弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

『中小企業の海外展開』を
支援する弁護士の活動
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中小企業の海外展開支援に弁護士が関わることの意義

【出井幹事長】それではまず、日本経済の国際化の進展と弁護士業務ということで、その中で中小企業への、特にアジアへの展開に弁護士が関与することの意義、また海外へ進出している企業への弁護士の支援の実情、その場合に目指すべき弁護士の支援とはどういうものか、その辺りの総論をそれぞれお聞かせいただきたいと思います。

【吉崎氏】特に地方の中小企業さんのこれまでの現状を聞いていると、例えば、地元の融資銀行に国際契約の相談をしてボランティアベースでみてもらっていたところもあり、また、取引の成立を優先するあまり、ほとんどノーチェックで相手方が提示する英文契約にサインして、取引が始まっていろいろ不利な面が分かって困ったということもありました。そこに日本の弁護士が関与することで、リスクを軽減できる面は大いにあります。また、アジアに進出するのは欧米の取引とは違って、国内取引に近い感覚で進めてしまう面がありますが、実際に起こっている紛争を見ていてそれではいけないと感じます。

【藤本氏】現地の弁護士さんを使っている会社もあるし、使わずに合弁で相手方の言うがままにやっているところもありますが、現地のことを日本語でアドバイスでき、現地の言葉を使って現地とも折衝ができるというところに我々の存在意義があると思います。大企業であれば法務部とか海外事業部がきちんとやるべき仕事を中小企業ではなかなか全部できないので外注として我々が担ってその会社に恩恵を返すという意味で、フィー以上の仕事をさせてもらえていると思います。

【出井幹事長】企業が海外に出ていくときどうしても専門家のアドバイスは必要になります。大企業だと直接現地の弁護士を使ったりできる企業が多いのですが、中小企業になると自分で弁護士を使っていくことが難しいので、そこに少なくともインターフェースとしては日本の弁護士が、かつ日本語でアドバイスしてくれるのは非常に大きな価値があると、私も日々の仕事を通じて感じているところです。それでは生田さん。

【生田氏】以前、ヨーロッパに関してやっていた仕事というのは、大きな仕事もあれば小さい仕事もありました。当時、EUになる、ヨーロッパが1 つになるということで我先に日本企業がとりあえず進出ということがあり、私どもは現地にいたものですから現地でサポートさせていただいておりました。それは海外にいてサポートしていたので、日本にいてサポートするのとはちょっと違うのかなと考えています。日本にいながらもしくは日本からの発信でどうやってサポートしていけるのか、これから考えていかないといけない課題ではないかと思います。

【出井幹事長】そうですね。弁護士のサポートにもいろいろなやり方があって、日本にいて本社に身近なところでアドバイスをするというやり方もあれば、海外の出先にいってアドバイスをするやり方もあるでしょうね。では土森さん。

【土森氏】中小企業がどうやってアジアに進出しているかにつきいろいろな方に聞いてみますと、必ずしもジェトロや中小機構のサポートを受けているのではなく、現地に詳しいコンサルタントの伝手を使っていることが結構多いらしいということでした。しかし、コンサルタントの方は、販路開拓や、現地でのネットワークは強かったとしても、契約上のリスクについてまではアドバイスできていないようです。特に合弁契約などは、非常に気をつけなければならないのに、合弁相手に有利な契約書にそのままサインしたりしている。合弁契約の中である程度手当をしないと現地の法規制上撤退が非常に困難になったり、財産を全部置いて出ていかなければいけない状態になったりしてしまうにもかかわらず、手当がなされていない。いざトラブルになってから初めてわかるようなことが後回しになった上で海外進出しているという印象を持ちました。特に中小企業が出ていくときには弁護士等の法務のプロがどこにも関与していないので、土森氏ビジネスのスキームとして本当にこれで大丈夫なのか、コアとなる技術が守られるか、そもそもお金を払ってもらえるのか、といった辺りはノーチェックになっているという実態がかなりあるのではないかと。国内であれば失敗してからでも痛い勉強料だったと済むのが、海外だとトラブルになった場合にかかるコストは国内の比ではなく、痛い勉強料では済まず、会社の根幹をゆるがしかねません。トラブルを事前に防止することが国内の場合にも増して非常に重要であり、弁護士が関与してチェックすることを海外進出のプロセスの中に入れていかなければならないと強く感じています。

【武藤氏】中小企業の海外展開に弁護士が関与するということには、「日本の弁護士がなぜ関与する必要があるんだ」という点と、「現地の専門家を関与させる必要はないのか」といった2 つの局面があると思います。ただ、実際には現地の専門家も日本の弁護士もいずれも関与していないというケースが結構多いようで、そこは一番危険です。では日本の弁護士には何ができるのかというと、現地の法律を知っているかというと正直それは限られた知識しかないんですね。だから現地の専門家に匹敵するような現地法のアドバイスをするということは、なかなかそう簡単にはできない。ただ、中小企業さんのサポートに向けた業務の裾野を広げるためには、もう1 つの役割として、弁護士としてのコモンセンスに基づいて、現地から来る情報の分析、それを踏まえたリスクの見極めと予防策についてアドバイスをすることが、非常に大きな役割ではないかと思います。リスクの程度を見極めることで、これはお金をかけてまで調査するべきだ、あるいは現地の弁護士を雇うべきだ、もしくは日本にいる現地に詳しい先生のところに行くべきだというふうになるのか、そこまではいかないけれど話を進めるときはこういう点に注意しなさいといった助言にとどめるのか、それともちょっと進めてみてもしも危なそうなことがあったら改めて相談にきなさいという風にするのか、そういった振り分けをすることで、効率よくコストを抑えつつ大事なリスクはきちんとコントロールしていくことができます。そういうリスクの見極めをしてその危険を予防するために今は何をすべきかの優先順位をつけることが、日本の弁護士が果たすべき大きな役割だという気がします。こうして日本の弁護士が関与することで中小企業が大怪我をするケースを減らし、事後の対応や損失処理のために無駄なコストをかける必要も無くすという2 つのメリットがあると思っております。

【出井幹事長】私も仕事で皆さんと同じようなことをしているわけですが、やはり現地の弁護士だけというのは大企業でも結構危ないことがあります。現地の弁護士といっても、日本と現地とで同じようなレベルの弁護士がいるとは限らないし、依頼者のために本当にやってくれるのかどうかを見極めて、かつリーズナブルなコストでやってもらわなければいけない。そこをコントロールできるのは同じプロフェッショナルの弁護士であると思います。たとえば、合弁契約の交渉をしていても許認可の条項がありますよね。許認可も現地政府はこういう条件じゃないと駄目だと現地の弁護士が言ったりするわけですけど、しかしそれが本当にそうなのか。そこは我々のリーガルマインドでスクリーニングをかけて、現地の弁護士が本当に海外の依頼者のためにやってくれているのかというところもきちんと見極める。それが日本の弁護士の役割だと私も思いつつ仕事をしていました。


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