弁政連ニュース

特集〈座談会〉

地方政治への
弁護士関与の可能性
-自治体の議会及び行政に司法の視点を-

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【斎藤】市民意見交換会などもやっているようですね。

【加藤】議会報告会という名前になってしまっているのですが、本来は意見交換会であるべきであって、それも今までは地域や期別でバラバラに組まれた議員で行って一方的に説明して、市民が意見を言う時間は少ない形でしたけど、もっと市民の方の意見が政策に直で反映できるようにと、前々回からは常任委員会ごとでチームを組んで意見交換を行うようになりました。

議員から「流山市空き家等の適正管理に関する条例」と「流山市自転車の安全利用に関する条例」を発議して可決しています。議会改革度の評価基準の中に「議員発議の条例があるか」という項目もありますので、そのあたりはポイントになっているようです。ただ実際には議員だけでは条例の細かい文言整理等はできませんので、議会事務局や、任期付の弁護士や法制担当の方にお手伝いいただいております。

【斎藤】その弁護士の方は具体的にどのようなお仕事をしているのでしょうか。

【加藤】市長側から「任期付の弁護士を付けたい」という議案の上程があった時に、執行部と議会事務局両方の兼任として使って頂いて構いませんということで可決したときいています。しかし、直接弁護士に伺いますと議案を調整するときに執行部側として関与したのに、また議会から相談されても関わりにくいということがあるようです。それで議会にも弁護士を入れてもらいたいということで予算要望をしたのですが、今一人いる弁護士を両方で使っていいことになっていますから、それはちょっと予算的に認められないということで却下されてしまいました。

流山市は本当に予算査定が厳しいんです。健全な自治体ではあるのですが、大きな企業があるわけではなく、住民を誘致して住民税は少しずつ入ってきているんですけど若い方たちの給料が伸びていませんので、税収は増えませんから、歳入が厳しい中で両方で使える弁護士がすでにいる中、さらにお金がかかるわけですからもう一人弁護士の予算を組むというのは難しいわけなんですね。

【常谷】例えば常勤だと非常にお金がかかるということですよね。募集する際も長い時間かかると思います。私の例でも、和歌山市が募集を始めてから採用までに非常に時間がかかったと聞いています。常勤にこだわらない採用方法についてはどうお考えなのでしょうか。

【加藤】私は自分で判断できないことは別の弁護加藤氏士に相談に行くこともあるんです。市民の方から相談されたことを弁護士に聞くこともあります。弁護士を雇っている議員もいますけど、私は顧問弁護士を雇うような資力はありませんから行った時に相談料を払うんですけど、議会のことですから政務活動費が出たらいいなと思います。しかし今は出ないんですよ。何故かと言いますと「流山市の任期付弁護士に相談すればいいでしょ」という話になってしまうんです。でもそれはちょっと違うと思っています。

【川合】私に言わせると、必ずしも議会と執行部は利害対立していないんですよ。今の議会は執行部に対するチェック機能だけが重視されていますからそういう心配があるのではないかと言われているんですけど、要するに執行部というのは案を作るだけなんですよね。条例制定権は議会しか持っていません。だから当然両方にまたがってやっているのは不思議ではなく、市民のためにやっているかどうか。そういう視点でチェックすればいいわけですから、同じ弁護士が両方の立場にいるというのはおかしいことではないと私は思います。

【加藤】もちろん川合市長がおっしゃるように執行部も議会も協力していいものを作るというのは間違いないんですけど、どうしても相談するところが一つになってしまうのは違うのではないかと。弁護士の専門もいろいろですから、相談先がいくつかあるといいですよね。先ほど明石市には弁護士さんが5人もいらっしゃるということがありましたし、さまざまな意見を法的な立場からいただけるとすごくいい自治体になっていくのではないかと思います。

【川合】「議会事務局に弁護士を入れる」というのはとてもいいことだと私も思っているんですよ。先ほどの発言の続きなんですけど、例えば執行部がやった不祥事を議会が追求するときに、執行部の弁護士に相談すると、「それはおかしい」ということは言いにくいと思うんですけど、条例を作る場面においては利害対立がないはずなんです。

【常谷】具体的にミクロなレベルまで落としていくと難しいということもあると思います。公平な立場というか真ん中の立場から議会と執行部の利益を丸めて、というよりも、相談を受けた当事者的な立場でやる。それを考えると議会事務局に独立していて、独立の立場の者が協力するという体を取ったほうが、より良い議会になっていくのではないかなと思います。その意味で、弁護士を雇う費用も高いし予算が取りにくいということは分かったので、常勤で任期付を雇うという形式にこだわらずに、議員さん皆さんで政務調査費を出せるように協力するですとか、スポット的に雇っていくという方向から風穴を開けていただいて、「なんだ、だいぶ役立つじゃないか」という認識にしていただくとありがたいなと思います。

【加藤】大事なものを決めるその日だけでも顧問弁護士的な方が議会にいていただくとすごく心強いですね。もちろん私たちも参考人招致をして条例を作る際も教授とかに来ていただいて、アドバイスを頂いたんですけど法律の専門家ではありませんので、最終的な判断は議員がやるべきなんで、もう少し踏み込んだ議会側としてのアドバイスをいただける方がほしいですね。


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