと呼ばれる会合を企画開催するような活動が増えてきました。具体的には、これまでに、毎年三月にニューヨークで開催される国連の女性の地位委員会で女性の人権問題についてのサイドイベントを行ったり、5年に1回世界の各地で開かれる国連犯罪防止・刑事司法会議(コングレス)で国際的なNGOとの共催でサイドイベントを行ったりしています。このコングレスは、次回会議が2020年に日本で開催されることが決まっており、日弁連ではワーキンググループを立ち上げて、サイドイベントの企画開催等に向けて準備を始めています。


日弁連「国際戦略」2017年2月18日(PDF:124KB)



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