弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

法科大学院出身の新進法曹
大いに語る(4/4)

~多様なバックグランドを生かして~

ロースクールの今後について

【鈴木幹事長】どうもありがとうございます。最後になりますが、ロースクール草創期の出身者として、今後のロースクールや法曹養成制度のありかたについて、ひとことお願いします。

【谷井氏】ロースクール制度というのは、私にとっては夢のような制度だったと思っていて、今もそうだと思っています。全く法律を勉強したことがない人が、もう1回法学部に入るのかといったらそういうことも現実的ではないですし、では旧制度の下で予備校に通って勉強をするのかと言ったら、それも事実上、その時点で尻込みをしていた人が多かったと思うのです。この法科大学院という門が開かれたことによって、ものすごく入口が低くなったということは確かだと思います。お金の問題であるとか、合格率の問題とかを色々言う方がいらっしゃると思うのですが、お金の問題で言えば、社会人を少しでもやってお金を貯めて入ればいいと思うのです。合格率の問題にしても、旧制度で2~3%しか受からなかった時代からすると、10倍受かっているわけです。もともと水溜りくらいの広さだったものが太平洋くらいになっているのですから(笑)、どんどん飛び込んで来なさいということを、いま尻込みしている人たちには伝えたいと思います。ロースクールが無ければ、こういう社会人が大量流入してくるというか、チャレンジをすること自体が、まずなかったと思うのです。社会人が自分の経験を生かして法曹の道を目指すというのは、この制度ならではと私は思っていますので、そういうところをもっと伝える場があればいいのにと常日頃考えています。

【大磯氏】私自身はロースクールの理念、司法改革の理念というのは、非常に素晴らしいものだと思っています。日本という国の中には高度に専門化している領域がたくさんあります。それらすべてを法学部を卒業した弁護士、法曹の方だけで処理をしていくのはさすがに限界があると思います。そういった意味で、各領域でプロフェッションとして働いた方が、ロースクールに入って資格を取って活躍していくというのは、非常に素晴らしいビジョンだと思います。ただ、やはり需給調整のところできっちり計算できていなかったというところは多分事実で、そこに関しては反省しなければならないと思います。それと同時に、今後、社会人の方たちが、希望をもってこちらにきていただくために、まず第1期生の私たちが、ロースクールに入って法曹資格を取ったらこういう素晴らしいこと、おもしろいことができるんだということを示していかなければいけない、それが私たちの使命だと思っています。

【日吉氏】最初に司法制度改革が言われたときに、今後日本がどういう社会になるかを考えて制度設計や人数が考えられたのか、ちょっとよくわからないのですが、少なくとも今色々問題が出ていることは事実だと思います。やはりもう一回、これからの日本の社会ではどういう仕事の分野の、どういう能力を持った弁護士が求められているのか、という原点に立ち返ったうえで、それを踏まえてどういう教育をする、どういう司法試験をする、どういう修習をするという制度設計をもう一度見直すことが必要だと感じます。日本は欧米と比べると労働流動性が非常に低いので、1回何かの世界に入ってしまうと、なかなか修正はしにくいです。ロースクールで言いますと、仕事を辞めて、収入の途を絶たれて飛び込んで、それで法曹になれなかったらどうするんだみたいな、あまりにもハイリスクな部分があります。これを制度設計で補っていかなければならないのではないでしょうか。例えば入口をもう少し広げて、勉強していく過程で、法律に向いたマインドを持っている人間かそうではないかという選別を早めにやって、今までいた社会に戻れるようなことを考えたらどうか、とりあえず見極めをするまでは夜間制度みたいなのを利用して、仕事をしながら行けるような、そういう制度設計がもし可能であれば考えるべきではないでしょうか。入っていく気安さと、引き返しやすさみたいなものを、ありとあらゆる方法で作ってあげないとリスクは下がらないと思います。それから就職も考えないといけないところです。経済問題に関しては、教育の質とは全然別の制度設計として、ロースクールに行く人間にどのような制度で資金援助ができるかということも考えないと、志望する人間が激減しているという状況を改善することはできないのかなと思います。最後にもう一点、実は法科大学院というのは、私は個人的に思うのですが、中で素晴らしい教育が行われているのです。これは、司法試験に受かるまでの人間だけが享受できるものにとどめておく必要はなく、例えば実務に入った今こそ取りたいなと思うような授業がたくさんあります。実務法曹が定期的に戻ってもう一回勉強し直す、というようなことも念頭に置いた法科大学院制度であってほしいと思います。

【宮内氏】社会人経験のない私のような立場の人から言うと、「とりあえずロースクール」という方が大半かと思います。私自身もそうでした。色々な批判があるかもしれませんが、私はそれでも良いと思っています。もちろん、大学時代に様々な活動に携わり、自分の目標や志を具現化し、技術や知識を培うことにこしたことはありません。しかし、大学時代にそのきっかけはなかなか掴みにくいのも事実です。そこで、私が大事だと感じるのは、「とりあえずロースクール」に入学した方々が、法科大学院が提供する様々なチャンスを貪欲に活かしていくことです。授業への積極的参加はもちろん、法科大学院がエクスターンシップ・プログラムを提供しているのであれば、必ずエクスターンシップを行う、模擬裁判を行っているのであれば、必ず模擬裁判に参加するなどすることです。法科大学院生には、このようなチャンスを活かすことによって、自分の法曹としてのイメージや理想を膨らまし、また同時に、新たな視点やノウハウを培って行って欲しいと思います。他方、法科大学院には、それらが可能となる環境を学生に提供し続けて欲しいと思います。一人一人の学生が積極的な姿勢で法科大学院時代を過ごし、実務の中でその経験や力を発揮していくことによって、法科大学院の意義や効果が社会の中で実証されていくはずです。ですから、「とりあえずロースクール」で進学したものの、「とりあえず弁護士」にはならない、そのように思えるくらい密度の濃い2年間ないし3年間を一人でも多くの法科大学院生に過ごしていただきたいと思います。

【鈴木幹事長】どうもありがとうございました。皆さんに活躍していただて、ロースクール制度の意義を実証していって欲しいなと思います。

(平成23年10月4日 於霞が関弁護士会館)

於霞が関弁護士会館
左から 酒井、鈴木、大磯、日吉、谷井、宮内、柳楽 各氏



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