弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

原発ADR 最前線 (3/4)

ー原紛センターで活躍する弁護士ー

 

原紛センターの業務の上で留意している点

【柳楽編集長】皆さんの今お伺いしたような仕事の中で、留意している点についてお聞かせいただければと思います。

【河井氏】 やはり一番留意しているのは、結論の妥当性と論理の整合性です。というのも、論理だけが整合していても結論が妥当ではないとどうしても据わりが悪いし、結論が妥当でもある程度説明できないと、どちらの当事者からも不満が出てきます。ですから論理と結果の妥当性の両方のバランス感覚を働かせるという事に、いつも留意しています。

【柳楽編集長】では、池田先生はいかがでしょうか。

池田氏

【池田氏】スケジュールには特に気をつけています。それは和解案を出す最後のスケジュールもそうですけど、一つ一つの主張、申立人にはいつまでに返事をしていただくとか、東電には再認否をいつまでにしていただくとか。準備の時間が足りなければ、主張立証が不十分となりかねないので、あまりに短くというわけにはいかない。ただ、あまりにも時間に余裕をとりすぎて解決が遅れ、被災者が金銭的に困窮するという状況を作ってもいけません。そのため、スケジュール作りと、スケジュールを守っていただくためにどういうやり方が三者すなわち申立人、東電、センターにとって好ましいのか、という点は特に留意しています。

【柳楽編集長】こちらがつくったスケジュールを守ってくれるんですか。

【河井氏】一時期より早くなりましたね。

【柳楽編集長】それでは倉田先生お願いします。

【倉田氏】和解案を迅速に提示できるよう、必要なところだけを聴き取り、判断のスピード感を大事にするようにしています。

【河井氏】申立代理人側にもいろいろなスタンスの方がいるのですが、円滑な審理の進行に是非ご協力いただきたいと思います。

【柳楽編集長】それでは最後に牛久保先生お願いします。

【牛久保氏】私は、少し違う観点から申し上げさせて頂きます。センターの特徴として、個々の弁護士としてではなく組織として動かなければならないというところがあります。ここ何ヶ月か、新しい期の先生方を中心に調査官が大幅に増えていますが、センター内部でいろいろと議論が進み方向性が集約されているポイントなど、新しい調査官の方にいかに教えていくかということには気を付けています。


原紛センターの課題

【池田氏】今の牛久保先生のお話と関係することなのですが、原紛センターによる総括基準も、いろいろなところで同時に似たような争点が生じた中で、みんなで議論してそれが基準化されたりとか、事件に関する日々の会話の中で同じような悩みを抱えていることが分かったりして、そういうものを積み重ねながら議論を深め、基準になってきているんです。ですけど、新しく入った調査官は、基準の量もすごく多いですし、基準の出来上がったものだけを見ているので、そこに至るまでの議論の過程がなかなか分からないということもあって、苦労するのかなと思いますね。新しい調査官が事件を担当する際には、牛久保先生のような係長という立場の方だったりとか、経験の長い調査官が共同で事件を担当するのですが、その者たちがアドバイスをしたり、サポートをしないと業務になじめないかなと思います。

【河井氏】池田先生が今おっしゃった中に一つ重要なことがあって、いろいろな議論をした中での基準というのがいくつか出来上がっているんだけれども、その基準の背後に議論があることをよく知っている人がいればいいのですが、議論の後に入ってきた調査官が担当する場合は「前にこういうことがあったから、こういう方法で行こう」と指示を出しても、基準は知っているんだけどどう上手く当てはめればいいのかが分からないということがあり、そういうところは多少議論に参加した人と不参加の人でキャッチアップする努力が必要な場面はあるのかなと思います。

【柳楽編集長】なるほど。新しく参加する調査官の育成というか情報共有の仕組みが必要なのではないかということですかね。それ以外に何か課題はございますでしょうか。

【倉田氏】人手が不足しているのは大きな課題ではないでしょうか。

【河井氏】もともと柳楽先生がおっしゃったように、仲介委員が今200名いるわけですよ。それを前提にすれば調査官も200名くらいいないと、そもそもバランスが合わないわけです。だけど今は調査官の方が少ないので、一人あたりの負担が重くなってしまう。もちろん、最初は調査官が40人くらいしかいなかったので、当初の段階よりは負担は緩和されてはいますが。徐々に増えてきてはいるんですが、まだまだ調査官の数は少ないですね。

【柳楽編集長】そうすると今の倍という規模になっていきますけども。

【河井氏】一応、200名という目標は立てているんですよ。ただ、実際そこに行くにはまだ大変だという感じです。

【柳楽編集長】組織体制についてひとつ課題に出していただきましたが、何かほかに課題として思いつくところはありますか。

【牛久保氏】課題としては山ほどあると思います。もともと、このセンターというのは被災者の方と東電が相対交渉でうまく和解できるように先導していくという役割もあると聞いています。そのため、センターとしての意見はある程度出していかなければならないのではないのでしょうか。何をどのようにして出していくのかといったことも課題だと思います。また、申立件数が増えるなかで、たとえば、労働審判のように、審理促進を図る仕組み・システムを構築できないかということも課題だと思います。この点は、従前から言われていますが、代理人がつかなくても申立人本人で申立てができるようにし、納得のいく手続の進め方をするにはどうすればよいかを常に留意する必要があると思います。

【河井氏】あと、大きな課題は待遇ですね。調査官の待遇改善はだいぶ進んできたように思うのですが、仲介委員の報酬がまだ低いんです。例えば、仮に毎日、月に20日センターに行くとしたら、仲介委員の報酬は調査官の報酬よりも少なくなってしまう。

【柳楽編集長】例えば郡山まで行って一日縦積みで3件やっていくらになるんでしたっけ。

【河井氏】1万8千円とかですね。

【小川広報委員会副委員長】行政委員の仕事の報酬よりも少ないですね。

【牛久保氏】1日換算なんですよね。ですから1日に何件やっても報酬は同じと。

【河井氏】仲介委員の報酬体系というのは正直、課題ですね。仲介委員の代表である原発ADR研究会として、センターに意見は述べたところです。

【柳楽編集長】これは当然予算措置を伴わなければならない話だと思うのですが。

【河井氏】予算措置としては取れないわけではないんですが、何が問題なのかというと、仲介委員は形としては原子力損害賠償紛争審査会の特別委員なんですね。文科省ではその委員の日当が決まっているという話なんです。ですから議論がかみ合っていないんですね。


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