弁政連ニュース

〈座談会〉

弁護士から地方議会へ
~地方自治の担い手として~(4/4)


【小川】みなさん、各自治体の現場をご覧になっていると思うのですが、弁護士がこのように地方自治体の現場に関与していったらいいのに、ということがあったらお話しいただけますか。

【奥谷】田舎の人は法律相談に行くということになかなか馴染みがないものなのだと感じました。そういう所にもっと弁護士が入っていけたらいいのにと思います。

【薬丸】他の自治体でもそうだと思いますが、群馬県では監査委員や公安委員などに弁護士の方々が入っておられるなど、弁護士がいた方がいい部分についてある程度入っているのかなというのが実感です。

【湯沢】先ほども話題にあがりましたが、そんなに忙しくないから兼業もできるでしょう、というような間違ったイメージをもたれているので、まずは実態を正しく理解してもらう必要があると思います。

【三雲】最近は様々な審議会などに弁護士が入っているので、ある程度行政が法律家を使うということを意識し始めたのだと思います。

また、弁護士会の一部では積極的に自治体業務を開拓しようとする動きもあり、例えば民法改正が見込まれているのでそれについてレクチャーしようかといったことを話していたりします。ただし、いずれも自治体が弁護士を雇うことを想定しているのです。議会の側から見ると、執行部側が法律家の支援を受けるのであれば、それをチェックする機能を充実するために議会でも法律家へのアクセスができれば、という問題意識もあるのではないかと思います。

【奥谷】自治体と弁護士の連携について、議員のレベルでは動くのですが首長さんによってはなかなか耳を傾けてくれないということもあります。地方分権になって地域・地方に沿った条例を作るよう国が言っているのに、もっとニーズに答えた条例を作る必要があるのではないか。弁護士が議員にもっと働きかけて首長を動かしてくれると凄くよくなるんじゃないかと思います。

【小川】弁護士が地方議会議員としてもっと地方自治の現場に参加していくにあたって、課題はなんだと思われますか。

【薬丸】選挙における応援の体制を整えていくことではないかと思います。弁護士の方でも、議員になるにはどうしたらいいのかわからないことがあると思いますので、弁政連として応援体制を整えて応援していただけることが地方議会議員の増加に繋がるのではないかと思います。

【三雲】政党の名前を背負って活動する場合、本来は政党独自のノウハウというものがあると思うんです。しかし、必ずしもそれがきちんと得られるとは限らない。私の場合も、政党に準備されたレールを進んだというよりも自分で試行錯誤しながら進んだように思います。そういう場合に弁政連のネットワークなどで後押しができると良いのではと思います。地方議員をやっている弁護士はレアな存在なので横の繋がりが乏しいのですが、弁護士同士ということで情報交換や提供といった支援をしながら地方の政治に参画していけば、大きな力を作ることもできるのではないかと思うのです。

【湯沢】税を滞納して相談にこられる多重債務者の方がいますが、債務整理などで弁護士が関与すれば生活再建が可能と思えるケースが多くあります。解決が可能な事案で苦しんでいる方を見るのは本当に歯がゆいです。弁護士事務所は敷居が高くとも、滞納相談の場に弁護士がいれば可能性が大きく広がるのではないでしょうか。

【小川】これから地方議会議員になろうという方へのメッセージがありましたらお願いいたします。

【三雲】自分が生活している地域に愛着があればある程やりがいがあると思います。個別のクライアントの役に立つだけでなく、地域社会全体のために仕事をすることの意義を理解していただければと思います。これから地方議員になりたいという方がいらっしゃったら、私なり本日の座談会に参加されている先生方にお尋ねいただけたらと思います。

【湯沢】自分は弁護士だ湯沢と肩で風を切って歩くような方にはなっていただきたくないと思います。培ってきたものを活かすのは大切ですが、先ずは一市民として自治体のために何ができるかを考えて欲しい。そういう思いの方がいらっしゃればぜひ一緒にやっていきたいです。

【薬丸】議員になると弁護士とはまた違った大変さがあります。また、お金持ちとか、住む世界が違う人という風に見られてしまうなど、プラスにもなれば、マイナスになる部分もあります。でも、法律だけでなく行政的な相談も受けられるようになり、相談の幅やできることの範囲が広がるので、大きなやりがいを感じています。

【奥谷】選挙もあるし大変な仕事であるとは思いますが、悩みや問題を解決する弁護士の仕事の延長だと思うので、検討されている方は是非挑戦していただきたいと思います。

【小川】本日はありがとうございました。

於霞が関弁護士会館

(平成27年9月19日 於霞ヶ関弁護士会館)

 


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