弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

弁護士の政策形成活動
~世界を動かす 政府を動かす~ (6/6)


【岡本広報委員会副委員長】組織としての日弁連の政策形成過程への関与についてご意見があればお願いします。また、個々の弁護士でこれから少しでも政策形成過程に関与してみたいという人たちに、アドヴァイスがあればそちらもお願いします。

【伊藤氏】ヒューマンライツ・ナウは会員制組織で、弁護士、特に若手の弁護士さんが中心となって活躍しています。興味を持っていただければいつでも会員になっていただき、活動に参加していただきたいと思います。私が弁護士になったときはこのような団体はなかったので、世界の人権問題に対して何かしたいと思いつつ、活動の場がありませんでした。今では日本の弁護士を主体としたこの団体がありますので、世界の人権問題に取り組みたいという方は、この団体に入ることを通じて、直接世界の重要問題に関与できます。8 月にシリア情勢が緊迫した際、私たちは軍事行動以外の選択肢がある、軍事介入はより多くの人権侵害を生み出すので反対する、というステートメントを公表しました。これなどは、当時早稲田大学からエクスターンシップで来たロースクール生が第一ドラフトを作成し、それをどんどんブラッシュアップして英語にして公表したのです。一週間後には、ジュネーブの国連人権理事会の関連討議で、発言権を得て内容を発表しました。弁護士の方にはステートメントの起案などを助けていただけるととても助かります。国際的な問題ですと日本語だけで声明を出しても国際的な動きには影響力がない、ヒューマンライツ・ナウでは、すぐに英語に訳して、国連や世界各国に発信できます。また、人権教育活動をミャンマーで行い、中国でも開始したのですが、日本の弁護士のあたりまえの知識がとても役に立つと思います。例えばミャンマーでは今、弁護士会をつくっています。日弁連の活動内容を伝えるだけで、ものすごく役に立つと思います。私たちの団体では調査団や海外での講師など、若手や活動に参加して間がない方でも即戦力なので、参加していただければ活躍していただくことができます。日弁連とは、これまでに様々なセミナーやシンポジウムを共催・後援してもらってきました。私たちの団体はジュネーブやニューヨークに会員がいるので、国連の会議に合わせた国連内でのサイドイベントを開催することもあります。一回日弁連と共同で開催したことがあるんですけど、そういうこともニューヨークやジュネーブで一緒にやっていくというのも今後の連携の方法かと思います。

私も日弁連の一員という立場にありますが、今後日弁連として、政策提言のほかに、人権に関する事実調査等をしていくとよいのでは、と思います。東日本大震災後、日弁連は重要な政策提言を続けていますが、事実調査報告書等も適宜出していくとインパクトかあるのではないかと思います。日本の人権が深刻に問われている今、もっと様々なかたちで連携していければと思います。

【土井氏】世界中の弁護士はその性質上、人権活動家になっていく人が大勢います。実際にひどい人権侵害が起きている国では、そういう被害者たちの弁護をしていると、どうしても政府から睨まれる立場になったり、あるいはだんだんと目立つ存在になっていく。そして、人権活動に目覚めていくのです。それは日本の弁護士も同じだと思います。日本では人権活動をしていて身の危険はないのですが、海外ではそれが故に逮捕されたり弁護士資格を剥奪される国も多くあります。日弁連には、せめて同じ職能の弁護士が職務遂行の結果不当に人権を侵害されている場合には、声を上げてほしいと思います。声明を出してその国の大使館に出向いてロビー活動をしてくれればとても嬉しいです。また、そうした問題意識を持って世界中の人権弁護士ともネットワークをつくってほしいです。相手の国が抑圧的な政府だった場合は、政府傘下の弁護士団体とだけ付き合うのではなく政府から独立した弁護士たちなど市民社会とも付き合うべきだと思います。お付き合いからはじめて、世界各国で弁護士の独立を支援し始めていただければありがたいと思います。あと、弁護士会へのお願いではなくてひとりひとりの弁護士さんたちには財政で支えてほしいです。私たちの場合には年に一度ガラ・バーティーを開催して世界各地の人権状況を知らせるとともにその解決に向けてどのような活動をしたか報告しています。一席5 万円で半分以上が寄付になりますので是非サポートしていただきたいと思います。これまでも、ご夫婦でディナーを楽しんでくださる弁護士の先生方や家族連れで出席して子どもに知って欲しいと考えるビジネスマンもいます。

【猿田氏】キーワードは「発想の転換」です。米国政府や議会に対してロビーイングする、なんてことは、私自身も4年前まで思いつきもしませんでした。しかし、やってみたらできちゃうわけです。その議員がたまたまそのトピックが気に入って翌日の米議会で質問することもありました。そのうちアメリカの議員からも議会質問作成の際に協力を求められるようになる。「発想の転換」で何か新しいことをやって飛び込んでみよう。それが次につながっていくことも多いのです。

アメリカは日本に対して強大な影響力を持っている。これは、実は、私たち誰もが利用できる影響力です。私はワシントンの「拡声器効果」と呼んでいますが、日本で発表することと同じことを飛行機代を払って向こうで発表すれば、それだけで日本の新聞で一面トップになることもある。どうして石原慎太郎さんが東京都の尖閣諸島購入をわざわざワシントンまで来て発表したのでしょうか。また、アメリカの誰かの発言を引き出せれば、様々な日本の政策に大きな影響が与えられる。これらワシントンの「拡声器効果」をよく分かっている政治家の方は、頻繁にワシントンに来ています。私たちはアメリカにいろいろ言われて不愉快な思いをすることは多いのですが、実際自分たちの声をアメリカに運んだことはあるでしょうか?そんなに簡単なことではない。しかし、NDを利用すればワシントンへ行って議員に直接会って話ができるんだと。その活動は、アメリカに影響を与えるのはもちろんのこと、日本にこそ大きく影響を与えるのだ、と、そんな今までにない新しい活動を新外交イニシアティブでは行っています。

NDも、訪米などその活動に費用がかかるため、経済的にサポートをいただけるのは大変助かります。一般会員の年会費は1万2千円です。また、実際にロビーイングや情報収集などを行いたい方のご相談にも常にのっており、具体的にはコンサルティング業務のようなことを行い、海外の会議設定から、取材依頼まで行います。こういった具体的なサポートについては「特別会員」「団体会員」の方からご依頼いただいていますが、特別会員の年会費12万円は顧問弁護士費用と考えればけして高くない金額かと思います。

個々の弁護士の方、議員の方には、実際に活動をご一緒させていただければと思います。その時々の個別の訪米ロビーイング以外にも、日本において、常時、多くの問題、例えば、地位協定や日中関係・歴史問題等について、研究会や講演会を行い、提言をまとめ、発信活動を行っています。今後、外交・安保政策は日本政治の中でもこれまで以上の比重を占めるテーマとなりそうです。是非、この新しい活動をサポートいただければ幸いです。

【岡本広報委員会副委員長】本日はたくさんの貴重なお話を伺えました。ありがとうございました

(平成25年10月8日 於霞が関弁護士会館)

於霞が関弁護士会館


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