弁政連ニュース

クローズアップ〈座談会〉

東日本大震災支援活動の
現状と課題(1/4)

司会
鈴木善和 幹事長
柳楽久司 本紙編集長

 

石橋乙秀会員

石橋乙秀 会員(34期)
岩手弁護士会所属
岩手弁護士会東日本大震災
災害対策本部長

内田正之会員

内田正之 会員(40期)
仙台弁護士会所属
日弁連災害復興支援委員会
委員

高橋金一会員

高橋金一 会員(41期)
福島県弁護士会所属
福島県弁護士会災害復興対策本部
本部長代行

山谷澄雄会員

山谷澄雄 会員(43期)
仙台弁護士会所属
仙台弁護士会災害復興支援委員会
委員長

はじめに

【鈴木幹事長】弁政連幹事長の、鈴木善和でございます。昨日は3月11日から4ヵ月ということで、各地で慰霊祭が行われていたということもお聞きしております。亡くなられました多数の方々のご冥福を改めてここでお祈りさせていただきます。先週の7月8日ですが、東北弁護士連合会の大会が秋田で開かれておりましたが、そこでは「大震災に弁護士、弁護士会が何をできるのか」と題するシンポが開催されておりました。私も出席いたしましたが、そこで改めて強く認識したことは、今本当に政治が求められているのではないか、先例や既存の制度、法律を乗り越えて被害に遭った被災者の方々に希望を与えられるのは政治ではないかと思う中で、弁護士として、被災者の方々に寄り添って活動をされている現場からの声を政治の場に届けたいということで、本日の座談会を開かせていただきました。

それでは、まず自己紹介をお願いします。

【石橋氏】岩手弁護士会の石橋です。岩手弁護士会の災害対策本部の本部長をしております。実は岩手弁護士会は今年の2月、弁政連の岩手支部ができまして、やれやれと思っていたのですが、こういう大震災ということでまた国会議員とか県会議員の方と接触する機会が多くなりました。そういう意味でも支部を作って良かったなと思っています。

【内田氏】仙台弁護士会の内田です。今現在は仙台弁護士会の常議員会の議長をしており、仙台弁護士会災害対策本部の本部員、仙台弁護士会災害復興支援委員会の渉外部会の部会長、震災の起きた当時は仙台弁護士会法律相談センター運営委員会の委員長という立場にあって、震災直後の相談、体制の構築といったことに携わりました。

【山谷氏】同じく仙台弁護士会の山谷です。弁政連仙台支部の幹事長をしております。災害の関係では、仙台弁護士会の災害復興支援委員会の委員長をしております。災害対策本部の副本部長もしております。日弁連の災害委員会の副委員長をしております。弁政連の関係は前々から議員会館や地元事務所に要請活動をしていました。去年は給費制の問題が中心でした。その前は可視化の問題等を中心にして活動してまいりました。

【高橋氏】高橋金一です。3月11日当時は福島県弁護士会の会長でした。今は会長が終って悠々できるはずだったのですが、福島県弁護士会災害復興対策本部の本部長代行ということで、主として日弁連とか他会からの支援の受け入れ調整の交渉窓口などを担当しております。弁政連の福島県支部が出来て3年目くらいになるのですが、福島県支部の理事ということで、去年は給費制の問題で議員会館を訪問したりしました。よろしくお願いします。


3県の被害の実情

鈴木幹事長

【鈴木幹事長】では早速お話を伺っていきたいと思いますが、まず岩手県の実情について、石橋先生からお話しいただけますか。

【石橋氏】岩手県全体の人口は133万人で、そのうち被災地の人口は27万くらいです。その中で現在亡くなった方が4,500名ぐらいおられて、行方不明者の方が2,800人くらいおられるという状況です。全半壊の家が23,000棟くらいあります。水産業の被害がやはり一番多くて、推計では2,360億円という被害、農業が581億円、工業が890億円、商業が445億円という関係になっています。ちょっと忘れられているのですが林業も結構被害を受けていまして、193億円という被害です。

岩手県全体でどれくらいの被害かというのが一番分かり易い数字として資本ストックの被害推計というのが出ていまして、被災地は既存の47.3%の資本ストックの被害を受けているということで、要するに半分完全にダメになってしまったという凄まじい被害です。多くは津波による被害です。ですから、津波に遭ったところと遭わないところの格差がひどくて、例えば釜石市に行くと釜石駅の前で被災地と被災地ではないところ、つまり津波がきたところと来ないところの差が歴然としています。本当に全滅した地域もあります。山田町とか、大槌町とか陸前高田市、ここはもう完全に全滅しています。大槌町は町役場も完全にやられていますし、陸前高田市も完全にやられています。三陸のところにいくと昔の津波はここまでですよ、みたいな表示があったのですが、それをはるかに超えているという凄まじい津波の被害だったということです。

【鈴木幹事長】では、宮城県の被害状況について、内田先生よろしくお願いします。

【内田氏】宮城県内に限って言うと、県内の死者が今までで約9,300名、行方不明者が2,800名、7月になった今現在でも県内約300箇所の避難所に約13,000人の方がまだ避難所生活です。県内の全壊した家屋が、これは集合住宅もあるので棟ではなく戸数で言いますが、67,000戸、半壊家屋が54,000戸です。被害額は県内に特化しては調べていないのですが、統計産業局で出した資料によれば、被害が全国で16兆9,000億円ということになっていて、やや乱暴ですがその3分の1近くは宮城県の被害になるのかなと。宮城県も岩手県と同様農林水産、特に被害が大きかった沿岸地域というのは、県内の南部で言えば農業地域、北で言えば漁業地域ですので、農林水産業に対する被害が非常に大きかったという特徴があると思います。

【鈴木幹事長】山谷先生、補足で何か。

【山谷氏】今回の地震は、なんといっても津波の被害が甚大でした。もともと宮城県沖地震というのは想定されていて、自治体ではそれを前提として色々な活動はしていたと思うのですが、これだけの津波というのは、何回も使われていますが、想定外の事態だったと思います。漁業関係、農業関係も津波の被害がかなりありました。地震だけではここまで被害は出なかったと思います。

【鈴木幹事長】高橋先生、福島県の被害状況をお話しいただけますでしょうか。

【高橋氏】はい。死者1,600名、行方不明者370名余りというのが統計として出ているようです。福島県も沿岸部津波の被害が大きかったですが、それ以上に原発の関係で現在も公式的には10万人くらい避難しているとのことです。避難指示によって、福島県の人口は現在10万人くらい減っている、統計に表れない人数が全国に避難している、特に顕著なのは子どもたち、約1万人の子どもがいなくなっている。つまり放射能を恐れて県外に色々伝手をたどって行っている。避難先ですが、北は北海道から南は沖縄まで、全都道府県に渡って福島県民がちらばっているというような状況になっています。私も石橋先生のようには被害額は調べてはいないのですが、福島県の場合はまだ被害が続いているということで"症状固定"に至っていない、そういう状況が最も特殊で、ですから例えば原賠法に基づく請求といっても仮払いの話しか今の所できないのではないかということで、先が見えない状況の中でどんどん疲弊していくような不安にかられているというような状況です。


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