弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

若手企業内弁護士大いに語る
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インハウスを採用する企業側のメリット

【鈴木幹事長】インハウスを置くことによって企業にとって具体的にどういうメリットがあるのか、そのあたりを皆さんの体験からお聞かせいただけますでしょうか。

【内田氏】金融系だと法務部門は存在感のある位置付けだと聞くのですが、普通のビジネスをやっている会社では営業等ビジネス部門の発言力が強く、法務部門が「文書課」と呼ばれていた会社があるように、法務部門は案件をストップさせるコストセンターだと思われている会社は結構多いと思います。ところが、法規制が複雑化してビジネスが変化するスピードも速く、新しいビジネスを始めるには、法務部門が案件のプランニングの段階で検討に参加して、法的にリスクを精査してスキームを立てないと、致命的なリスクが残ったまま案件が進み、最後契約書チェックの段階で指摘していたのでは遅いということがままあるのです。しかし、スピードが求められる中で、顧問弁護士のスケジュールをおさえて全案件を一から説明するのは難しい面があります。もちろん外部の先生の力を借りることもありますが、その際も早く的確に検討していただくためには、内部で事実関係を整理して資料も用意して相談に行く必要があります。インハウスがある程度法的な調査能力や問題の解決能力を発揮して事前準備をすれば顧問弁護士への相談もスムーズになります。そういう法的な調査能力とか問題解決能力は、新人弁護士でもある程度は持っていると思います。もう一つはガバナンスとかコンプライアンスに関わってくるのですが、私は、コンプライアンスは、その会社の理念を実現するために守るべきルールだと考えています。いくら組織や規程を整備しても、きちんと守られなければ意味がなく、社員の方がどういう価値観を持って仕事をしているのか、それにコンプライアンスの方針や体制をどう合わせていくのかというのは、社内でやっていくのがいいのではないかと思います。企業文化に合わせて一緒に作っていくことができるのはインハウスだと思っています。

柳楽編集長

【柳楽編集長】私は顧問として関わっているところで最近、営業と法務の仲裁役みたいな話が増えていて、たとえば法務の人が新規事業のスキームを持って相談に来るじゃないですか。それで、それはまずいよというようなアドバイスをすると「営業がどうしてもこの形でやりたいと言っている」という。では営業を連れてきなさいと。最初は「連れてきなさい」だったのですが、そのうち私のほうから会社に行くようになって、そこで打合せに同席して営業は何をやりたくてそういうスキームを考えたのかというのをよくよく聞いたら、「それだったらこういうやり方があるのでは」と提案もできるのです。早い段階から商品設計に携わることによって、法務と営業がうまく協力し合っていいものができるという可能性があるかなと最近気づきました。ただこれは、外部の弁護士は時間、リソースが足りなくてなかなかできないのです。そういう時に中に弁護士がいたら違うんだろうなと思うことが最近すごく多いです。

【内田氏】インハウスがいることによって、逆に外の先生にお願いできる案件が増えるのではないでしょうか。案件の検討段階で、第三者として外部専門家の意見書を取る、顧問弁護士を通して官公庁に匿名で問い合せるということはかなりありますので、必ずしもインハウスがいいということではなく、内部と外部それぞれの強みを生かした活用の仕方があるのではないかと思います。

【鈴木幹事長】では熊野さん、よろしいでしょうか。

【熊野氏】似たような話にはなるのですが、やはり営業の人は営業の場面で頑張りたいわけで、法的な問題点に対する意識が薄いのはある意味当たり前のことなので、それをフォローするという立場はとても大事だと思っています。社外の弁護士とインハウスの何が違うのかと考えると、整理していない所をどれだけくみ取れるかという点だと思います。事業部門の方がここが分かりませんと言って相談に来たとしても、実際は法的な問題点は違う所にあったり、もっと根本のところで間違えていたり、勘違いだったりということはしょっちゅうあるわけです。そういう時に、この部門の業務からすればこういうふうにやりたいのだろうけれども、本当はこういうところが問題になるなぁ、でも気づいていないかもしれないと思ったら、こちらから、こういうところはどうですかと積極的に提案する。私は事業判断が出来るわけでもないのですが、かなり近いところまで一緒に考えて一緒に決めていくということは入社してからの3年ほどの間でも増えたように思います。法務は「止める所」という認識はステレオタイプとしてはあって、そういう意見を持っている部門もあるにはあるのですが、何個か難しい案件を一緒にやったり、解決まで一緒にたどり着けたという部門になると、結構頼ってくれるということはあります。そういうことは自分にとってもやりがいですし、会社にとってもこういう関係が出来上がって行くこと自体が問題の早期発見にも繋がるし、早ければ早いほど選択肢も広がるわけで、そうなると柔軟な対応ということも出来るので、それはいい流れだなと思います。また、単純なことですが、今会社として、これが大変だからこっちに割きたい、という形で調整するといったように社内の人間同士だからわかりあえるという部分もありますし、案件を重ねれば重ねるだけ、「法務だからいらないことを言う」という意識自体が無くなっていくのを目の当たりにするのはすごく面白いです。

【鈴木氏】今のお二人の話とかぶるのですが、やはり現場に直結した専門家として、ビジネスジャッジメントに関与できる点ですね。法的にはいいけれど、ビジネス的にはこれはやらない方がいいのではないか、という判断を、最終的にまだ私の地位だと自分で決めきれませんが、そういったビジネスジャッジの材料を提供していけるというところは、インハウスならではだと思います。あとはインハウスは顧問弁護士と違って営業的配慮は必要ありませんので、良くも悪くも遠慮なく言いたいことが言える。顧問の先生も信頼関係が出来れば、言いたいことを言えるというケースもあると思うのですが、やはりちょっと遠慮してしまうこともあるのではないかと思うのですが。

【柳楽編集長】むしろそれに関しては従来逆のことが言われていたように思います。外部にいるから第三者的な物の見方で厳しいことも言える、内部にいると、会社に雇われているという立場上、言いたいことが言えないのではないか。物理的な立ち位置の問題でそう言われていたと思うのですが。

【熊野氏】実際はそんなことはないと思います。むしろ中にいるからこそ効果的に動くこともできると思います。

【柳楽編集長】確かに今のご時世、外の弁護士も顧問先を失いたくなくて、会社に対してきついことを言うのは躊躇してしまうという面があるかもしれません。

【熊野氏】むしろ中でコントロールをするというか。

【内田氏】ビジネス部門も社内だから言えるけれど、外の先生に言ったら怒られるのではないか、という面もあると思います。私達は顧問の先生を信頼していますが、ビジネス部門の方にとっては全然知らない人なので、いきなり初対面の人に自分の秘密や疑問に思っていることを中々言えないかもしれません。

【鈴木氏】やはり机を並べて仕事をしていますから、外には聞きにくいような内容や、あるいはちょっとしたことでも、比較的気楽に聞けるような気安さはあるのかなと思います。

【森田氏】あと、法務研修については、顧問の先生でもできるのですが、当社社員のレベルやニーズというのはやはり社内にいないと分からないのではないかと思います。社内にいれば、だいたい社員のニーズ等が分かりますので、それに合わせた社内研修ができるというのも大きなメリットと思います。訴訟対応の場面でも、顧問の先生だと、必要な情報や資料を収集するにはやはり法務の人にお願いするしかないと思うのですが、例えば社内にいると、だいたいあの人に聞けばこんな情報を持っているぞとか、この辺にこんな資料があったとかということが分かりますので、外部の弁護士の先生に提案できたりする場面もあります。そういう点では弁護士が社内にいるというのは、証拠収集の観点からもメリットがあると思います。

【鈴木氏】ほかにもたとえば、朝電話がかかって来て「これから出かけるのですぐ回答をください」というのがあるのです。

【熊野氏】よくありますよね。 鈴木氏

【鈴木氏】「午後行く」くらいならまだいいんですけど、「10時に出ます」と言って9時ぐらいに電話がかかってきて。こういうリクエストには、さすがに中にいないと対応できないですよね。あと、この人が持ってきた話は要注意だとか、彼の話は大丈夫だとか、そういう、社員の人柄を把握した上での対応ができるのです。顧問弁護士でもベッタリ張り付けばそういうのが分るかもしれませんが、日常的に肌感覚で分るというのは企業にとっては大きなメリットなのではないかと思います。

【柳楽編集長】先ほど「案件の早期発見」という話がありましたよね

【熊野氏】そうですね。問題が闇に潜ったまま最悪の事態になるよりも、これは法務に聞いてみた方がいいかなと思ってもらうことでだいぶ表に上ってくることが増えるので。

【柳楽編集長】外部の弁護士には来ないのです。そもそも弁護士に相談するかしないかの振り分けを間違えられてしまうと。

【内田氏】それは大いにあると思います。それに顧問弁護士が誰か普通の社員は知らないですよね。法務部に相談が上ってこなければ必然的には顧問弁護士にも相談がいきません。

【熊野氏】本当にそうだと思います。でもそういう場面も多々あると思います。

【鈴木氏】皆さんの会社では、直接営業から顧問の先生に相談するようなことがあるのですか。

【内田氏】基本はないと思いますが、ホットラインの受付は外の先生にお願いしています。


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