弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

利用者目線で改革を
「民事司法を利用しやすくする懇談会」の最終報告を受けて (6/6)


【斎藤】 これからの社会は民間人(私人)が社会のルールづくりに参画するという意味でも市民が積極的に司法を活用する社会になっていかなければならないと思います。懇談会は大きな提言をしているわけですが、これを具体的に実現していくのは大変な作業です。それぞれの立場でこの提言を実現していくためには何が必要で、自分としてはこうやっていきたいといったお考えがあればお聞かせください。

【山根】 まずは、より良い、暮らしやすい社会の実現のために司法をもっと市民の身近なものにしようという、そうした意識を持つ必要があるということを、シンポジウムや様々な方策を用いて市民に伝えなければいけないと思います。今、こうした問題意識を持っている市民は大変少ないと思いますので、大変難しい課題ではありますが、わかりやすく情報提供する必要があります。報告書ができたときの最後の委員会でもそういった発言がたくさん出たと思いますが、国民や市民を巻き込んでこの問題も前に持っていかないと上手く展開していかないと感じます。一歩ずつ進めていかなければいけませんね。

【高橋】 私個人がまずやらなければいけないことは、自分の領域である研究の中で理論を深めていくということです。

そしてやはり最後は、国民自身(世論)が決めることですので、マスコミの方々のご理解が一番肝要だと思っています。法律家とお医者さんはよく専門家同士ということで対比されるのですが、医療の現場がいかに問題を抱えているかというのはマスコミの方がここ10~15年で取り上げてくださっています。私個人は、裁判官もそれに匹敵するような大変さの中にいるのだと見ていますが、裁判所への切り込みというのは医療界よりまだ手が付いていないと思いますので、そこはマスコミの方に大いに報道していただきたい。そのときには我々の報告書とは違うものが出てくるかもしれませんが、それはそれで批判していただくのは結構です。マスコミとしては我々の宣伝機関ではありませんし、批判してさらに良くなることもあり得ますから、そういう意味でもマスコミの方に大いに期待しております。

【安岡】 元マスコミの立場からいいますと、大掛かりな話は大きな記事でないとなかなか書けないのです。報告書で提言しているような検討組織が発足することになれば、司法制度改革のときに審議会の報道を逐一していましたが、あれに匹敵するぐらい大きな記事にできる取材事象になるだろうと思います。そのためにも、なんとか検討組織を実現させる必要がありますが、一つ有効だと思うのは、報告書でも随分と分量を割いて書いている、法制度整備の経済効果をアピールすることです。報告書をまとめた10月30日前後の日本経済新聞の紙面から拾っただけで参考になる記事を3つ見つけました。1つは朝刊の『大機小機』というコラムで10月23日付です。一部引用すると「経済を本格的な成長軌道に乗せるために必要なのは、資本主義(市場経済)を運営する制度・条件の整備あるいは再構築である。全速力で運転しても安心できる法制度の再構築があって初めて、不要な規制の排除が可能になる。日本の国益を守るという決意は、法に真剣に取り組むことを抜きには考えられない。」。それからやはり朝刊の『経済教室』11月18日付です。東大の柳川範之教授が"法整備もマクロ経済政策"と題した一文を書いてます。一部引用すると、「法制度が整備されていないと経済活動を委縮させてしまう。規制改革は、実は法制度改革の問題である。」とありました。日経ヴェリタスという週刊金融情報専門紙の12月15日号には国際大学教授の加藤創太という官庁エコノミスト出身の方が、論文を寄せています。引用すると、「90年代以降に新たに導入された様々な法規定には、条文の行間を埋める判例・裁判例や相場観が確立していないため、企業にとっては法的不確実性が高まった。」つまり、経済改革をしたときには、それを支える法的インフラが整っていないとそういう政策転換は一時的に経済にマイナスの影響を与えてしまう、経済改革を実効あらしめるには十分な司法の基盤を整えておかなければならないとの指摘だと思います。法制度を充実させていくことが経済成長のためには必要なのだという訴え方をすれば、それだけでも報道するのに値するインパクトがあると思いますし、政府に検討組織を設けさせる動機づけとして有効に働くのではないでしょうか。

【斎藤】 ありがとうございました。マスコミの関係では地方紙が中心ですが、社説などでもこの懇談会の最終報告書を取り上げていただいております。その報道がもっと広がるといいなと思います。

そして、安岡さんが言われた三権の権力配分の問題の中で欠かせないのが、行政訴訟の改革ですね。まさに司法が行政をチェックするという意味では行政事件改革が極めて重要になっています。その点についてもこの最終報告書の中ではかなり詳細な分析をしていて、行政事件の提訴数が少ない、さらには原告の勝訴率が非常に低いという問題、そしてどこにその原因があるのかについても分析していますので、これも大きなインパクトを与える内容ではないかと思います。是非この報告書を受けて、日本社会における民事司法改革の議論が大きく広がることを期待しております。

日弁連も今年は会内議論をさらに広め、民事司法改革を推進するために全力で取り組むことになっていくと思います。9月20日の日弁連司法シンポジウムでも、民事司法と家庭裁判所の改革がテーマになっています。そして最高裁、法務省と改善・改革の協議を重ねるとともに、国会議員の方々にも広くご理解をいただきたいと思っております。この座談会がそのサポートになることを願いまして、本日は締めたいと思います。ありがとうございました。

(平成26年1月27日 於霞が関弁護士会館)

於霞が関弁護士会館


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