弁政連ニュース

特集〈座談会〉

国選付添人制度拡大の
意義を語る (2/4)

適正な事実認定のための付添人活動

斎藤広報委員長

【斎藤広報委員長】私も子どもの権利委員会に長く所属して、実現本部にも所属しています。そういう関係で今回司会を務めております。さて、付添人は事実認定の適正化の確保と少年の立ち直り支援の側面で大きな役割を果たすと思うのですが、事実認定の適正化の側面で「非行事実なし」を勝ち取ったというケースについてご報告いただければと思います。

【土橋氏】担当した事例としましては殺人予備及び銃刀法違反の事件でして、家族を殺害しようとして刃物を所持したというのが非行事実でした。家庭裁判所からの付添人選任依頼に基づいて私が受任しました。なお、少年には被疑者段階で弁護人がついておらず、これまで全く法的援助を受けられなかったんですね。争点は、殺意の有無でした。少年自身言葉が乱暴な所があり、その点をとらえて、真意と違う調書が作成されていました。審理の過程で、少年のメモが発見されその中で事件当時の心情が記載されていて、殺意がなかったことが明らかになりました。被疑者段階から弁護人が付いていれば、調書作成についても適切にアドバイスできたと思います。仮に家庭裁判所が援助依頼をしなかったら、少年は「殺意がある」という供述調書から「非行事実あり」ということになって、殺人予備という非行事実によって処分されていたかもしれません。

【斎藤広報委員長】どういう調べがあったのか聞きましたか?

【土橋氏】どうも取調べの警察官に本人が迎合的になっていました。あとは少年の言葉の問題というものを深く分析すれば少年の真意と言葉が違うのに、それを無視して形式的に調書がつくられていたようです。

【須納瀬氏】家裁から日弁連の付添援助制度を利用しての付添人選任依頼があったということですね。依頼の理由はどういうものでしたか?

【土橋氏】少年の帰住先の問題があったことと、やはり非行事実を争っているという2 つの理由から、家裁から援助依頼があったのだと思います。

【山口氏】私の経験した事案は、無免許運転のほう助で免許のない人にバイクを貸したという事件です。この事件でも被疑者段階での付添人が付いていませんでした。またこの少年は在宅でしたので、そのまま行くと付添人なしで審判まで行われてしまったかもしれないという事件です。少年は、長時間の取り調べを受け、複数の自白調書を取られていました。警察官からサインをすれば家に帰すが、サインをしなければこのまま逮捕すると脅されてサインしてしまったということでした。主犯の少年も、無免許であることを告げてバイクを借りたという調書を取られていました。審判は共犯者と手続を分離してもらって、主犯の少年を証人として呼びました。少年と話し合い、審判では真実を認めてもらいましょうという事で、調書は全て違いますと裁判官にお話ししました。実は少年には前歴が7 件あって、以前にも無免許の子にバイクを貸している事案があったので、最初は裁判官にも全く信用がなかったんですけど、意見書等を何度も提出したのと最終的にバイクを借りた方の子が「実は無免許という事を隠していました。」と言ってくれたので、故意ではないということで非行事実なしということになりました。

【金子氏】私のケースは過失致死です。友人同士で遊んでいた際に、不幸にも2 人が亡くなってしまったというものです。父親が子どもの人権窓口相談に来られて、その日に担当していた私が受けることになりました。争点は、過失と因果関係です。皆さんがご報告している事件と同じように、警察の方では、当然過失行為がある前提で調書が作成されていました。受任後、本人に確認すると、事実と異なる調書が作成されていることが分かりました。本件に関して、非行事実があったという前提で調査命令がなされないよう、かなり早い段階から裁判官に面会をしました。最終的には過失行為はあるが、因果関係自体が否定され非行事実なしということで決定されたという事案です。少年などの供述を早期に確認して家庭裁判所に伝え、調査命令がなされないように付添人活動を行ったことが非行事実なしに結びついた事案だと思います。

【須納瀬氏】少年犯罪の警察の取調べについては、かなり強圧的な取調べが行われたり、そうではない場合も少年が迎合的になったりして簡単に虚偽の自白をしてしまう。だから、大人よりもなお一層弁護士の援助が必要なんだということを、御三方の報告は示していると思います。

少年の立ち直りを支援する付添人活動

【斎藤広報委員長】では次に、環境調整や試験観察で少年の立ち直りを支えたという事例についてお話しいただきたいと思います。

【金子氏】いくつかあるのですが、心に残っているのは傷害事件です。事案の概要は、女子少年が5 人で1 人の少女に暴行を加えて全治1 か月のケガを負わせたというケースです。共犯少年の弁護人から捜査段階で紹介を受けて、刑事被疑者弁護援助及び付添援助制度を利用して受けることになりました(当時、傷害は被疑者国選対象外事件でした)。被害者が相当な怪我を負っていたこともあり、少年院かどうか微妙な事案でした。少年の家族・親戚はエリートで、少年だけが少し落ちこぼれてしまっていて、自分の考えは分かってもらえないと不良交友を深めていき、本件に至ったという事案でした。本人自身は自分では何とか変わりたいと思っているが、どう変わっていけばいいのかもわからないと少年鑑別所でも泣きながら話をしていました。何とか環境調整ができれば家に帰すことができるのではないかと思い、何度も自宅に行って少年の考えを両親に話しに行ったり、もちろん被害者の方にも連絡を取って被害弁償に努めたり、金子氏被害を与えることがどういうことなのか少年と一緒に考えたりして、何とか試験観察という形になりました。少年は、試験観察になると地元の子どもたちが怖いと逆に閉じこもってしまいました。ですから、何とか外に出そうと思って、こちらが何度か出向いて兄弟を交えて家族全員で話をしたり、学校も辞め働いていなかった少年と学校の説明会にも一緒に参加したりしました。試験観察中に新たに入学できる学校も見つかり、最終的には保護観察処分となった事案です。

【須納瀬氏】ご両親ではなく弁護士が一緒に学校を探したという事ですね?

【金子氏】その時点では親御さんと上手くいったりいかなかったりというのがあったので、少年の希望で、私が従姉妹ということで、一緒に学校説明会に行きました。

【土橋氏】私がお話しする事例は、私が弁護士になって初めて担当した少年事件でして、窃盗事件2つだったのですが、これも家庭裁判所が付添人援助の必要性から弁護士会に付添人選任依頼があり、私の方が担当することになりました。この少年の最大の問題として家族との軋轢を抱えていて帰るところがなく、しかも少年院を出た直後の事件で、このままではもう一度少年院に送り返すしかないというものでした。ただ、出てきたばかりの場所に送り返しても意味がなく、結局帰住先さえ解決すれば社会内処遇が可能な事案だったんです。私は何度も家族とお話をして、結局かなり遠い所に住む親戚に預けようということになりました。預けに行くまでにも親戚は高齢だし、周りの親戚の協力が必要だということでしたので、私も審判前にそこまで出向きまして親戚とお話をし、帰住先を調整して試験観察をする事になりました。少年自身非常にまじめな性格でして地元に根付いて仕事もして、最終審判は帰住先近くの裁判所で行い、要保護性がなくなったという事で、不処分にまでしていただきました。本当に、私も新人で時間があったのでできた位に無茶苦茶に頑張りました。裁判官からは「先生がいなければ、彼を少年院に送るしかなかったんです。素晴らしい付添人活動ありがとうございました」と言われた言葉が心に残っています。私が少年事件を続けている一つの原動力にもなっている事件ですね。

【斎藤広報委員長】このケースも家裁から依頼があったんですか?

【土橋氏】そうですね。これは「調査官でできないから付添人についてもらって、家庭環境等の調整をしてもらわないと限界があります」と弁護士会に依頼があったんですね。

【山口氏】私のケースは、共犯少年3 人と公園に設置されていた自販機を壊したという事例です。山口氏両親は少年に無関心で、調査官に対して「私たちは責任が持てないので少年院に入れてください」と言うので、このままだと少年を少年院に送るしかないという事件でした。この子の実母は、出産直後に少年を産婦人科に置いて失踪してしまい、大叔母と大伯父が少年を交互に引き取って面倒を見ていたそうです。少年は大叔母とはうまくやっていて、中学校の頃は成績が良くて非行もなく普通に暮らしていました。ところが、突然母親が帰ってきて少年を連れて行ったそうなんです。母親は少年に高校を中退させ、焼肉屋で働かせてその賃金を母親と再婚相手が受け取っていました。少年は両親との確執でイライラが募り、家出をして、三度目の非行で鑑別所に入れられました。半年の間に三度も同じような事件を立て続けに起こしている事と、母親が「少年院に入れてくれ」と頑なに言うので裁判所の方から付添を依頼されました。話をしてみると、その少年は母親のところに帰るのをとても嫌がっていました。そこで両親の親権を停止させて大叔母を後見人として生活できるようにするということで、何とか試験観察にしていただきました。その後、親権停止の審判を得ることができました。最終的に今回の非行の原因は「両親との確執から来るストレスが原因である」として、きちんとした環境で生活できていれば再非行はないだろうということで、非行事実は認められるが保護の必要がないという事で不処分をいただきました。

【須納瀬氏】弁護士付添人の必要性に関して、家裁には調査官がいるんだから付添人が必要なのかと言われることがあるのですが、御三方のお話を聞くと家裁の調査官では絶対にできない活動をしているなと思いますよね。

【土橋氏】環境調整については裁判所ができることには限界があるのではないかなと思っています。特に先ほど報告した殺人予備の方ですけど、非行事実の問題もあったのですけど、帰住先の問題もありまして、付添人のつてを頼って篤志家が引き取ってくれるよう交渉しました。こういうことは付添人でなければできないです。

【斎藤広報委員長】先ほどから学校を探すということはありましたが、就職先の斡旋の開拓などはどうでしょうか。

【金子氏】就職先は基本的に少年の前職や前々職に連絡することが多いです。

【土橋氏】少年の家族が知っているところですけど、少年と一緒に行ったこともありますし。お願いしますと言ったり、何かあったら連絡してくださいと言うと安心してもらえることはありますのでそういうことはやっています。

【山口氏】少年の家族の知り合いのところに挨拶に行って、何とか面倒を見てくださいと頼んだことは何度もあります。


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