弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

原発ADR 最前線 (4/4)

ー原紛センターで活躍する弁護士ー

 

原子力損害賠償と法曹の役割

【柳楽編集長】少し話を広げまして、原子力損害賠償に関わる法曹の関わりについてお話しいただきたいと思います。原紛センターもいわば裁判所のような中立的な立場で紛争解決を支援するという形なのですが、法曹という枠組みで視点を広げると利用者である当事者、つまり申立人と東電、それぞれの立場にいる法曹もいるわけなのですが、このシステム全体を俯瞰して原子力損害賠償請求の解決のために、法曹として何ができるかという点について、日々の実務で感じていらっしゃることだと思うのですが、何かお話しいただければなと思います。

【池田氏】法曹としての役割と申しますと、被災者ご本人の状況や心情をどう法的に組み立てて、その方々の持っている権利の実現をどうサポートするか。被災者ご本人に対して申立人側の代理人、調査官、仲介委員というそれぞれの立場で、その方の心情を汲み取るということは、とても大事な役割だと思います。もちろん東京電力の代理人も同じです。今回の原発事故について被害を受けられた方に対して、それぞれがそれぞれの立場でサポートして、適切な形で被災者の権利を実現させるというのは、法曹の役割かなと思っています。

【倉田氏】代理人である以上、依頼者である被害者や東京電力との関係もあると思いますが、一歩引いて冷静になることが法曹の役割だと思います。紛争の早期解決、被害者の救済という目的は共通のはずですから、仲介委員や調査官と連携して、センターが必要と判断して要請した作業にはできるだけ対応していただき、それぞれの立場で協力しあいながら進められるといいなと思います。

【牛久保氏】申立人側の補助として司法書士、行政書士の先生方が出席されることもあります。やはり弁護士というのは、これらの士業とは異なり、いかなる事態にも柔軟に対応できるように、それだけの資質を持っているはずだと思います。原子力損害というのは未曾有の事態ですが、このようなときこそ、法曹としての視点をもってかつ柔軟に対応できるというところを見せていかなければならないと。ですから、申立代理人にしても東電側の代理人にしても、広く法曹というより弁護士としてどう対応するかというところで力を見せる時ではないかと思います。

【河井氏】事案として代理人のついている事案とついていない事案があって、ついてない事案にはそれぞれの理由があるんだろうけど、もう少し申立人の代理人の先生方にも弁護士としての敷居を低くしていただいて、なるべく申立代理人についていただきたいと思います。周りにあまり弁護士がいないとか弁護士は敷居が高いとか言って本人申立てというのはまだまだ多いようですので、そこは申立代理人や各地の被害弁護団にも頑張っていただきたい。最後に一つだけ申し上げると、センターは損害賠償の枠組みで動いているので損害がない限りは賠償になりません。ただ、今回の原子力事故については損害の賠償だけでは足りない、コミュニティの喪失であったり仕事の喪失や、いろいろなことがあり、それは損害賠償に馴染む部分と馴染まない部分も当然あるので、最後に法律家、法曹として必要なことは、損害賠償はセンターないしは裁判所を中心に損害賠償制度の仕組みで頑張るからいいのですが、それに加えてどうしても損害賠償では解決できないものがあると思います。その意味で、本件で必要なのは国家補償という考えなのではないかなと思っていて、それこそ弁政連を中心として政治に働きかけて損害賠償の仕組みだけでは足りないんだというのを、もっともっと自覚して、復興予算という形で損害賠償を補っていただきたいと、私は最近強く思っています。


若手弁護士へのメッセージ

【柳楽編集長】最後に、皆様から特にこれからの弁護士会を背負っていく新人の弁護士に向けて、後輩に向けてという観点で結構ですので一言メッセージをいただければなと思います。では池田先生からお願いします。

【池田氏】64期の私が後輩向けのメッセージを言うというのも憚られるのですが、私は弁護士を経験する前に調査官として入って、そこから弁護士業を並行して行わせていただいています。通常の法律事務所に入って、そこでイソ弁として働くということを経験したわけではありませんが、センターで経験できることは本当に多様で、被災者が自ら申し立ててくる事件もあれば弁護士がついている事件もあって、個人の方の事件もあれば法人による事件もあります。センターで一緒に働くのは、自分とそこまで期の変わらない調査官がいたり、上の期の調査官がいたり、ベテランの仲介委員の先生方がいたり、裁判官や検察官の方もいます。本当にいろいろな人と多種多様な事件を通じて自分の考えを深められたりとか、気づくこともあり、非常に良い経験をさせていただいていると考えております。65期、66期、それ以降の方も調査官になっていただきたいなと思っています。

【倉田氏】こんなに大勢の弁護士と一緒に働ける環境はそう多くないと思います。いろいろな期の弁護士といつでも議論をできるというのは本当に得難い機会だと思っています。また、中立の視点からものを見るというのは、通常の弁護士業務ではなかなか経験できないことだと実感しています。これから弁護士になる先生方も弁護士として活躍してる先生方も、是非仲間になってくださるといいなと思います。

【牛久保氏】ベテランの仲介委員の先生方と一緒に働かせて頂いて思うのは、柔軟な思考とバランス能力です。これは経験で身につくものかもしれないのですが、各先生方がいろいろなものに興味をお持ちになり、いろいろな活動をしていく中でおそらく培われてきたものだと思います。若い先生は経験不足という点があるかもしれませんが、意識して広い視野を持つ、いろいろなことに興味をも持って考えてみるというのは、弁護士としての力を養うためには非常に重要なのではないかと思っています。マニュアルというものに頼らず、自分の頭で考えるということを意識して、良い弁護士になってもらいたいなと思います。

【柳楽編集長】では、最後に若手へのメッセージということで河井先生お願いします。

【河井氏】本件原子力事故は日本史上最大の不法行為事件であり、センターとしては未曾有の損害賠償事件を担当しているわけで、しかも損害の発生はなお続いているわけです。いつこの問題が終わるのか分からないというまっただ中に、我々法曹が関与しているわけなのですが、若手の方にもそういう時代性を感じ取っていただいて、そこで法曹の果たすべき役割に非常に重要なものがあると理解していただければ、当然やりがいのある仕事だと理解していただけますし、力もすごくつくと思います。是非若手の先生方に調査官になっていただきたいと思います。

【柳楽編集長】本日は皆さんの貴重なお話を聞かせていただきました。今後も皆様の活躍をご祈念して、この座談会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

於霞が関弁護士会館
(平成25年1月29日 於霞が関弁護士会)



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