弁政連ニュース

特集〈座談会〉

法制審・刑事司法制度
特別部会の結論を受けて

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【菊地】中身に入っていきますが、小坂井さん、取り調べの録音・録画制度の対象事件は裁判員裁判対象事件と検察官の独自捜査事件で、全体の2%程度に限られるという最終的な結論に至ったのですが、この結論に対してどのような意見をお持ちですか。

【小坂井】結論に関して 言いますと、不十分とい小坂井えば極めて不十分だと思いますが、対象事件については警察も含めて原則全過程録画が法制化されるのは大きな意義があります。同時に今回の答申案とともに最高検のいわゆる依命通知が重要です。今年の10月に施行されますが可視化の制度化とセットになって出てきて、より広い範囲で最高検でやるんだと決めたわけです。部会の議論についていうと、40人学級といいますか、誰かが言ったことに反論しようとしても何順番目にかやっと回ってくる。そういう意味では言いっ放し、議論が詰みあがっていかない。捜査機関側の根強い抵抗というのが何度も何度も繰り返されました。彼らは彼らで思惑があり、一定の方向に持って行きたかったと思う。が、彼らも見えていなかったと思います。結構いろいろ微妙なところで揺れながらここにたどり着いたのかなという印象を持っています。

【菊地】周防さん。ほかの有識者五名の方と特別部会に今年の3月7日から意見書を3回出されて、相当なインパクトを与えたと思うのですが。

【周防】有識者の中でまとまる考えがあれば意見書として出していこうと。提案されたのは村木さんですね。あの40人の議論ですから、小坂井さんが仰られたように言いっ放しの感があって、僕の意見が聞入れられる余地はないと思っていました。ですので、村木さんのご提案はとてもありがたかったです。有識者としてまとまって意見を出せば、同じ意見であっても個々別々に言うより力を持つだろうと。ほかの論点では細かい違いがありましたが、録音・録画については5 人すべてが全事件、全過程が原則だと一致しました。落としどころを見極めないと物別れというかこの会議が紛糾するだけになる。

そこで原則的には全事件全過程だがそれを将来的な見通しとして段階的にやっていくとしたら、第一段階は裁判員裁判とせめて検察取調べは全事件をやりましょうと。僕は何とかして、録音・録画の対象事件が狭い範囲であっても、法律で、録音・録画は原則的に全過程でなければならないと決めたかった。

早く法制化しないと警察・検察は自分たちに都合の良い形で録音・録画をやっていくだろうと。だから最高検の依命通知のあとは、席を立つ選択肢はなくなりました。

【菊地】小野さん、議論過程を見ながら感想なりご意見を。

【小野】例外規定については、運用によってかなり広がりうる事由が入ってしまったのは不満というか残念なところでしたが、全過程録音録画義務の実現には今回周防さんがおっしゃった有識者五人の方の発言が非常に大きかった。ようやくここまで持ってこられたという思いです。また、法務省は依命通知を出して運用を広げるとして、さらに拡大していきますというサインを出してきました。そこまで引き出した効果はあった。本来は研究者たちも全過程の拡大へ向けての役割を果たすべきだったと思うのです。それがなかったのが非常に残念という感じはしています。弁護士委員が可視化対象犯罪は狭くて不十分だからあくまで反対と言ってもあの状況ではそれ以上に進んだ答申になる見通しは無く、そういう意味では日弁連としてはやむを得ない選択をしたと思います。

【後藤】警察は最後に仕方なく同意したという印象です。裁判員裁判だけといっても、殺人事件などの取り調べがオープンになることに、現場からの抵抗があったのだろうと思います。警察の側は、捜査官の裁量による録音録画を法制化したかったのでしょう。委員の人数では捜査機関側の意見が多数を占めることは予想できますから。ギリギリのところで裁判員裁判事件の全過程の録音録画を義務づけるところまで行ったのは、有識者委員の強い意見の結果です。


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