弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

司法修習生に対する
経済的支援(6/6)


【柳楽】自民党司法制度調査会の「法曹養成制度についての中間提言」に「そもそも三権の一翼を担う司法における人材養成の根幹をなす制度負担について、本来財政的事情のみで私費負担とすべきではない。」と書かれていますが、これはおっしゃるとおりだと思います。私が修習生時代に、ある東京地裁の裁判官から「判決を書いているのは裁判官ではない。判決を作っているのは当事者代理人の弁護士だ。弁護士の説得力と熱意によって裁判官が判決を書いている。」という話をいただいたことがあります。確かに裁判所は事件が持ち込まれなければ裁判ができませんので、その最高裁の判例も当事者が持ち込んで当事者が主張、反論する中で生まれてくるものですよね。実際のベースを作っている弁護士は在野の法曹です。在野の法曹がしっかりしていないとその健全な司法の機能というのはまわらないと思いますし、弁護士を含めた法曹を国が育てることが大切だと思います。

【中村】宮﨑先生がおっしゃるとおり、私たちも同じ思いでやっていると思います。まさに三権の一翼を担う人材を国が養成するのは国の根幹を支える人材を育成するために必要なのだという思いがあると思います。

【柳楽】もちろん国の財源も限りがあって財政上の制約があるとは思いますが、国の予算配分から言って、それほど大きな金額なのでしょうか。

【宮﨑】いわゆる司法予算は少ない。経済産業省とか厚生労働省とか政策官庁は政策予算をとるけど、法務省とか最高裁判所はその予算のほとんどが人件費です。ですから司法予算が少ないのも別に去年今年そうなった話ではなくて、これまで国民の歩みの中であったことなので、その中で今与えられた課題の中に今後もっとより良い国を作っていけるかをともに努力しなければならないと思っているのです。

【柳楽】最後に関係各方面へのメッセージをお願いします。

【萱野】最初は理念的な対立が大きくてビギナーズ・ネットとしても活動が難しかったわけですが、私たちの立場からすると法曹への道を諦めていく当事者がいるということが一番の問題だと思っています。一度法曹を諦めた方はおそらく、制度が変わっても戻ってこられないと思います。一刻も早くこの課題を解決していただきたいです。

【新里】さきほどご紹介がありましたビギナーズ・ネットの冊子「ベンゴマン」の裏表紙には若い人の声が掲載されています。それを見ながら、この運動は法律家を目指す若者の当事者運動を日弁連が支えている部分があるなと感じています。ビギナーズ・ネットの何千人という若い人たちの中に、社会を自分たちの手で変えていくんだという強い意志を持った、すごいエネルギーがあると思います。その人たちがきっと法曹の世界にも来てくれるでしょうし、閉塞感がある社会を若い人が変える力になって、この運動がいろんな意味で社会の活性化につながるとすごくいいことだなと思っています。

【中村】この問題というのは三権分立の一翼を担う司法の人材をどうやって養成するかという問題であり、国の形が問われている問題であると思います。そのためには、司法を国民の方にいかに身近に感じていただいて、この問題に関心をもっていただくのかが大切だと思っています。

【宮﨑】問題を課題に置き換えて課題を解決するということを言いましたが、修習手当で課題が解決したとしても、法曹に人が集まらないという問題はまだ解決していないのです。日弁連の一員として言いますが次にやることはまだあります。弁護士になってもいいことないかもしれないという雰囲気はだめで、活動領域の問題、法曹のイメージの問題なども含めて取り組まなければならないと思っています。ここには社会に貢献できる夢がある、人生がある、理想がある、法曹にかける価値があると若い人に思って頂けるようにならないと課題の解決にはいたりません。次の課題はまだ解決していないと理解してもらいたいと思います。

於霞が関弁護士会館

(平成28年10月17日 於霞が関弁護士会館)



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