弁政連ニュース

特集〈座談会〉

法制審・刑事司法制度
特別部会の結論を受けて

(4/6)

【菊地】可視化と通信傍受の取引、抱き合わせではないかという批判もあった。その中で答申案を日弁連も含め全会一致ということになった経過を踏まえてこの問題をどう考えたらいいのでしょうか。

【小野】日弁連理事会でも複数の理事から個別採決をするべきだという意見が出されました。しかし捜査側もこの案で全体をまとめるとの認識で議論してきたので、これを個別にばらした場合に録音録画は裁量実施、あるいは会話傍受が復活するなどの事態になりかねない。そこでこういう形で何とか全体がまとまったと思います。通信傍受は確かに範囲が大分広がりました。先ほど周防さんがおっしゃったように日弁連は旧態依然の言い方しかできなかったかもしれません。もともと通信傍受法ではいわゆる補充性、要するにほかの方法によっては著しく困難であるという要件はかかっています。今回新たに広げられた罪種については、さらに組織性要件がかけられたので、それなりに要件の縛りは盛り込まれた。

なおメールのやり取りなどについてはサーバーそのものを令状で押さえることが現に通信傍受法によらずに行われているので、通信傍受法の対象が拡大したからといってどこまで法律として使われるのか、という気もする。ただし、会話傍受については担当官の説明を聞いていると、今回は見送られたものの、今後、他の機会に検討される可能性があります。

【小坂井】今まで私自身、一件だけ通信傍受の証拠開示を受けたことがあります。今後、罪種が増えて実施されると、弁護実践上も通信傍受の適正さがテーマになってくると思います。

【菊地】通信傍受はその実施に大変な費用が掛かるようでそれで金を掛けてもどこまでできるのか、通信技術に追いつけるのかという議論もありましたけど。周防さん「人質司法の打破」も一つのキャッチフレーズで取り組んできたのですが、身体不拘束の原則という刑事法の大原則の認識について、裁判官・捜査官側・弁護士の委員幹事で現状の認識について裁判傍聴も体験された中でどんな感想を抱きましたか。

【周防】裁判官には驚きました。自分たちは適切に判断してやってきている。人質司法なんてない、とあそこまで堂々と言えるんだと。今まで起きた冤罪が、人質司法と言われる勾留の実態と深く結びついているとは一切考えないのか、自分たちは公平、公正にやっていると言うばかりで、裁判官に反省はありません。例えば調書裁判にしてもそうです。警察・検察のやり方を裁判所が認めてきたから、調書裁判と言われるような裁判になったんです。でも彼らはそうは思っていない。勾留して人の自由を奪うことへの想像力の無さを指摘したら、想像力ではなく逮捕・勾留の要件を具体的に確かめて判断していると言われてしまった。本当に何も分かっていない。人権を守る最後の砦のはずなのに。

【小野】身体不拘束の指針はなくなってしまいました。裁量保釈における考慮事情だけになってしまった。中間処分もできなかった。現状に対する裁判所の認識が180度違っていた。

【後藤】裁判の現場ではもう少し動きがあって、勾留の却下率が上がってきています。地方によっては運用を見直そうという積極的な動きもある中で、裁判所は、今までのやり方には問題が無いという建前に拘ってしまった感じがあります。もう少し裁判所が柔軟になってほしかったです。

【小野】それは裁判員裁判の時もそうで、今の刑事裁判に問題はない、だから裁判員裁判は必要ないと裁判所は考えていたものの、国民の司法参加という方向でまとまったわけですが、今回はそのような議論の立て方が難しかった。かつては保釈も早く、広くされていたし勾留も少なかったが、昭和50年代後半から60年代にかけて状況が悪化し、今また少し良くなっている。今僕が担当している詐欺事件でも罪を認めた共犯者はすぐ保釈され、争っている数人は勾留が半年以上になっている。現場は変わっていない。

【菊地】小坂井さん、全面証拠開示ということで日弁連も頑張ったのですが、最終的には一覧表、リスト開示になった。

【周防】全面証拠開示で頑張って欲しかった。

【小坂井】昭和44年4月25日最高裁決定を頼りに細々とした証拠開示を受けてなんとか無罪を勝ち取るといった実務をずっとやってきて、裁判員裁判を契機にやっと証拠開示の制度ができたという経緯を辿ったわけです。周防さんが言われる「弁護士は証拠を当然に全部見られる」という一般の感覚と業界人の感覚とでズレがあった。全面証拠開示についてはもっと本来日弁連が言うべきところを周防さんから見たら言えていないのではないかというご批判を受けたかなと思うのです。公判前整理手続での証拠開示制度が結構有意義だという感覚があって、これは自分も反省しなければならない。ただ全面証拠開示は基本構想段階で落とされました。リスト開示がようやく入った。確かに今回のリスト開示にしても本当に十分な情報のあるリストになっているのか、どこまで手掛かりになるのかはわからない。が、リストが開示される意義は大きいですね。今二段階開示の公判前整理手続で開示を受けても、正直全体の情報の中のどの部分なのか実はわかっていない。少なくともリスト開示が出れば全貌が分かりますよね。

現場の実務で弁護人が全面証拠開示を求めていくことの基盤となる、そういう実践が今後リスト開示を梃にしてできるのではないかと思います。


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