弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

弁護士の政策形成活動
~世界を動かす 政府を動かす~ (1/6)

司 会  岡本 正  広報委員会 副委員長
小川晃司 本誌編集長

 

伊藤 和子

伊藤 和子 会員(46期)
東京弁護士会
ヒューマンライツ・ナウ 事務局長

土井 香苗

土井 香苗 会員(53期)
東京弁護士会
ヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表

猿田 佐世

猿田 佐世 会員(55期)
第二東京弁護士会
新外交イニシアティブ 事務局長

岡本 正

岡本 正 会員(56期)
広報委員会 副委員長
司会担当

【岡本広報委員会副委員長】今回の進行を担当させていただきます、弁政連広報委員会副委員長をしております56期の岡本と申します。まずは伊藤先生から、ご自身の活動を含めて自己紹介をお願いします。

【伊藤氏】46期の伊藤和子です。2004年に日弁連の留学制度に応募してニューヨーク大学ロースクールに留学させていただき、その間に国連や国際NGOの人権活動に触れる機会があり、2006年に日本を本拠地としたヒューマンライツ・ナウという国際人権NGOを立ち上げ、事務局長として活動しています。当団体は国連の経済社会理事会で特別協議資格を取得した非営利団体で、国連の人権に関するすべての会合で発言する資格を取得しています。日本の弁護士が中心となっていて、会員数は700名ちょっと、「国境を超えて特にアジア地域の深刻な人権問題について取り組む」活動をしています。最近は国連人権理事会などに対して、アドボカシー活動をしています。また、2009年以降は、日本の人権問題の政策提言にも力を入れてきました。その後、政権の枠組も変わり、東日本大震災や原発事故などによって新たな人権問題も生まれていますので、今の時点で国際的な人権基準と日本の人権保障のギャップをどう解消していくのかも、課題のひとつとしています。

【土井氏】53期の土井香苗です。伊藤さんがニューヨークへ行った1 年後に同じくニューヨーク大学に留学し、それがきっかけとなってNGOの活動を主とするようになりました。その後ニューヨークに本部がある世界二大人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」でフェローとして1 年間働き、2009年から同団体の東京事務所を立ち上げて今に至ります。ヒューマン・ライツ・ウォッチは世界約70か国から約400人弱のスタッフがいまして、その半分以上が法曹資格を持っていると思います。東京に事務所をつくったのは、日本政府に対して政策提言活動ができる事務所を設立するためです。世界中の人権問題を解決するために日本政府の外交政策をどうするか提言する活動が主になっています。

【猿田氏】外交を取り扱うシンクタンク「新外交イニシアティブ(New Diplomacy Initiative / ND)」の事務局長をしております55期の猿田佐世です。ニューヨークのコロンビア大学ロースクールを卒業後、ワシントンにあるアメリカン大学へ進みました。ワシントンで見た「日米外交」のあり方に疑問を抱き、この団体を設立しました。アメリカは、米軍基地問題やTPP等のいわゆる外交問題に限らず、日本の様々な国内問題、…例えば憲法改正から弁護士増員に至るまで…に圧倒的な影響力を及ぼします。一昨年民主党が、2030年代に原発ゼロとの閣議決定を行おうとしたときに、アメリカの影響でそれが見送られたことはわかりやすい例と言えるでしょう。しかし、それほど影響を及ぼす「日米外交」には、限られた人々のみが関わり、外交現場には限られた声しか反映されていません。多様性ある日本の幅広い声を外交に届けたい、そんな想いから、4年ほど前に米国政府や米議会に対するロビーイング(政策提言)活動を始めました。アメリカで日本に興味のあるアメリカ人はとても少ないので、日米関係についての政策提言といっても容易ではありません。例えば、鳩山政権時代、私は沖縄の米軍基地の削減を求めて米議会議員を回りました。当時、日本では沖縄の基地問題が連日新聞のトップ記事であり日米関係はそれ一色。しかし、米下院の同問題を管轄する小委員会の委員長には「沖縄の人口は2, 000人ですか?」と聞かれたりする。驚愕します。アメリカでは、いわゆる「知日派」といわれる人々以外には日米外交が広がりを持っていないのです。また、日本側もごく限られた人々しか、日米外交にかかわっておらず、ワシントンで聞く「日本」というのは、私の知る多様な声を持つ日本とは全く異なりました。NDの目的は国境を越えて情報を流通させ、政策提言をしていくことです。日本の議論を海外に伝え、また、海外でどんな議論がなされているのかを日本向けに発信する。政策提言を作り上げ、その上で、米国政府、米国議会に足を運んで直接働きかけていきます。


▲このページのトップへ