弁政連ニュース
クローズアップ〈座談会〉
被災地自治体で
活躍する法曹たち (1/3)
活躍する法曹たち (1/3)
司会 | 出井直樹 本部幹事長 |
柳楽久司 本紙編集長 | |
小川晃司 本部広報委員会副委員長 | |
岡本 正 本部広報委員会副委員長 |

菊池 優太 新62期
岩手県総務部法務学事課
特命課長(法務指導)

大岩 昇 新60期
第一東京弁護士会所属
宮城県総務部私学文書課主幹
(法務担当)
はじめに

【出井幹事長】本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。司会を務めます弁政連幹事長の出井でございます。本日は、政府の震災復興政策の一環として震災復興特別交付金を財源として東日本大震災の被災自治体に任期付職員として採用されたお二人の弁護士にお越しいただきました。弁護士が被災自治体の内部に入って復興事業にどのような形で携わるのかということをお話いただきたいと思います。それでは最初にそれぞれ簡単な自己紹介をしていただきたいと思います。
【菊池氏】岩手県任期付職員に採用された菊池優太と申します。修習期は62期です。東京の事務所に入所し、三年間ほど勤務しておりました。私は岩手県の出身だったので、今回岩手県での採用の募集に心動かされ、応募し採用に至ったという経緯です。
【大岩氏】大岩昇と申します。新60期です。昨年末までは東京の法律事務所に5 年間勤務していました。主に企業法務を扱う事務所で、私がいた頃は7人の弁護士が在籍していました。今年1月付けで宮城県の総務部私学文書課に配属されました。私学文書課に法律や条例に関することを扱う法令班という部署がありまして、私は法令班に所属しています。
【出井幹事長】今日はもう一方、お二人をよくご存じの岡本さんにもご参加いただきました。簡単に自己紹介をお願いします。
【岡本広報委員会副委員長】第一東京弁護士会所属で、弁政連企画委員と広報委員をさせていただいております岡本正と申します。修習期は56期です。東日本大震災直後に災害対策本部嘱託室長になり、その後災害復興支援委員会の幹事をやらせていただきお二人との接点ができました。行政との関係では、2年間、内閣府に上席政策調査員として出向し、行政改革を担当していた経験があります。
現在の仕事の内容
【出井幹事長】それでは、それぞれ今どういうお仕事をなさっているのか、お話しいただきたいと思います。
【菊池氏】今一番メインの仕事になっているのは、各課の業務において生じている問題についての法律相談です。様々なものがありますが、大きなものとしては原子力損害賠償の問題もあり、自治体損害の賠償交渉や被災者の損害賠償支援における法的な助言などを行っています。
復興との関係ですが、私は復興対応を主眼として採用されているわけですけれども、今のところ、復興業務に専属的に関わっているというよりは、法律相談がある度に、それが直接復興に関係あるものとないものとがある、というような状況です。復興関係の事例ですと、道路が津波で全線壊滅したけれども、それを復旧していくに当たり、関係土地の筆界等が不明であるとか、仮設住宅を作る際にどういう権利が設定されていればよいのかとか、用地取得の際に土地の相続人は誰なのか、見つからない場合はどうするのかとかいうような話は度々ある状況です。ただし、頻出する事例は担当課において対応が類型化されていますので、その中でもさらに疑義が生じたようなものが来るという感じです。
【出井幹事長】原子力損害賠償の話もあるということですが、被災者というのは避難されている方でしょうか。
【菊池氏】割合的には業者の方が多く想定されています。県の総務室の中に放射線影響対策担当というセクションがあって、そこが除染や検査等含め放射線に関する業務を取りまとめている状況なのですが、その中の一つに賠償を担当するチームがあって私もそこに加わっています。今は、例えば消滅時効問題についての県としての考え方と対応を示さなければならないといった話をしています。
【出井幹事長】大岩さんはどういう感じなのでしょうか。
【大岩氏】菊池さんとかなり似た感じなのですが、8 割9 割は他部署からの法律相談です。
【出井幹事長】県民からの相談も受けているのでしょうか。
【大岩氏】県民からの法律相談を受ける業務はありません。他の部署からの法律相談で、復興に関連するものもあれば関連しないものもありますが、おそらく半分以上は復興に関連するものです。例えばみなし仮設住宅といって、県が民間賃貸住宅を借り上げて被災者に無償で貸すものがあるのですが、その契約の関係とか、原子力損害賠償の関係などが典型的な復興に関する業務です。
【出井幹事長】仕事をやる上で関係する法律はかなり多岐にわたるのでしょうか。
【大岩氏】行政に関する個別法を扱うので、関係する法律は多岐に渡ります。一日に一つは新しい法律や条例を見ている、というイメージです。ただ一番使うのは、地方自治法と、あとはやはり民法ですね。
【柳楽編集長】執務場所というのは県庁に自分の席があってそこに座っているという感じなのですよね。
【大岩氏】ええ、机があります。
【柳楽編集長】そこにいると、たとえば法律事務所で執務していると自分の机の電話が鳴るというような、そんな感じから他部署から質問が来るのですか。
【菊池氏】そうですね、そのようなこともありますし、課の職員を経由してくることもあります。たまに直接いらっしゃる方もいますね。
【大岩氏】会社でいえば法務部の役割だと思います。電話が掛かってきたら、なるべくすぐに打ち合わせして答えられるものはその場で答えて、調べたり検討する必要がある場合は、調べたうえで部署内の職員と相談したり、場合によっては他の部署の職員にも相談して回答します。
【出井幹事長】大岩さん、菊池さん、それぞれにおうかがいしたいのですが、今まで四ヶ月間のお仕事をやった中での相談案件のうち差し支えない限度でお話できることがあればお話いただければと思います。
【大岩氏】先ほど言いましたみなし仮設住宅というのは、県が民間賃貸住宅を定期建物賃貸借で二年間借り上げて被災者の方に無償で供与するもので、今ちょうどその契約期間満了の時期がきています。貸主に再契約の意向がない場合、契約上、入居者は退去しなければならないわけですが、そのような場合に、貸主と入居者の間に入っている県がどういう対応を取るのかが問題になることがあります。それと、各課の業務としては一般的なものでも、何らかの形で復興に関連していることも多いです。たとえば、設置に許認可が必要な事業場が被災して損壊した場合の対応とか、県が所有する土地の売買契約で売却後に復興のための利用が予定されている場合の土地売買契約書の検討などです。
【菊池氏】先ほど少し話した道路の件ですが、沿岸部のある道路が全線壊滅して、復旧しなければという話になっていたのですが、一部権利関係や登記関係が不明確なところがありました。詳細は述べられないのですが、権利関係も登記関係も複雑でしたので、判例や文献を調べたり、法務局に調査に行ったりして整理しました。用地取得の関係で、権利関係の整理や取得の手法を尋ねられることもあります。あとは、仮設住宅の整備における、土地所有者、県、業者の三者の権利関係や契約書の内容について助言したりしました。これは大岩さんにもご相談しました。
【出井幹事長】岩手県が岩手弁護士会に防潮堤の用地取得の際の権利調整を委託したというニュースが流れていましたけれども。
【菊池氏】これはまだ具体的な業務にはなっていないのですが、県と弁護士会とが提携した契約をして、用地取得の面で相続人ははっきりしているけれど、権利調整が難しいという事案において、弁護士が入ってくれれば解決の見込みがあるという場合に、その権利調整を県から弁護士会に委託した、というものです。県の方で相続人を探して、相続人は見つかったけれども、そこからの調整をやって欲しいというものを委託する予定になっています。それに関して、いかなる事案を弁護士会に投げるべきかという整理や判断に複雑なものがあった場合には、私も検討してほしいという話まではきています。
【岡本広報委員会副委員長】弁護士でないと実際の事件処理はわからないものですか。
【菊池氏】そういう面もあると思います。県でも相続人を探すノウハウはあるようですが、具体的な交渉がどのように進められるか、どれを優先的に解決するべきかといった実務的なところをフォローしてほしいというニーズがあるようです。
【岡本広報委員会副委員長】弁護士として遺産分割協議などで培ったスキルが活きるわけですね。

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