弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

弁護士の政策形成活動
~世界を動かす 政府を動かす~ (2/6)


【岡本広報委員会副委員長】ひと通りお話をいただきました。ロビーイングという用語だと狭い領域で特定の人向けにアピールをするというイメージがあると思いますが、活動全体を整理していただけますか。

【伊藤氏】活動の柱は3つあり、1つ目は事実調査です。人権侵害は、多くの場合誰も知らないところで行われていて、知られていないがゆえに放置され、解決されない。そこで、私たちは最初に、事実の調査を進めています。現地調査に行き、その報告書を作成・公表すること、それに基づいてステートメントを出すところから始まります。次に2番目の柱としてアドボカシーがあります。アドボカシーとは、社会的問題の解決を求めて政策決定者に働きかけを行うこと等と理解されていますが、当団体では、政策提言とそれを実施するためのロビーイングを進めています。人権侵害を国際人権基準に即してどのように解決するべきかを明らかにし、解決する役割を果たしうる世界のアクターにそれを提案し、働きかけを行います。この活動のなかには、国連の人権理事会や国連総会などで人権問題解決に向けての決議を採択させるということも含まれます。3つ目は他の団体と違うのかもしれませんが、エンパーメントと呼んでいる活動があります。その国で活動している人権団体・市民社会の方を支援する活動です。例えば中国やミャンマーでは人権が日常的に否定されてきたし、人権という概念を学校でも教えないので、普通の人たちも人権について十分に理解していない、あるいは市民社会としても問題の解決方法がわからない。まず知ることが現状を変える力になりますので、現地の市民社会に対するトレーニングや教育を行う、という支援活動も行っています。この3つの柱で活動をしています。

【岡本広報委員会副委員長】今、国連決議を取るというような大きな話もあったんですけど、その辺りにはどのようにたどり着けるのでしょうか。

【伊藤氏】国連人権理事会の決議には2種類あって、1つは以前からあるカンボジアやミャンマーの人権問題、また拷問や女性に対する暴力など、毎年必ず、人権理事会の会期に議論がされ、決議が採択されるテーマがあります。そういう決議についていい内容を盛り込みたい場合、日本でいえば外務省がそれに対応しているので働きかけをするとか、それだけだと弱いのでEUやアメリカ政府にも働きかけを行う。最近はブラジルや南アフリカ等新しいアクターが出てきていますので、そういう国に対しても働きかけを行っていくということがあります。もう1つは、「国際社会でまだ扱われていないが重要」というテーマについて、3 ~ 5 年くらいという時間をかけてキャンペーンを行って決議を実現し、新しい人権スタンダードを構築するのですが、これはものすごく大変なので、私達もまだ着手できていません。最近ですと、先々週カンボジアの人権問題に関する国連人権理事会の決議が上がったんですけど、日本政府がこれに先立ち、カンボジアに調査ミッションに行くというので、事前にこういう人権団体の方に必ず会って下さい、こういう問題を調査して下さいということを働きかけたりします。カンボジアの人権状況に関する国連人権理事会の決議は日本政府が第一ドラフトを作成する慣例になっていますが、内容について日本政府に働きかけをし、また中国やアジア諸国は「それよりも後退した決議にしましょう」ということもありますので、後退しないよう、さらに先進的な意見を言ってもらうよう、EUやアメリカに働きかけをしたりします。さらに、国連人権理事会の公式会合では、NGOに発言の機会があり、カンボジアの人権問題についてだいたい10団体くらいが口頭発言する機会があるので、そこにエントリーして発言します。発言内容がかぶらないように調整しながら一番アピールしたい点を発言します。

【土井氏】私もヒューマン・ライツ・ウォッチに入って、国連の決議や人権に関連する条約をNGOが舞台裏で主導して実際に作っているということがよくわかりました。ヒューマン・ライツ・ウォッチの中では、東京や欧米の主要都市はもちろん、デリーやヨハネスブルグなど世界各地の主要都市の担当者が、各国に対して被害者の利益をアドボカシーし、アイデア、プロセス、説得もやっています。ヒューマン・ライツ・ウォッチの内でそれぞれ「キー国」主要都市の事務所と連携を取りながら世界的な戦略を立てて、分担をして動いていく。そういった中で人権の世界的なイニシアティブが生まれる。外交官は国益を背負って働いている人たちなので、多くの場合人権は重視しません。NGOの力が非常に強いということが中に入って実情を見てよく分かりました。多くの主要な国際NGOのアドボカシー担当者土井氏 は法律家であることが多く、国際法を十分理解した上で各国の政治の内情や、国連での政策決定のプロセスをよく知って活躍をしています。日本からも、国際法の素養のある人達が入って来るべきエリアであると考えています。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは昔他団体と一緒に「対人地雷禁止条約」でノーベル平和賞をもらいました。もちろん条約なので加盟するのは国ですが、NGOが受賞者であることも、この条約を作ったのはNGOであることを示しているかと思います。


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