弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

原発ADR 最前線 (1/4)

ー原紛センターで活躍する弁護士ー
司会 柳楽久司 本紙編集長
小川晃司 広報(委)副委員長

 

河井 聡会員

河井 聡 会員(41期)
第一東京弁護士会所属
原子力損害賠償紛争解決センター
仲介委員

池田 大介会員

池田 大介 会員(64期)
東京弁護士会所属
原子力損害賠償紛争解決センター
調査官

牛久保 美香 会員(54期)
東京弁護士会所属
原子力損害賠償紛争解決センター
総括主任調査官

倉田 梨恵 会員(62期)
第二東京弁護士会所属
原子力損害賠償紛争解決センター
調査官

はじめに

【柳楽編集長】本日はお忙しいなかお集まりいただきありがとうございます。今回の座談会は「原発ADR最前線」ということで、原紛センターで仲介委員・調査官として活躍されている皆様にお集まりいただきました。東日本大震災、福島第一原子力発電所の事故から約2 年が経過したわけですけれども、復旧・復興がなかなか進んでおらず、全国各地で約35万人の被災者の方々が避難生活を続けているという状況にあります。今後も大量に発生し続けるであろう原子力損害賠償事件を迅速かつ実効的に解決することを目的として、2011年8月末に原子力損害賠償紛争解決センター(以下、原紛センター)が設立されました。この原紛センターでは、2013年1月現在で約200名の仲介委員と100名を超える調査官が就任されて、日々紛争解決の任にあたっておられるところですけれども、準司法的な機能を担う行政機関にこれだけの弁護士が参画しているという例は、ちょっと珍しいのではないかなと思います。

柳楽編集長

そこで本日は、原紛センターで日々紛争解決にあたっておられる皆様にお集まりいただいて、その活動実態や、原紛センターの課題など、発足から約1年半を経過して見えてきたものについて率直なところを語っていただければと思います。 それでは、皆様の方から仲介委員あるいは調査官になられたきっかけを含めて、簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。

【河井氏】41期の河井です。平成23年度から第一東京弁護士会の仲裁センター運営委員会の委員長をしておりまして、24年度は東京三会仲裁センター連絡協議会の議長をさせていただいています。仲裁センターの委員長をしていた関係で、原紛センターの立ち上げの段階から議論に参画しておりました。最初は東京三会から20~30人の仲介委員の推薦をしてくださいということで、私が声をかけなければならない立場でもあり、私が入らないわけにはいかないということもありまして、当初から仲介委員に就任しております。

【牛久保氏】54期の牛久保美香です。弁護士登録10年目の2011年10月から調査官になっております。センターの立ち上げ当時、日弁連で調査官を募集していたのですが、ちょうど、私が就いていた業務が9月で任期満了することになり、事務所の先輩から、10月以降やってみないかという話があり、調査官になりました。

【倉田氏】62期の倉田梨恵と申します。私は、以前から弁護士として何らかの形で被災者の支援をしたいと考えていたところ、ちょうどよいタイミングで事務所のパートナーから調査官のお話をいただいたことと、通常の弁護士業務を行うだけでは知り合うことのできない多くの弁護士と同じ目的に向かって働くことはまたとない機会だと考え、調査官になりました。

【池田氏】新64期の池田大介と申します。私が調査官になったきっかけは、第二東京弁護士会の選択修習の時にADRを取っておりまして、もともとADRに興味があったうえにそこでADRの可能性について、いろいろと諸先輩方からご指導をいただいたこと、修習中に東京弁護士会の村林俊行先生からお声をかけていただいたこと、原紛センターが、多くの弁護士、法務省や文科省、裁判所から来られている方もおられたりとか、多様な人材が集まる組織であること、ADRで被災者の方々の救済にもなること、自分が弁護士として出発するときに多くの人と出会え、いろいろなことを考えられるということで、この業務にあたらせていただこうと思い調査官になりました。


仲介委員・調査官の業務

【柳楽編集長】それでは、皆さんの仲介委員、調査官としての日常的な職務の内容をお伺いしたいと思うのですが、まずは仲介委員の河井先生から、仲介委員と調査官の役割の違いも含めて、簡単にご説明いただけますでしょうか。

【河井氏】仲介委員は基本的に案件ごとに任命されます。案件によって仲介委員が1 人の場合と3 人の場合とがあるのですが、今は1 人でやる「シングルパネル」の方が多いですね。調査官は、その審理を行う過程で記録を読んだり和解案をつくったりする「仲介委員の相談役」のような役割を担っています。

河井原紛センターではとにかく多くの事案が同時並行的に動いていますから、同じような請求についてはある程度統一的な考え方で解決がなされる必要があります。仲介委員同士でも勉強会を開いているのですが、基本的な考え方をどうするのかは、調査官を束ねる和解仲介室というものがあって、その中で調査官の考え方の基準をつくっていく機能というのがあります。そこで他の事件とのバランスを保ちながら公平で統一的な解決を意識しながらやる調査官と、具体的な事案に応じて妥当な解決策を図ろうとする仲介委員ということで、原紛センターでは、この仲介委員と調査官が車の両輪のような形で協力し合っています。勤務においては、調査官は非常勤職員であり、就業時間は1日5 時間45分、基本的に月~金曜日の週5日出勤することが期待されていますが、勤務時間の設定はある程度柔軟にしており、弁護士業務との両立も相当程度可能になっています。そして仲介委員は案件があるとセンターに行くのですが人によって週何回かはバラバラで、週によっても違うのですが、私の場合は週に3 回程度センターへ行くこともあります。日によっては1日に複数の案件の審理が入ることもあります。

【柳楽編集長】いま、仲介委員の方は1 人当たりだいたいどれくらいの件数を抱えていらっしゃるのですか。

【河井氏】一時期は50件以上を抱えていた時期もあったのですが、今は15~18件とか、10件台後半の人が多いかと思います。

【牛久保氏】調査官の業務としては、審理に必要な事前調査のほか、種々の問題につき、和解仲介室として今どのように考えているのか、どういう案件が申し立てられているのか、類似案件があるかといったことを仲介室内で情報交換をしながら、仲介委員に伝えるといったことも行っています。また、審理の期日後に、仲介委員の指示でいろいろな調査をすることもあります。

【柳楽編集長】調査官の仕事で一番多いのはどんな仕事なのでしょうか。

【牛久保氏】初期の頃は日程調整に割かれる時間が多かったですね。仲介委員が弁護士、調査官も弁護士、両当事者にそれぞれ弁護士がつくと、少なくとも弁護士4 人の日程を調整しなければなりませんから。

【柳楽編集長】その事実を出しきらせるという面でどういうお仕事をされているのか、また代理人がついている場合とついていない場合でまた違ってくるのかなとも思いますし、何かそのあたりでご苦労されていることはありますか?

【倉田氏】私は今、自主的避難等対象区域からの申立てを専門に扱う係にいるのですが、この区域の方々の申立事件は基本的に口頭審理を開かない扱いになっています。そのため、和解案提示に向けた事実関係の整理が調査官の仕事のメインであり、この作業に70%くらいの時間を費やしています。

【池田氏】私は、被災者個人の案件と事業者の案件を行っています。それに加えて集団案件を担当しています。集団案件の業務では、個別の事件の和解案を考えるという作業をすることもあれば、連絡担当として私が申立人側の代表者である弁護士と東京電力側の代表者である弁護士と期日についての調整をしたりとか、今後のスケジュールを調整したりとか、和解案を出すタイミングをどうするかとか、そういう日程調整なども行っております。毎日の業務の中で、個別の事件の和解案を考えるというのはだいたい30%程度でしょうか。他の70%近くは、事務的な連絡ですとか全体のスケジュール調整、集団案件に関する基準作りの作業をしていることが多いです。

【柳楽編集長】牛久保先生、最近の状態を聞かせていただいてもいいでしょうか。

【牛久保氏】私も、今、集団案件をやっている関係で個別案件は少ない状態です。集団案件になると関係当事者が多いものですから、どうしても、その調整に追われることも多いですが、初期の頃と比べるとそれに割かれる時間は少なくはなっています。集団という特殊性を除けば、妥当な和解案を提示するために種々の問題点をどう考えるかについて、仲介委員、室長、室長補佐などと相談したり、同種事案の調査をしたりといったことが多くなっています。


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