弁政連ニュース

〈座談会〉

地方創生の柱に司法基盤の拡充を
-地方・地域の実践で政府を動かす-

(6/6)

【石曾根】本題に戻って、地方裁判所の支部を失った地方の自治体は疲弊するばっかりです。安心と安全を束ねる裁判所がなくなったからです。今までは裁判所は中央集権でした。中央集権の考え方を変えていかなければならない。裁判所を改革するには我々が市民の目線から司法を根幹から変える国家的一大事業を提言し、その為の予算を設けるべきだと。これをしていかないと司法の機能を市民の目線で充実させられない。

【藤田】私も、裁判所機能の拡充は、わが国の根幹をなす大きな事業だと思います。自治体の首長さんとか地元の国会議員の皆さんとは地域司法というテーマにとどまらず、色々な会合とか勉強会などで意見交換をしております。

【泉】日本の司法予算は、あまりに少なすぎます。しかも、昔からあまり変わっていない。そこで、次善の策の一つとして、地方自治体の予算を活用するという方法がありうると思います。人口30万人弱の明石市でも年間予算は1,000億円を超えています。首長と議会が了解すれば、一定額の予算を捻出することは、そう難しいことではありません。弁護士会と地方自治体が組めば実現できることは結構あるように思います。

また余計なことかもしれませんが、弁護士会の組織改革や財政見直しなども必要なように思います。身内に甘い組織のままでは、市民の信頼は得られないように思えてなりません。

【斎藤】ご意見は、承って検討します。先ほど北川さんが言われた裁判所に対する需要はあるというだけでは不十分で、目に見える形に現実化させないと説得力が無いというのは、その通りだと思います。そのためにも、市民に身近な自治体との連携は重要ですね。

【北川】そこまでいきわたらせなければ法の支配は行き届かないということを市長たちが言う。その条件を先生方が整えていただく時期になっている。市民目線での法の支配というのを待っていますよ。明石市もそうです。

【藤田】例えば、労働審判とか家裁出張所での調停とか、現実に市民の声が出て制度は作られる。そういう意味で市民の現実の要求をくみ上げて、それをぶつけて制度化していくことだと思うのです。人を家裁の出張所に置いてくれというのも市民から要求が出て初めて実現すると思うのです。その結果、裁判所の使い勝手が良くなり、法の支配の拡大につながります。市民サービスの充実という観点から、地方自治体のご支援をお願いします。

【泉】地方自治体と市民と弁護士会が一緒になって国民的な運動を巻き起こしていくことも、たしかに考えられると思います。とりわけ市町村は、市民サービスの提供主体でもあり、市民と接する機会も多いので、市民と弁護士会の橋渡しとしては適任だと思います。

また、学校現場での法教育についても、弁護士を身近に感じてもらえるいい機会であり、弁護士会と地方自治体とが連携して取り組めるテーマの一つだと思っています。

【藤田】新潟県弁護士会には、学校へ行こう委員会というのがありまして、3年間でのべ142校、約24,000名の生徒さんと父母を対象として憲法の話や法の支配の話をしたりしています。法曹志望者が減ってきている。今のうちに弁護士あるいは司法の姿を見てもらいたい。子どもたちや父母と同じ目線に立っているようなネーミングを工夫しました。もう一つは、新潟県や東北各県は事業者やお年寄りの自殺が多いのですね。弁護士会が連携を取って、自殺防止の視点で県市と連携して、関係団体とネットワークを敷いて、事業費については県からは頂戴しています。石曾根さんが労働審判の関係で、県下の県議会、市議会に請願なさっている。我々もしなければならないと思っていますし、色々なことを関弁連管内で学ぶものは学んで。先ほど弁政連についても厳しい意見を戴きましたが、お互い弁政連の支部同士が情報を交換して、いいことはお互いどんどんやっていこうよという気持ちを強く持っています。

【斎藤】話は多岐に展開して尽きませんが、本日は貴重なお話をいただき、本当にありがとうございま した。

於霞が関弁護士会館

(平成27年5月2日 於霞が関弁護士会館)


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