弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

東日本大震災支援活動の
現状と課題(3/4)

重要課題について政治に求められるもの

【鈴木幹事長】先だっての東北弁連の大会でもシンポジウムで配られた資料の中にまだまだ課題がある、政治で置き去りになっている解決されていない課題たくさんあるわけですが、その中で特に近々にやらなければいけない、是非これはというものがそれぞれあるのではないかと思います

【石橋氏】今はやはり何と言っても既存債務の解消です。もうそれに尽きるというように思っております。やっと支援金が出てきて落ち着いた段階で請求が始まってきたのです。これを早く解決していただかなければ、相当な混乱が生じると思うし、ヘタすると自殺とかが多くなるのではないかと心配をしています。ですから、これを本当に政治の場で早急にきちんとした解決をしていただきたいと思っています。

内田氏

【内田氏】これが正に政治の問題だと思うのは、阪神淡路の時には個人の債務の帳消しみたいなものというのはおよそダメだという考え方が支配的でしたよね。この震災が起きた直後はまだその考え方が根強かったと思うのですが、今は国会でも既に議論が始まっていますよね。むしろ焦点は既存債務を解消することの当否ではなく、どの範囲で解消するか、その具体的なスキームをどうするかというところまでもうステージはきていますよね。

【石橋氏】三陸津波は昔から何回も大きいのがあるわけです。何回もやられて、何回も復興してきました。人もいっぱい亡くなっていますが、でも当時は個人も会社も基本的に借金がなかったのです。今の経済体制になってこういう大きな津波がきたのが初めてですよね。昔はゼロからの出発だったのです。今はマイナスの出発ですから、全然状況が違うと思うのです。それをきちんと認識してもらう必要があると思います。今は誰でもが負債を抱え、企業も当然負債を持って事業をやっているわけだから、これがきちんと解決しない限りは復興、復旧なんてありえないというように思います。

【内田氏】私たちが「二重ローン」という言い方を嫌ってあえて「既存債務」という言葉を使っているのは、二重ではなく、まずはとにかくある債務を帳消しにするような状態を作らないと、復旧がまずできない。その時に何でもかんでも帳消しに、というわけにはいかないので、仙台の弁護士会で1つ強く打ち出しているのは牽連性の問題です。必ずしも住宅に限りません。車でも事業用か事業用でないかはともかく、牽連性のあるものの片方が失われて、債務だけが残っている状態というのは、それは何とかしなくてはいけないだろう、その牽連性のものさしであてはめたときに今の民主党案でも自民党案でも漏れてくるものがでてくるのです。どうしても。ここは今仙台弁護士会が火つけ役になって全国で署名活動をやり、今日で確か15,000筆超えたと思うのですが、そこはやはり今議論になっているものには狭いのだと思うのです。

【石橋氏】二重ローンにもなっていないですよ。車をもう1回買おうと思ったら、現金をどこかで用意してきて安い車を買うしかないのですが、その車も今中古車は値上がりしているじゃないですか。岩手は車がないと生活できません。ですから死活問題です。

【内田氏】宮城県では146,000台の車が失われました。これは宮城県内の登録台数の1割です。

【山谷氏】その意味では既存債務の問題と合わせて、例えば自動車を購入するとか、これから企業を復興するにあたって現金をどうするかという問題、建物が被災した場合に、どうそれを元に戻すかという問題があって、仙台弁護士会では、1つは生活再建支援法の適用範囲と金額の問題を提言していますし、災害救助法の問題で現金給付という問題、それがないと既存債務はいいのだけれどこれからが見えてこないというところで復興に向けてすごく大きな問題があります。

【内田氏】あと、立法自体を変えるという問題も勿論大事なのですが、災害救助法でいうと、厚生労働省の所管になっているのも私は間違いだといいますか、むしろ内閣府の方に移す方がよいのではないかと思っています。生活保護で水際作戦やっているようなところに災害救助法をやらせるのは、やはり活動が消極的になるのです。法律の改正も勿論大事だけれども、どこの官庁が所管するかというのも結構大事かなと言う気がします。

【石橋氏】今の所管の話でいうと瓦礫の撤去もそうなのです。岩手県で最初、瓦礫の撤去が進まなかったのは、産業廃棄物は県の所管で家庭用のゴミは市町村の所管なのです。誰が監督、責任を持ってやるのかというのでもめていて、それで瓦礫の撤去も全く遅れているのです。ですから、今の所管の話とか、法律を分けて、そんなことをやっている場合かと言いたくなりますよね。

【鈴木幹事長】福島県の場合は原発の問題、ADR も設置されるということですが、これは文科省のいまある原子力損害賠償紛争審査会の下に入るということですね。その点も含めて福島県弁護士会ではどういったような見方をされているのですか。

【高橋氏】日弁連では内閣府に置くようにと働きかけを行なっているようなので、そういう方向で動くことが一番だろう、つまり枠組みを作るところの下にあればその枠組みの中でしか動けなくなってしまうので、それを超えるようなADR での解決というのを望めなくなります。ですからその辺はやはり外してもらうような、そうでなければ今度の中間指針ではこれは出来ないという形でするのではなく、これは出来るあとは白紙にしておく、そういうところでやはり本来の賠償の理論で解決ができるような道筋を残しておいて貰わないと我々も協力できないとそういう格好で考えています。宮城、岩手の場合は、復興に向けて色々考えられるところなのですが、そこが見えないので皆そこまで行っていないということが福島県の置かれた非常に特殊な状況です。象徴的なのは被災3県のうち、自殺が一番多いのが福島県になってきたということです。

このあいだ、93歳のおばあちゃんが「お墓に避難します」という遺書を残して亡くなってしまったという本当にショッキングな記事がありましたが、原発の避難に翻弄されてしまった、そういう不幸な結果を出来るだけ少なくしていく努力をできないかなというところが今考えているところです。それと、先ほど出ましたが災害救助法の23条の2項の運用によっては現金給付も出来るのです。そういうことが出来ないからうちの避難者がどういうことをいっているかというと、避難所に居た方がいい、仮設が一杯できているけれども、そこに行くとガス代は払わなくてはいけない、電気代は払わなくてはいけない、自分で食事は調達してこなくてはいけない、そんなところには移りたくない、なおかつ、原発の慰謝料の額が仮設に移ると低くなるので、こっちだと2万円高いからこっちにいるとか、3食ついているからこちらの方がずっといいというようなことになっているので、やはり復興のために目指すのだったらそれなりに、仮設に移ったからと言って、特に福島県の場合は、自分のところに戻れないわけですから、本来の自分の仕事にも戻れないのです。そういった中でそういう生活物資の支給と言うのは当然必要になってくるし、災害救助法上の建て付けで言えば、決してできないわけではないので、そういうところ、やはり行政に対する政治家の働きかけで本来の形はこうだから、こういう風にしろと、やって頂くことが大事なのではないかなと思っています。

柳楽編集長

【柳楽編集長】福島県弁護士会として何かそういった運用、現金給付の運用をやるべきだみたいな、声明なり何かは出されたのですか。

【高橋氏】はい。弁政連の方で、議員さんに意見書を送って接触を図っております。こちらは、弁政連の支部、普通はだいたい当会で意見書を出したり、提言とか会長声明でやっていたのですが、議員に直接働きかけした方がいいだろうということで、弁政連で動いております。


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