弁政連ニュース

特集〈座談会〉

法制審・刑事司法制度
特別部会の結論を受けて

(6/6)

【菊地】最後に3 年の長い数多くの特別部会での議論をまとめた答申案を、刑事弁護制度の歴史の中でどう位置づけたらいいのか、これをどう活かしていくのかを皆さんそれぞれから思いを込めてお話を頂きたいと思います。

【周防】証拠開示の部分周防で本当に残念だったのは再審における証拠開示制度について全く何の進歩もなかったことです。袴田事件のようにあれだけ証拠隠しが明らかになった事件があるのに、再審での証拠開示制度を全く考えないというのはあり得ない。公判前整理手続に付される事件、つまり裁判の迅速化のために必要なのだという考え方のもとでの証拠開示の話になっていたわけですよね。証拠は公共の財産であるということで証拠開示についてもう少し議論できればなというのがものすごく心残りでした。僕は取り調べの録音・録画についてはあの会議の中ではあれがベターなのだと判断しました。申し訳ないけど、あとは弁護士の皆さんに頑張ってもらうしかない。証拠開示については心残りというか、何とかしないといけないと思いました。

【後藤】将来的には、全面証拠開示が目標になると思います。周防さんがおっしゃったように、今の証拠開示制度は公判前整理手続に依存しています。まずはこれを一般化して証拠開示請求権を作るのが第一段階だと思います。その方向では、今回は、公判前整理手続の請求権を認めるという小さな前進に留まりました。もう一つは、再審請求の場面での証拠開示制度を作ることが目指すべき目標だと思います。取り調べの録音・録画については、すでに検察庁も警察庁も録音・録画の有効性を認識したと思います。現場ではいろいろ抵抗があるとしても、これからは盛んに行われる方向に向かうと思います。そこでは、「都合のいい部分だけ記録する」という使い方をどうコントロールするかが重要な問題になりそうです。裁判所がそれについてどんなな姿勢を取るのかが注目点です。私は今回の議論で、日本で警察の反対を乗り越えて新しい制度を作ることがいかに難しいかを痛感したと同時に、裁判所がその権限を活用して、するべきことをしてほしいと思いました。

【小野】日本の刑事司法制度は、従来は刑法にしても少年法にしても、官側の要請による制度作りや改変をずっと行なってきました。それに対して弁護士会が反対してきたという構図が戦後ずっと続いてきました。しかし2001年の司法制度改革審議会意見書以降、変わってきました。この国では4 件の死刑再審無罪事件が続いた時でさえ、何も変わらなかった。その中で今回の部会が辛うじてではありますが、こういう結果を出せたのは「よく出来たなぁ」と思うわけです。日本は国連の人権委員会からいろいろ言われても、ちっとも変わらない。「取り調べ時間が長すぎる」「代用監獄は駄目だ」と言われても「これが一番素晴らしいんです」と言い続けている。今回の特別部会の結果をとっかかりに、一つ一つ何十年かかるかわからないけど、これからもやっていくしかない。刑事司法だけでなく、他の様々な領域でも変わっていって、はじめて全体が何とかなることだろうと思います。

【小坂井】まさに「特別部会だからこそここまで来られた」ということは、法制審議会特別部会を批判する方々にも認めていただかないといけないと私は思います。有識者5名の方たちの意見があり、ここまで来た。日本の刑事司法の制度改革というのは並大抵のことでは動かないということなんです。ただ今回の可視化問題、証拠開示問題は今後の手がかりや基盤という意味で言えば大きな意味があると思っています。日弁連は被疑者国選というハード面については当番弁護士で汗をかいて、ずいぶんな時間をかけてここまで来た。ただソフト面でこちらからきっちりと現実に獲得に動いたというのは今回の可視化以外はなかなかなかったと思います。法制審はだいたい日弁連が反対意見を述べてガス抜きをしつつ官側の意見が通るという歴史を繰り返してきています。特別部会は新たな歴史を獲得するだけのものがあった。そう位置づけるべきだと思います。可視化についても見直し規定がある、同時に依命通知という運用がある。今後現場で弁護士がどれだけ捜査段階で可視化申入れをして捜査官を説得できるか、公判の段階で、証拠能力や信用性をきっちり争うか、そういう活動を可視化記録媒体とセットにしながらどこまでやれるか。記録媒体がないこと自体を信用性の疑いに結びつける、あるいはあったらあったで記録をきっちり見て、どこが誘導でありどこが誤導でありどこが理詰めであるか、という問題点をきっちり出していく。そういう活動をどこまでできるか。そこにかかっていると思う。今後、全事件で全面的に可視化していくためにも、どこまで活動実績を踏めるかどうかなんです。私は依命通知が出た今、それから法律ができて施行されるまでの段階、それから見直しまでの過程、その各段階での弁護実践がものすごく重要になってくると思います。日弁連がちゃんと情報の集約と整理をして、きちんとアウトプットしていく、一つ一つの可視化実践の弁護の質を上げて情報を共有し、見直しに繋げていく。

それを意識的にやっていかないと太刀打ちできないと思います。これからは弁護人立会をも含めて、実践をどう組み立てていくか、日弁連は、そういう情報収集と研修を一丸となって進める時期にきていると思います。

【菊地】まだまだ議論は尽きないところですが、紙面の関係上、この辺で終わらせて戴きます。本日はありがとうございました。

於霞が関弁護士会館

(平成26年10月20日 於霞が関弁護士会館)


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