弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

東日本大震災支援活動の
現状と課題(4/4)

今後に向けて

【鈴木幹事長】長いスパンで私たちは取り組まないといけないと思うのですが、今後続けていくために、どういうところに気持ちを定めていかないといけないかということをおうかがいしたいと思います。

【石橋氏】私たちが最初のうち法律相談と称して現地に行っても、そんなに相談は無かったわけです。先程内田先生がおっしゃっていたように、必要なのは正に情報提供でした。現地に行って色々話を聞いていると、そういうことがだんだん分かってきて、色々な制度があるのだけれど、被災地の人は知らない、そういう情報をきちんと分かりやすく提供してあげることが、それが一番大切なことなのだということでやってきました。色々な支援制度をはじめ、相続のことも色々伝えてきたわけですが、それでやっと法律問題になってきたというように思っているのです。最近の電話の相談も被災地での相談も相談時間は長くなっているのです。それは正にきちんと色々な情報が伝わって色々なことが分かり始めて、それで法律問題にだんだん入ってきているのです。やっと私たち法律専門家の出番が出てきたというように感じています。この先も復興の取組みには何年もかかるというように思っております。そうするとやはり腰を落ち着けて、うちはもう会員が全部本部対策委員になってオール岩手でやろうとしていますが、それをずっと何年も続けなければいけないと思っています。

【内田氏】阪神淡路の先生方から色々聞いたことで役に立ったことがいっぱいあるのですが、そのうちの一つに一生懸命やればやるほど必ずどこかでプツンと糸が切れる時期が来るので、その事を初めから想定してむしろ取り組んでくださいと言われたのが非常に役に立っています。もう一つはとにかく息の長い話なのだ、特に町づくりまで考えていったら10年20年かかる話で、今阪神淡路の先生方、あれから15、6年経つわけですが、今でもやっておられます。それだけ息の長い話なのだと、息の長い活動をやっていくためには、いくつかありますが、3つでしょうか、組織づくりの問題と、マインドといいますかモチベーションの維持といいますかそこの問題と、財源、お金の問題とこの3つ必要なのかなと思っています。

【鈴木幹事長】高橋先生、秋からはそろそろ原発の方も本格的に動き出すような。

【高橋氏】そうですね。ADR が9月1日スタートと聞いておりますので、それに向けて。ただ地元会としてADR のパネルに審査員を出すわけではなくて、一応福島地方事務所長の人事だけ決めればいいような、そして後申立代理人を地元で引受けるというイメージでおります。我々は当然パネルにはなれないと思うのです。皆被災者ですから、我々は。ですので、ADR 自体の運営、そこが心配なのが1点。それと、これだけ被災者が多いので、弁護団になるのか、とりあえず受任者名簿みたいなのを作って、ニーズだけまとめておいていつでも動けるようにしておいて、弁護団に動かしていくのか、そういったものを全国組織で作っていかなくてはいけないのではないのかと思います。各県に皆さんちらばっているので、その情報の均一化ということをまず考えなければならないので、その一環としては被災者ノートという共通のツールで取りまとめていってそちらの手続に乗せるという作業にする手掛りはあるのですが、今までの消費者訴訟の弁護団とかと全然イメージが違うので、どんな風にしてできるんだろうと、事務局もむしろ日弁連に設けてもらって、現地事務所ということで福島県でもやるけれども全国の力を結集した組織づくりということを、これから日弁連にもお願いするような格好でいかなければいけないのかなということを今単位会では話しあっております。

【鈴木幹事長】ありがとうございます。原発の問題だけではないのですよね。

【高橋氏】そうですね。

【鈴木幹事長】津波でさらわれてしまったこともあるし。

高橋氏

【高橋氏】そうです。ただ、現地に行けないから被害の実情さえ分からないのです。とにかく原発が収束しないと先に進まない。原発が終わらなければ自分のところに戻れないので、他の復興の枠組みと全然違ってくるわけです。ですから、これはある避難者の方がおっしゃっていたことですが、当然30年以上戻れない場所があるとすれば、そこのところを政府が全部買い上げてくれて、あなたたちこちらに住みなさいよ、それで買上げたお金が復興支援になるというようなイメージ、それほど大鉈を振るわないとなかなか大変なのではないかと思っています。

全国の弁護士と政治に向けてのメッセージ

【鈴木幹事長】最後に、全国の弁護士会、弁護士、あるいは、政治をされている議員さんに向けてメッセージをいただければと思います。

【石橋氏】今まで何とかやってきましたけれども、先程も言いましたが、先の長い話だと思います。それで、うちの会は、小単位会ですので、当然全国の弁護士、弁護士会の方に色々な支援をお願いしないといけないと思っています。今私たちが考えているのは、ADR をどうするかというのが1つ大きな課題になっています。2つめの課題は被災地の復興にどう関わっていくか、町づくりにどう関わっていくかというのが大きな課題になっています。これはうちの会だけでは到底できることではありません。マンパワーもそうですし、情報とか知識も含めて、そういうことで色々な弁護士の先生方、弁護士会に色々な支援をお願いしたいというのが1つです。色々な相談等をやっている中で、色々な政策課題が見えてきます。その時に地元の選出の国会議員はじめ、首長である、県知事とか市町村長にも色々提言とかをさせていただくことになっていくと思います。それと弁政連の組織を通じながらやっていくことも有効だと思っていまして、そういう国会議員の方とか自治体の首長さんにも色々働きかけていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

【内田氏】福島が一番多いと思うのですが、宮城県から全国の県外へ避難しているという人達もかなりいて、それこそ沖縄から北海道まで全国にいます。どこにも避難者はいるのです。その事を時折思い出していただきたいということがあります。被災地じゃないと、ニュースとかになっているうちはいいですが、半年、1年たつと忘れるのはしょうがない話だと思うのですが、時々思い出してほしいし、皆さんが住んでいるところにも必ず被災地から避難した被災者がいらっしゃいますので、そういった方々に目配りをよろしくお願いいたします。震災ADR を決めたのが4月中旬くらいで、昨日までで既に199件の申立てがありました。ここ3~4年間の仙台での普通のADR の件数は年間100件くらいでしたから、3ヶ月で199件というのはかなりの件数です。もう職員が悲鳴を上げていまして、7月19日から東京弁護士会から職員の方を交代で2人ずつ当面の間派遣していただくことになっていて、これは非常に有難い援助なのですが、そういった事もやりながら、今後、事件処理、住民に対してやっていかなければいけないです。本当に今回色々な支援、色々な弁連、単位会、日弁連から受けていますが、時折思い出していまだに復興支援に携わっている弁護士達がとりわけ被災会中心にいるということを思い出しながら、またこちらが求めたときには援助をしていただければと思います。

山谷氏

【山谷氏】2点ありまして、1点は仙台会の会員の先生方ですが、今まで救助、復旧の過程で政策提言を出させていただいて、一部は実現しているのですが、先ほど内田弁護士がおっしゃったように、我々の提言がどう生かされているか、生かされていないのか、現地調査で検証する段階にきているのだと思います。もう1つはこれから復興にあたって、我々弁護士がどういう関与の仕方ができるのか、それこそ専門家として色々なノウハウはありますので、住民の方のご意見をどう政策に反映できるのか、問われている時期かなという感じはします。日弁連の委員会のメンバーの立場からいうと、やはりこの震災の件は1年、2年の問題ではなく、10年20年見据えた形で動かないといけないものですから、ある意味では地元の単位会が息切れしたときにどうカバーいただけるかという辺りが常に念頭に置いていただかないといけないかなと感じがしています。あとは、弁政連の役割としては政治の面がありますので、その辺り各単位会を日弁連から出された政策提言をどう政治の場に働きかけられるかというところを改めて意識しないといけないかなと思っている次第です。

【高橋氏】はい。もう皆さんおっしゃった通りで尽きているかと思うのですが、福島県の場合は原発の問題が収まらないと復興にベクトルが向かないという特殊な状況があります。本当に最後まで全国の皆さんのお世話になるかと思うのですが、一つ息の長い支援を今後ともいただければと思っております。多分今の所はまだバタバタ、バタバタ動いているのでいいと思うのですが、先程内田先生がおっしゃったようにどこかで息切れしてしまうので、そういった際に、お願いしますといった時に動いてくれたりとか、また、弁政連に関してはそうやって各地の弁護士が動いているということをもっと政治家に分かってもらうようなやり方も工夫していただきながら、1日も早い復興を助けていただければと思います。

【鈴木幹事長】短い時間でしたが、大変有意義なお話をいただきました。全国の会員の皆様におかれましても、今日の話を是非共有化していただいて、政治の場と接するあらゆる機会でそれを届けるということを心がけていただければと思います。本日はありがとうございました。

(平成23年7月12日 於仙台弁護士会館)

於仙台弁護士会館


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