弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

弁護士の政策形成活動
~世界を動かす 政府を動かす~ (4/6)


【岡本広報委員会副委員長】我が国の行政、立法過程で、政策提言活動というものに対する関心、もしくは温度についてどのような感触をお持ちになっていますか。

【土井氏】我々NGOの場合は、武器は世論だけです。経済的利益はもちろん武力なども持っていません。ですから、アドボカシーを行っても、国民の支援がどの程度あるのかによって温度差がでると感じます。「バングラデシュ? はぁ~?」みたいな反応も多いですし、北朝鮮だと話を聞いてくれる国会議員の方がいらっしゃいます。本当に国によって地域によって違うのかなと思います。しかし一般的にいってそもそもアドボカシーという言葉自体がまだまだ受け入れられておらず理解もされていない言葉です。「NGOとして外務省に出向いても面会を断られたりしませんか」と聞かれることもあります。そこまで敵対的ではないのかなと思います。丁寧に聞いてはおくものの手を着けずにおこう、みたいなことはあるんでしょうけど。

【伊藤氏】政府の反応は、テーマやアプローチによってケースバイケースですよね。人権団体というと、これまでの経緯があるのか、政府と敵対するというイメージが非常に強いので、政府の中でも人権と聞くと顔をひきつらせる人はいるかもしれない。例えばNGOと外務省の共催でODA政策に関する会合というのを、年に3 回は必ず開催しているんです。そこで議題を提案したり色々と政府と議論するんですけど、時々新しい担当の方が来られて「人権団体です」と自己紹介すると、ちょっと顔が強張ったりする。ただ、役所に味方を作っていかない限り、役所を糾弾しているだけでは何の解決もしない。ある省庁とある案件でやりあっている時、「あなたのミッションは役所の中に、あなたの味方になってくれる人、つまり人権を守ると決意を固めている人を増やすことだよ」と言われて、それ以降は比較的建設的に「同じ目標を持っていますよね」という前提で話を進めるようにしています。

ただ、どうしても日本政府には好き嫌いがある。例えばカンボジアの人権問題だとその場で電話をかけてすぐに動いてくれたりします。同じ日本人の弁護士が事実調査に行ってくれているから信用できるということで、海外の団体のレポートよりも注目してよく読んでくれるという風潮もあります。ただ、海外の人権問題については一生懸命取り組んでくださるのですが、日本の人権問題については、なかなか建設的に話を進めていけません。例え海外から非難されることであっても日本の人権を前進させるためですし、自分の国にとって扱いたくない問題についてもちゃんと人権を守るという立場に立って取り組んで行くのが政府の役割です。政府と国内問題でどう建設的な対話を進めていくかは重要な課題だと思っています。

【猿田氏】政策提言における日本の現状について一言だけお話をさせていただきますと、日本には独立したシンクタンクがあまりなく、企業系のものが大半です。「日本は官僚が最大のシンクタンク」と言われたりし、実際にそうだろうと思いますが、日本にはこれだけ様々な声が存在するのだから、これらの声を政治や外交に反映するための色々なタイプのシンクタンクがもっとあっていいと思います。 もっとも、NDは、外務省・防衛省の方々とお仕事をすることも少なくありません。例えば、日本の国会議員が訪米活動をする際、こちらでロビーイングの活動計画を立て、外務省・防衛省の方々とカレンダーをシェアしながら予定を組み、記者会見を設定していく、などということを頻繁に行っています。

 普天間米軍基地の移転先とされている沖縄県名護市は市としてNDの会員となっています。稲嶺進名護市長のワシントン訪問猿田氏 を計画立案から実施までNDで担当しましたが、その際、極めて重要な訪米団、とのことで、在ワシントンの日本大使館にいる防衛省の方もアテンドにつきました。辺野古移設について対立する防衛省と名護市ですが、名護市長は「私たちの気持ちを防衛省にもわかってもらう良い機会だ」として、同伴を断りませんでした。面談相手の多くの米議員が「アメリカは財政難であり、在日米軍基地を縮小すべき」と述べるのを、4日間、朝から晩まで防衛省の方と共に聞きました。


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