弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

法科大学院出身の新進法曹
大いに語る(2/4)

~多様なバックグランドを生かして~

従前のキャリアがどのように弁護士業務に役立っているか

【鈴木幹事長】社会人経験をお持ちのお三方におうかがいしたいのですが、弁護士になってみて、それ以前のキャリアが今の弁護士としての業務にどのように活きているでしょうか。

日吉氏

【日吉氏】私は今、「ハイブリット型勤務」と勝手に言っているのですが、毎日午前中は一般の法律事務所で普通のアソシエイト弁護士として、いわゆる法廷弁護士の仕事を勉強しながら、午後は毎日テレビ朝日の法務部の常勤嘱託で仕事をするという、インハウスロイヤー50%、普通の弁護士の仕事50%というような仕事をしております。まず、一般の法律事務所で今までのキャリアがどう役に立つかというと、顧客が法人という場合が割合としては6、7割ですが、意志決定が組織内でどういうようにされていくのか、そこでの問題点だとか顧客である法人と打ち合わせをしていく中で、どの点に気をつけていけばいいのか、相手の立場に立ってものが考えられることがございます。午後のテレビ朝日では、これは知っている人ばかりですし、どこを押せば何が出てくるか、事実を聞き取りするときでも、あの部署のあの人に聞けばこういう情報を集めることが出来るということもわかるし、説明をされなくてもだいたいどういうリスクを抱えて現場が動いているかという、実際のテレビ制作現場の実態を知っていてやっているものですから、契約書を作ったり、或いはトラブル対応をしたりするときも、説明を受けなくても大体のことは概ね見当がつく、そういうことは役に立っていると思います。

【鈴木幹事長】では、谷井さん如何ですか。銀行にお勤めでしたが。

【谷井氏】銀行の仕事は多岐に渡りますので、顧客から税務に関する相談を受けることもあれば、自分の銀行のために企業を再建したり、債権回収を行ったりということもありますので、今の業務の中でも、そういうところを生かしてやることが多々あります。他には、銀行をやっていて、色々な業種の方と話ができるというところから、ネットワークを自分で構築できるということもあります。広島には、企業法務研究会という30年くらい続いている異業種交流会があるのですが、そこの幹事をさせてもらっているのも、元々自分が銀行というバックグラウンドをもっていたからこそ、橋渡し的なことをさせてくれるのだと思います。私は事務所ではパートナー扱いですので、自分の仕事は自分で取ってくるという形でやっているのですが、そういったネットワークを活かすことで、今まで3年間は何とか順調に食べることができています。

【鈴木幹事長】では大磯さん。お医者さんですから、先ほどの動機の中でも伺ったのですが、キャリアが今にだいぶつながっているものがあるのではないかと思いますが如何でしょうか。

【大磯氏】そうですね、私は医療訴訟と、知財を主にやらせていただいているのですが、医療訴訟に関しましてはやはり、元々自分がやっていた仕事に直結しておりますので、実際に、個々の事案において何が起きているのか、どこが問題になりそうなのかというのが、自分の経験の中で思い浮かびますので、直接役に立っています。

【柳楽編集長】大磯先生が扱っている医療訴訟は、病院側と患者側のどちらが多いというのはありますか。

【大磯氏】私の事務所では、両方やっておりまして、殆ど同じか、病院の方がちょっと多いかもしれないですね。私は医者の立場で考えてロースクールに行ったのですが、勉強しているうちに、患者さんも家族の方も相当深く傷ついているというのを知り、病院側だけに立ってやるのが本当に正しいのかと疑問に思いました。事務所の方でもコンフリクトがかからない範囲で患者側もやろうというので、患者側の法律相談もさせていただいています。


ロースクール教育のメリット

【鈴木幹事長】宮内さんは社会人経験はないわけですが、法科大学院の教育が今の弁護士業務でどのように生きているのか、お伺いしたいのですが。

【宮内氏】法科大学院では、実務系科目はもちろん、それまで大学で履修しなかった行政法や国際人権法などの授業も履修し、大学時代の勉強をさらに広げ、深化させることができました。しかも、法科大学院では充実した授業のラインナップが提供されていたことから、様々な問題について、研究者と実務家、双方の視点から多角的に考えさせていただくことができました。このような経験は、大学でも司法修習でもない、法科大学院だからこそできたことです。このような学習を通じて、思考方法はもちろん、実務でも活かせるノウハウをたくさん学びました。例えば、研究者と実務家の先生方がリレー方式で担当された国際人権法の授業では、被疑者・被告人の信書の発受に対する制限について、国内の法実務及び裁判例を、ヨーロッパ人権裁判所の裁判例、国連の規約人権委員会の一般的意見や見解例などと比較して検討しました。授業では、さらに、これらのツールを裁判においてどのように利用することが可能であり、効果的かという点についてまで学習をしました。現在、私は、難民事件や外国人の在留資格に関する事件に携わっていますが、このような事件を扱う際、国内の資料はもちろん、海外の資料にも目を通し、主張を組み立てたり、裏付けを行ったりしています。このように法科大学院では、従来型の司法試験勉強とは少し違う勉強をし、違った視点を養うことができましたが、それらが実務に出た後に非常に活きていると実感しています。

【鈴木幹事長】社会人経験のあるお三方はいかがでしょうか。

【日吉氏】仕事をしながら、例えば旧試験の形態で、自学自習をしながら予備校に通うということは、私は不可能だったと思います。やはり、3年という期間に濃縮した形で体系的に法律的なものの考え方を学ぶということができたからこそ、今、まがりなりにも一応脳みその改造がちゃんとできて、未知の問題に遭遇した時も、何とか自分の力で法律的に考えて答えを出そうとするというようなところまで漕ぎ着けられたなと。自分で仕事しながら、予備校に通って身に付けることは到底できなかったと、これは断言できるのではないかと思います。

【大磯氏】私のいた医学部というのは、臨床をやっている、つまり主に医師として働いている人が片手間に授業をやっています。それと比較して、早稲田大学大学院法務研究科の先生はとても分かりやすい講義をされており、大学の教員というのは、こんなに分かり易い講義をするんだと正直感動しました。それはそれとして、日吉先生がおっしゃられるように、勿論自学自習というのは正直できようはずもございませんが、単なる座学ではなく、ソクラテスメソッドという形で講義をするというのが、社会人経験をした私にとって非常にフィットしました。教科書を読んで、ものを憶える時間というのは、家で一人でやればいいことであり、学校に行って先生と議論をすることで、教科書で平坦に得た知識を立体化し、どこが大事でどうつながっているのかというのを自分の中で整理、構築することを繰り返すことができたのが非常に有意義だったと思っています。

谷井氏

【谷井氏】銀行にいた時代の取引先に、某予備校の教材を作っていた会社があり、参考に教材を見せてもらったことがありました。さすがに予備校に通うために銀行を辞めるというのは、なかなか許されないという面もあったのですが、ただ、予備校でやることというのは、本を読めば自分でできるかなというように感じたということもあります。それから、ロースクールに入ったら、3年間自分の勉強の時間が確保できるというのがありましたので、制度として、そういう時間が確保できるというのは非常に有難いなと思いました。あとは、先端科目の講座が沢山あるのと、実務科目があるというのは、やはり、法律家になるにあたって良かったと思います。実務ではどういうことをやるのかということに接しながら、試験科目に限られずに勉強する。これは制度化されているからやったという部分もありますが、旧試験を勉強するのだったら試験科目しかやらなかったと思うのですが、私がやりたかった企業再生や税務関係とか、自分の目標としている分野は勿論やりますが、それ以外の派生的なところをどれだけ積み上げて、今までの自分の経験を活かせられるかというところにありましたので、そういうことを長く研究されている教員の方、専門的に扱っている実務家の方からお話を頂戴できて学修できるというのは、ロースクールならではだと思います。


▲このページのトップへ